「「えぇ〜〜っ」」

いや、えーって言われても困るんです。

 

 

 

出勤

 

 

 

「だからごめんって」

 

俺はひたすらゴンたちに謝っている。

昨日の依頼のためにもう行かなくてはならないのだ。

「なんでイキナリなんだよー」

口を尖らせてじと目でこちらを見てくるキルア。

「なんでって俺が言いたいくらいだぜ?・・・いきなりだったし」

 

っていうか、君のお兄さんとお父さんの所為だよ

 

「・・・仕事じゃぁ・・・・しょうがないね」

「うっ・・・ごめん!ごめんよゴン!」

俺にはシューンとしょげるゴンに、犬耳が見える。

すごく自分が悪いことをしている気分になる。

うあ〜ごめんよゴン。

 

 

「しかし残念ですネェ」

「残念ッす」

見送りに来てくれたウイングさんとズシも幾分かしょんぼりしている。

なんだかこの光景はほんわかするな。淋しがってくれて嬉しいし。

「お世話になりました」

てか、お騒がせしました。

俺は心の中でそっとそう付け足して頭を下げた。

「いいえ、こちらこそ」

「勉強させていただきました!!」

俺が頭を下げると、2人もお辞儀してくれた。

 

「今度は9月のヨークシンだね!」

早くも復活したゴンが元気よく言う。

俺はその頭を撫でてやりながら、そうだなと返す。

「さっさと仕事終らせろよな!」

「・・・まぁがんばってみる」

ちょっと・・・いやかなり一筋縄でいかなそうだけど。

 

 

そのあと、皆に見送られて俺は天空闘技場を去った。

それから人気のなさそうな所まで来てからイルミのところへ飛ぶ。

もちろんメールしてから。

最近使ってなかったから久しぶりの感覚。

 

 

 

 

視界が晴れればその先はいつかも来たシルバさんの部屋。

石造りの広い部屋。敷かれた豪奢なカーペット。

そして正面に見えるクッションの大量においてある王座のような場所。

相変わらずの位置で、シルバさんが座っていて、イルミがその手前あたりに立っている。

 

じっとこちらを警戒したあと、俺だと分かると警戒を解いてくれた。

それにふっと笑って挨拶する。

 

「イルミもシルバさんも久しぶり」

「久しぶり」と、相変わらずのポーカーフェイスのイルミ。

「おぉ。よく来たな」と笑うシルバさんの手元に居るのはあのグレイバッシュ。

「あ。その灰色わんこ」

「あぁ、お前に前頼んだ奴だ。しっかり躾たぞ」

「へぇ・・・」

たしかにお行儀よく座って、心地よさそうに撫でられている。

「ちなみに名前はつけたんですか?」

 

「ん?あぁタマだ」

 

「・・・・・・・タマ」

この、厳つい3mいくぜって云う犬みたいなのが・・・タマ。

・・・・・・シルバさん、アナタ、犬と猫間違ってませんか?

ミケといい、このタマといい・・・・ま、まぁいい、突っ込まないでおこう。

 

 

「ところで依頼の方は?」

「倉庫のものを売っ払おうと思ってな。念が掛かっていて危険なんでな」

厄介払いだと、言いつつ、目でイルミに取ってくるように促すシルバさん。

「で、品は何なんです?」

 

わからん

 

ズバッと、むしろあっけらかんとシルバさんは言い放つ。

「・・・・わ、わからない?」

「わからねぇんだ。箱に入っててな、開けた事はない。まぁ使わないし邪魔だからな」

で、売ろうというわけですか。

 

「お前も開けるなよ?  死ぬぞ?

 

シルバさんが超真顔でズイッと詰め寄って念を押す。

「ぜっっっってぇ開けねぇ!!」

開けて溜まるものですか!!ゾル家すら開けない箱何ぞ!

「ん。それでオークションの始まる3週間前か?にヨークシンに届けて欲しい」

「わかった。」

 

「ちなみに、それの情報だけはミルキの奴にむこうに送らせたから、狙われてるぞ、ソレ」

ニヤリと笑うシルバさん。

 

「ん?なんですって?」

にっこり営業スマイルしてみる俺。

 

「結構物好きは居るらしくてな。俺たちがオークションにモノを出すと知った輩が狙ってるらしい」

ね。狙ってる?

「・・・・もしかしなくても、俺危ないよな」

「まぁな。ま、お前なら平気だろ」

ニヤリと笑うシルバさん。

「・・・・ども。まぁ、この道は一応プロですんで、やらせて頂きますよ」

こっちにだって一応プライドは在る。

それに、丁度退屈してたところだし、やりがいありまくりジャン?

「おっし、そうと決まれば、イル」

「はい」

 

どしん

 

はい、とイルミが運んできたのは、30cm四方の鉄で出来た箱。

「・・・・大きさの割に凄い音したな」

しかも、明らかに悪質なオーラがにじみ出てきそうっていうか・・・。

うわー開けたくねぇ。

 

「・・・・・・頑張ってね」

なんだ、なんなんだイルミ!そのちょっと可哀想なものを見る目は!!

 

「じゃ、たしかにお預かりします」

「あぁ頼んだぞ。今日はゆっくりしていけ」

「じゃ、お言葉に甘えて。イルミ、お前のとこお邪魔していい?」

「いいよ」

くるりと後ろを振り返って云えばしょうがないという感じのイルミ。

 

「じゃぁ話は以上だ。いっていいぞ」

「はーい」

 

返し際持った例の箱はすっげぇ重かったです。

マジ、何入ってんの?コレ。

 

 

 

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20060327