世界が崩れるのは一瞬。

 

 

起きる奇跡のき金

 

 

俺は今日、久々に大泣きした。

理由は、俺が4歳のときから連れ添ったミーアが老衰のため死んでしまったからだ。
ミーアは愛しい飼い猫で、雑種。濃い灰色の短い毛並みと青い瞳。ちょっとロシアンブルーに似てた。

朝、
ミーアは俺の隣で冷たくなっていた。
猫で14歳っていうのは、随分なお婆ちゃんだっていうのは分かっていたけど、ミーアは大切な家族だった。
簡単に受け止められはしなかった。

俺は学校を休んで、家の近くの森へミーアを葬るためにやって来た。
俺の大事な家族だったんだから、しっかりと弔わせて欲しい。

母は俺が生まれて直ぐ亡くなって、父と二人暮しだったが、父も俺が高校へ上がった年に飛行機の事故で亡くなった。
(一応親権は父方の祖母が持っているらしいが、会ったことも無いので顔も知らない。)

だからミーアは、言葉こそ通わないが、俺にとって一番そばにいた存在だった。

 

「・・・・ミーア」

ぽろぽろ、涙が零れる。

今日だけは許してくれてもいいでしょう?

丁寧に木の根元に埋めて、上に小さく”ミーア”と彫った石を置く。近くで花も摘んで供えた。
溢れる涙をTシャツで拭って、俺はようやく立ち上がった。どれくらい時間が経ったかはわからないが、長いこといただろう。
よし!と気合をいれて頬を叩く。

「今までありがとうミーア。絶対お前の事はわすれないから」 

 

「さようなら」

 

俺は頑張って笑った。

 

――――そして俺は一人になった。

 

家に帰ると風呂に入り、土で汚れた服を着替えた。喪に服すために普段あまり着ない黒い服。
もう何も考えたくなくて無心に部屋の掃除をしたり、洗濯をしたり。

そして夜がやって来た。

結局、家の端々にミーアの跡を見つけて、涙腺の緩くなった俺は今日一日泣き暮らしてしまった。
目は真っ赤、目蓋は腫れぼったい。
カチコチと時計の針が時を刻む音と、時折車の走る音が聞こえる。
カーテンは朝のままあいているから、外の街灯の光であたりはボンヤリと照らされていた。
ソファーで体育館座りして、泣きすぎた所為で痛む頭を膝に預ける。

小さい頃、寝ている間に襲われて誘拐されそうになって以来、俺は夜一人で眠れなくなってしまった。
長じるにつれ、
一人でも眠れる事は眠れるようになったが、どうも眠りが浅い。物音ですぐに目が覚めてしまう。
今までは父さんやミーアがいてくれたから、俺は安眠できていた。
それでも、今日は泣きつかれていたのか、俺にしては珍しくいつの間にか眠りに落ちていた。

 

”にゃぁ〜お”

 

眠りに落ちる間際、ミーアの声を聞いた気がした。

 

 

++++++++++

 

 

翌日もミーアの墓に訪れた。

今度はちゃんと学校へ行った。さんざん友人にかまわれて、笑ってちょっと元気を貰って。
その帰りにミーアの墓へ赴いて、新しく花を摘んで供えた。
あたりは夕暮れに染まっていてとても綺麗だった。
そっとミーアの冥福を祈って手を合わせる。

 

・・・ みゃ〜ぉ ・・・

 

「・・・ミーア?」
さぁ帰ろうとミーアの墓に背を向けたとき聞こえてきた猫の鳴き声に、まさかと思いつつも思わず振り返った。

 

 

――――そこで、俺の記憶は途切れた。

 

 

 

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20070106