「うまい」
「おいしい!」
「それは良かった」
俺は今、カキン国奥地の鬱蒼とした森の中で、ご飯食べてます。
ディナーと組み手
早くも日が沈む時間になった。
「美味い。また腕あげたな、」
俺特製きのこスープを飲みながらカイト兄が言う。褒められると嬉しいものだ。
「おう!一人暮らし始めてからいろんなジャンルの食事にチャレンジしたからな」
イタリアン、中華、和食、洋食、なんでも来い!!
「へぇー料理得意なんだ?」
「スピンは苦手なのか?」
感心したように言うスピンに首を傾げて聞く。器用そうなのに。
「うん。あたしよりスティックのがうまいわ」
「へぇ〜」
「でも夕食専門だよ。なんでって名前がディナーだから!!ヤハハハハハ!」
「へ、へぇ〜・・・」
しまった!顔が引きつった!!
「でも、本当においしい。隠し味でもあるの?」
「あぁ、木の実を数種、すり潰して入れてるんですよ。料理好き(過ぎ)の知り合いができたんで、いろいろ教わってるんデス」
バナナさんの質問に丁寧に答える。
「料理好きの知人?」
カイト兄がそんなやついたっけかと尋ねてくる。
「あーカイト兄なら知ってるかな?メンチさんっていう美食ハンター。シングルだって聞いたけど」
「!・・・あぁ知ってる。会った事は無いが、豪快な性格らしいな」
「・・・・・アハハ・・・まぁお客さまは大事にしないと」
たしかに素敵な性格してるぜぃメンチさん。
「へぇ、客なのか。そういやお前の噂は聞いてるぞ。がんばってるみたいだな」
「まぁね」
カイト兄は頭を撫でてくれる。気持ち良い。
「客?なにかお仕事してるの?」
モンタさんが首を傾げる。
「・・・・・秘密。また今度話しますよ」
最近聞かれすぎて疲れたし勘弁してください。アハハハハハハー。
しばらく皆で焚き火を囲んで雑談していたときだった。
もうとっぷりと日が暮れて空に月や星がこれでもかってほど出ている。
「よし!そろそろ寝るか」
カイト兄が仕切る。多少の援助はあるらしく、近くにキャンプを張っているみたいだ。
2人に1つずつテントがあるらしい。カイト兄は1人用の、使い古したテントを使っている。
「あ。君は寝る場所どうするの?」
バナナさんが気を遣ってくれた。いい人たちだよ!!
「大丈夫です。カイト兄と一緒に寝させてもらいますから」
「え?でもアレって狭いわよ?ボロいし」
スピン・・・ズバリ具合が素敵だよ!!
「ボロくて悪かったな・・・」
あ。カイト兄がちょっと怒った。
こんなときは甘えるが勝ち。カイト兄の手を取って手を握る。
「大丈夫ですよ。なーカイト兄」
「・・・・・あぁ」
お。もう一押しか?
皆にお休みを言って、二人でテントに入りながらカイト兄の様子を伺う。
「あ、明日の朝あたり組み手してくれねぇ?」
「・・・あぁ」
カイト兄の口が緩む。機嫌回復成功。
テントの中はスピンの言ったとおり狭かったけど、2人くらい余裕だ。
カイト兄細いしね。くっついて一緒に寝袋に入る。
カイト兄が縦に長いぶん、大き目の寝袋だったのでこれも余裕だった。
「オヤスミ」
目の前のカイト兄に言ってお互いを抱き枕にして眠りについた。
翌朝。
「・・・・・・ろ・・・・起きろ」
揺さぶられる。あぁ何さ〜こちとら寝てんのに〜。
ぼんやりと浮かび上がる意識。まだまどろんでいたくて抵抗する。
やさしく髪をすく誰かの手が気持ち良い。
「・・・。組み手するんだろ?」
「・・・・・うん〜」
する・・・・けど・・・・・・なんでするんだっけ??
お?組み手・・・誰と・・・・?
あぁ!!!
ガバッ!!
「おはよう!カイト兄!!」
勢い良くさわやかに言い放つ。
けっして慌てたりなんてしてないよ?慌てたりなんか。
「クッ・・・・おはよう・・・」
うぁ〜笑われてしまったぁ〜!!恥ッ!
思わず顔が熱くなる。
それを見てカイト兄は余計に笑う。恨みがましい目で見ると、悪いといって口元を押さえた。
「ククッ、まだ朝弱いんだな。お前」
「・・・・・しょうがねぇじゃんか」
ぶーたれてみる。
くそう!いつかカイト兄やゴンみたく寝起きすっきりな人になりたい。
「ほら、河で顔洗ってこよう。そんで組み手だな。手加減しねぇぞ?」
「・・・・お、おう」
・・・ヤバイ。本気の目だ。
河のつめたーい水は俺を目覚めさせるのに効果大だった。
俺は組み手のためにコートを脱いで腕や腰を回す。
ストレッチは大切です。
ん〜と伸びをしてカイト兄と向かい合ったところで皆が起きてきた。
挨拶をすると皆返してくれた。いい人たちだよ!!
「おはよう。あら、何してるの?」
「スピン。組み手をしようと思って」
「・・・・・・・・・・・・・・・組み手?」
「カカカ、カイトさんとですか!?」
「そうですよ?」
リンさん、いつもよりどもってるよ。朝からいい汗かいてるね。白いハンカチが眩しい。
「「「「「「本気?」」」」」」
「皆さんのハモリはいつも素晴らしいですね」
まじで。
「本気だぞ?もちろん手加減なしだ」
カイト兄が当たり前だろ?とばかりに言う。
そのあと皆に全力で止められたけど、「カイト兄は信用できる人でしょ?」と超絶笑顔で言うと退いてくれた。
そのあと2時間ほど、ちょっと自然を破壊しながら組み手をやって、いい汗かいて一息ついていると、皆に珍獣を見るみたいなビックリ顔をされた。
・・・・・なんでだろ?
20050928