「なぁイルミ、さっきの痛くねぇのか?」
じっとを観察していたオレは、心配そうな声で我に返った。
興味
見ればが見上げている。
「さっきって?」
「あの顔変えるヤツ」
そういって顔から何か抜き取るような仕草をする。
「あぁ・・・結構ツライよ」
そういうとがまた痛そうな顔をした。
「どこか痛いの?」
「いや・・・なんか聞いててこっちが痛くなったっていうか・・・・」
「ふーん」
変なの。
そこでオレはあることに気づいた。
・・・・・・まだ手、繋がれたままだ。
は気にした様子も無くオレの手を引いて一歩前を歩いている。
やっぱりって変。
・・・・でも、悪い気はしない。なんでだろ。
しばらく行くと扉があった。
そこでやっとが手を離した。
まだ手を離されたくないように感じて、それに少し驚いた。
俺まで変になってしまったんだろうか。
扉には初めの部屋にあったようなセンサーがついていた。
2人で手をかざすと扉が開く。
中に入ると、そこはとても開けた場所で、中央に殺気だった雑魚が密集している場所がある。
円形状のそこまでは丁度二人通れる位の幅の道が続いている。下を覗くけど底は見えない。
一人の男が前へ出て声を張り上げた。
「君達2人には目の前の極悪死刑囚50人と戦ってもらう。全員倒せば次の部屋へ通す。
しかしどちらか1人が死ぬ、もしくは戦闘不能となれば2人とも失格。準備はいいか?」
「・・・・・大丈夫?」
それなりに強いみたいだけど、は念使えないみたいだし。
死なれちゃ困る。
次の仕事にはライセンスが必要だから。
「ん。ぜってぇ死なネェ、てかたぶん、これくらいなら俺1人でも平気・・・かな」
顎に手をやって、首をかしげながら言う。
へぇ。死刑囚前にして結構言うね。
「じゃぁ1人でやってみて」
なんとなく見てみたかった。
「わかった。でも、もし危なかったら助けてな?」
「うん。死なれたらオレも困るし」
そういったオレににっこりと笑い返しては一歩前に出た。
あっさり了解したは恐怖心はゼロらしい。負けるなんて微塵も思っていないらしい。
へぇ・・・・・・・面白い。
「試験官さん?オレ1人でもいいですか?危なくなったら助けてもらいますけど、ほら、俺の武器って危ないからさ」
試験官は面食らっている。
そういえば、の武器って連携向きじゃないね。俺ならなんとでもなるけど。
「まぁいいだろう」
試験官らしき手前に出てきた男は戸惑いながらも承諾する。
それを聞くとはゆっくり死刑囚の前へ歩いていった。オレはよく見える場所へ移動する。
スッと相手を見据える。眼光が鋭くなってさっきとは別人のようだ。
あれは狩る者の目。
「・・・・来い」
が挑発したように嗤いながらそう言うと、一斉に死刑囚がに襲い掛かる。
それをひらりとかわし、回しを蹴りを決める。蹴りをくらった奴はむこうの壁にめり込んだ。
そんな風に襲ってきたやつを次々と倒していく。
その様はある小さな島国伝統の舞のようで、相手をさらりと受け流しては倒していく。
無駄な動きは少ないし、隙もあまりない。
3分の1程を片付けると、死刑囚たちも警戒しだす。
攻撃を繰り出すものがいなくなった。
それを見てはふわりと跳んで死刑囚達のど真ん中に降りた。
もちろん、死刑囚達は警戒してよける。
「来ないなら、こっちから行くぞ」
スッ・・・と鎌を構える。
それからは早かった。常人には見えないようなスピードで一気に横になぐとの右半分の囚人が倒れた。
なぜかどこも切れてないけど。・・・・念かな?つい癖で凝をして見てたけど、違うみたいだった。
切れない刃なのかもしれない。疑問点は残るけど。
残り半分も鎌を操ってなぎ倒す。
一分もせずにその場にいた死刑囚全員が倒れた。
「終わったぜ?」
はニッコリ笑って振り返った。
に興味が湧いた。
俺より強いってわけじゃないのに、ゾルディックを恐れない。
俺の心配したり、普通に手を握ったり。
笑顔で会話したり。
俺に自然体で接してくる。
念を知らない。けど、思った以上に強い。しかもきっとまだ発展途上。
面白い。
兄様に気に入られるの巻き。
20050924