ゴンってガキの次は、巨大な鎌を持った、

さきほど大爆笑していた男だった。

 

 

 

 

死神の頼みごと

 

 

 

 

「ハンゾー対!!両者前へ!」

 

お。呼ばれた。って奴ぁあの鎌もった野郎か。

どんな戦いかたをするか・・・・。

とりあえず得物のことも考えて近距離戦に持っていったほうが有利か。

こきりと首を鳴らして、軽く足首を回す。

 

選手!前へ!!」

試験官が中々こない相手へちょっとばかし声を荒げた。

おうぇ?!俺?あぁ!俺だ!!」

・・・・・・なめてんのか?

ぴくり、と俺の額に青筋が浮かぶのがわかった。

こちとら真剣だッつのに。

「ごめん!」

何だコイツ。本気で忘れてやがったのか?大丈夫か?頭。

 

 

「あ!そうだ!さっきは良い笑いをありがとう!!

「・・・・・・・訳わかんねぇ」

変なヤツだな。

 

「そういや隠密って日本の忍か?」

ふと思い出したように聞いてくる。日本の単語に少なからず驚いた。

熱狂的ファンはいるらしいが、小さい国だからか、意外と俺の祖国はマイナーだ。

「おう!よく知ってたな」

「まぁ俺日本好きだし。今度いろいろ教えてくれよ」

・・・・いいやつじゃん!

ま。手加減なんてしてやんないけどな。日本好きに免じて綺麗な顔は傷付けないでやろう。

「気が向いたらな」

「サンキュ」

 

「用意はいいですか?では、始めっ!

「?!」

 

消えた。

 

 

と、思ったら首あたりに風圧がかかった。

気付けば目の前には鎌の刃が、俺の首1.2ミリのところで止まっていた。

 

 

目で追えなかった。残像すら見えなかった。

 

 

・・・・・早い。一瞬の間に後ろを取られた。

さっきまで目の前でアホな会話をしていたと言うのに。

つ・・・と冷や汗が流れた。

悔しさすら感じない敗北感。

 

の動きについていけなかった黒いロングコートが、一足送れてふわりと元に戻るのを感じた。

 

「・・・・・・・っ」

「下手に動かないでくれよ?」

手元が狂っちまうかも知れねぇから、と低い声で告げられる。

言われなくても動けない。体が硬直したみてぇに。

 

 

スッとは俺の右の肩あたりまで顔を近付けた。

横目で見ると、先ほどまでとうって変わって鋭い光を宿した瞳とかち合った。

ゆっくりとが口の端を持ち上げた。

綺麗な顔をしているとは思っていたが、この笑顔は色が・・・艶があった。

悪魔のような、死神のような。変な魔力を持っているような・・・・。

 

俺は視線を無理やりから外して、鎌の刃に移る自分の姿を見た。

耳元にの顔がよるのがわかった。

 

吐息が耳に掛かる。

 

「・・・・・”まいった”って言ってくれねぇか?」

ぞくりとする、なんともいえない色を含んだ声だった。

 

 

・・・・・・・俺はコイツに勝てない。

そう悟らせるに十分だった。

 

 

「・・・まいった」

 

 

搾り出した声はわずかかすれた。

完敗だ。

すこしでも舐めてかかった自分が恨めしい。

 

 

 

俺が潔く負けを認めると、すんなり鎌を下ろした。

そして

「いやぁ〜ごめん!脅したりして!大丈夫か?間違って切れてねぇ?!

なんて言いながら俺の首をしげしげと観察する。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・お前、変なヤツだな」

「何で皆してそんなヒドイこというのさ!!!」

 

なにやら憤慨している。

てか、他のやつにも言われたんだな。

「・・・・・はぁ」

なんか気ぃ抜けちまった。てか、何か怖がって損したっつぅか・・・はぁ・・・。

 

「ん!」

「あ?」

見ればが此方に手を差し出している。

「・・・・何だ?」

「何って握手

きょとんとした顔で首を傾げる

さっきのと同じ人物には見えない。綺麗系の顔と幼い行動のギャップが面白い。

「握手?」

「そう!スポーツマンシップにのっとり試合後は握手!」

 

・・・・・・・よくわかんねぇ・・・・・けど、悪くねぇな。

 

「・・・・ほらよ」

ぎゅっと握手する。

「ありがとうございました」

が礼儀正しく軽く腰を折りながら、にっこりと言う。

「・・・・・・こちらこそ」

悪くない試合だったぜ。

 

 

、ハンター試験合格。

 

 

 

BACK  TOP  NEXT

20051001