が眠りについて早3時間。

会場には300を越す受験者が集まってきていた。

 

 

 

 

寝惚けながらの対面。

 

 

 

「おい、何だこいつ?」

「何だよあの鎌のでかさは」

「こんなところで寝るなんて・・・・」

ぼそぼそとそんな声が聞こえる。

 

 

その噂の中心は会場の隅で寝こけている青年。

超難関で、周りはすべて敵でライバルなハンター試験の会場で巨大な鎌をもって寝ている青年は浮きに浮いていて、プチドーナツ化現象を引き起こしている。

 

 

 

ザワザワ・・・・



 

―――うるさい。

俺はざわめく周囲の気配にぼんやりと意識を浮上させた。

随分人の気配が増えた。300くらいだろうか。

そんなことをまだ7割以上眠っている頭で考えていた矢先。

自分に向けられた殺気と、何かが飛んでくる気配に体が無意識のうちに反応し、上に跳んで何者からかの攻撃を回避した。

今までの修行の成果か、殺気には敏感である。

スタッと着地して自分のいたところをぼんやりと見る。

 

まだ意識は半分以上夢の中だ。

 

 

「???」


(なんだ?・・・・壁にトランプが生えてる・・・・?)

寝起きの俺の思考回路は今日もハジけている。

兎に角寝起きの悪い俺は、起き抜けに1+1は?って聞かれて2って答えられない自信がある。

・・・言っとくが、自慢だ。

 

 

寝惚けた頭で、俺はとりあえず引っこ抜いてみた。

 

 

(トランプ大収穫祭?てか・・・トランプだ・・・でも何でここにあんだ・・・?)

 

 

4・5枚のトランプを手に、あくびをしながらずるずると座る。

まだ眠い。

トランプを眺めるが、赤や黒の模様はぼやけてきている。

 


「くくく・・・・

 

ふいに、頭上から笑い声が降ってきた。

気が付くと、先のとんがった奇妙な靴が視界に入った。

ぼんやりと見上げる。

 

「・・・・・ぴえ・・ろ・・・?」

 

そう、ピエロ。 メイクもばっちり☆でハイセンスな服を着ている。きっと誰も真似できねぇ。

 

(あー俺、はじめてピエロこんな近くで見るや・・・。らっきぃ〜・・・?)

サーカスなんてテレビでしか見たことのなかった俺はプチ幸福感GET。

いや、そんなことしている場合じゃないって気付くのは、寝起きの俺には無理だ。悲しいことに。

 

 

「ごめんね。ソレ、ボクのなんだ♥」

ピエロと称された男は細い目をさらに細めて機嫌のいい猫のように笑っている。

背の高い男で頬の涙と星のペイントが白い肌に映えている。明るい色の髪は不思議な形にセットされている。

そんな浮世離れしすぎた男の目の前で、 は寝惚けた思考回路をフル稼働させていた。

 

(ソレ? ボクの??・・・・・・・あぁ、トランプ・・・・そっかピエロだもんなぁ〜商売道具だもんなぁ。

・・・・アレ?なんで持ってるんだっけ?ん??

・・・・・・・・・まぁいいや。)

大抵、寝起きの俺が最終的に思うのは、いつも「まぁいいか」である。

その所為で今までちょこちょこ失敗したことあるくせに、まだ治らない悪い癖だ。

 

 

「ん。ごめん。」

大事な商売道具を。と思いながら、トランプを男に差し出す。

 


 

(・・・・?なにやら驚いている様子???) 

は訳がわかっていないが、このカードによって攻撃されたということは、それは相手の武器ということ。

今の行動は、敵に態々武器を手渡すという自殺行為だ。

しかし呆けている俺はそんなことには気づきもしない。

困ったときの教訓だと、へらりと笑顔を作ってみたりする。

 

 

(お、ピエロが微笑み返したよーあははー。

てか・・・・・眠い。ピエロがぼやける・・・・)

 

 

「アレ寝ちゃうのかい?」

再びとろとろと目蓋の落ち始めた に、男は楽しそうに声をかける。

 

(ピエロが何かいってるが、もう知らん。俺は眠いんだ・・・・・・・)

かなり投げやりな思考でそうすっぱりと男の存在を脳から追い出して、再び眠りの世界へ旅立った。

 

 

 

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寝惚けつつヒソカさんと遭遇。