・・・あぁ、偶然って素晴らしい。
遭遇
「あ」
ふらふらと人ごみを歩いていると、聞こえてきた声。
「『あ』?」
聞き覚えのあるその無機質な声に、俺は振り返った。
ちなみに言っとくと、俺は今鎌装備したまま、絶で歩いてました。
・・・・つまり、すげぇー存在感の無い危ない人だったわけだ。
そんな俺に声をかける・・・ってか「あ」とか知ってるかんじな声を出すのは、おそらく知り合い。
「や」
「・・・・イルミ?」
きっと知り合い。
そう、きっとお友達。
会いに行きたかったが、そう日も経っていないので、会うのを諦めていた俺としては、嬉しい偶然。
・・・・・が。
「何その格好」
「ん?」
コトリ、といつものように首を傾げるイルミ。
や、イルミさん、違和感バリバリだから。
そんなイルミの今の格好を実況しますと、
ジェントルなオジサマ。
そう50〜60くらいの白髪のまぶしいジェントルマンだ。
そう、きっとイルミ。や、気配的にイルミ。
でも・・・・外見は見知らぬジェントルマン。
夕暮れの人ごみの中。
ジェントルマンと対峙する俺。
しかもお互い絶状態。
・・・変な図だな。
「何、その格好。変装?」
「あぁ、これから仕事なんだ」
・・・・暗殺すか。これから。
「そのジェントルからイルミの声&しぐさって変な感じ」
「まぁ、いいじゃん」
・・・・よくねぇよ。
ジェントルマンが可愛らしく首を傾げちゃいけません!!!
重要だからコレ。中身イルミだって知ってるから余計。
「てか、誰の格好だ?オリジナル?」
「いや、これから殺すターゲットの秘書の格好だよ」
・・・・・・・・・・ターゲットさん、ご愁傷様です。
「顔パスで入ったらすぐ殺るつもり。簡単な仕事だよ」
「へ、へぇー」
「は終ったの?ネテロ会長の用事とかいうのは」
何となしに歩き出したイルミにあわせて俺も歩を進める。
「あぁ、ついさっき帰ってきた」
「へぇ、何だったの用事って」
「図書館の警備って言う名のテスト」
「テスト?」
・・・・・・っ!だから首を傾げないでくれ!!
俺はそう言いたいのを、すごく、すごくすごくすごーく我慢して、努めて普通に答えた。
「あぁ、シングルハンターライセンスの試験」
「へぇ。意外だな。ってそういうの興味なさそう」
「や、俺はなる気はなかったんだけど、ネテロじぃちゃんが無理やり・・・・・」
うふふふふ。
明後日の方向をみる俺。
まさかあんな強そうな兄ちゃんに遭遇するとは思わなかったよ。
思い出してちょっと凹む。
「・・・・・・・・・・・」
そんな俺の頭を黙って撫でるイルミ。
なんか嬉しくて俺はちょっと元気になった。
・・・・・・有難う!!俺めげない!
俺がへらりと笑うと、イルミが俺の頬を用側から挟んで視線を合わせてきた。
「?」
「うん。何があったか知らないけど、はへらへらしてるほうがいいよ」
・・・・・・微妙だねイルミ君。
「・・・まぁ、が無事なら、俺は何でもいいけど」
そういってイルミは俺の頬を撫でる。
「・・・・サンキュ」
やっぱイルミはいい人です。
・・・・殺し屋ですが。
「どういたしまして。・・・・・じゃぁ俺そろそろ仕事いくから、またね」
「おう」
会ったときと同じように軽く片手を挙げるイルミに、俺も同じく片手を挙げる。
「じゃあね」と言うと、イルミさんはすばやく消えていった。
・・・・速っ!
ありゃシルバさんと張るよ。
イルミのさった方向をちょっとばかり見送ってから、俺は手近なホテルに入り、久々にふかふかのベットで惰眠を貪った。
20051223 一つ星試験編終了