おかしな奴がいた。
大きな、死神なんかが持っていそうなブッソウな鎌を持って、
無防備に寝顔をさらした綺麗な男。
HELLO。
俺はゾル家を飛び出して、やることもなかったから、超難関っていわれてるハンター試験を受けに来た。
まぁ、周りはギスギスしてっけど、俺は暇つぶしだし。
そんな気楽なことを思う。
さっき、トンパとかいう変なオヤジに薬入りジュースをもらった以外何もなくて、つまらない。
つまらないを何度となく繰り返しながら、ぶらぶらと会場内を見回っていると、壁際に綺麗に人がよけている場所を見つけた。
興味を引かれたから見に行ってみた。
そこには、赤い柄の大きな鎌をもったまま、座り込んで寝ている綺麗な男がいた。
珍しい紫がかった銀髪は、俺のと違って癖がなくてまっすぐで、長いまつげも同じ色。
座ってるから身長はわかんねぇけど、細身で折れそうなかんじ。
顔は女顔じゃなくて、男なのはわかるんだけど、綺麗って言葉がハマるような、不思議な感じ。
見た目強そうじゃないのに、コイツ・・・けっこう強い。
そんな気がする。
なんとなく、ぼぅっとソイツを見ていると、ソイツが急に上に跳んだ。
「!?」
見ればソイツが居た所にはトランプが刺さっているようだ。
それは確認できたが、どうも人垣でよく見えない。
俺はもどかしげに人を掻き分けてソイツに近づいた。
奴は、寝ぼけてんのか、ボーっとしてる。
おもむろにトランプを引っこ抜いてずるずると座る。
首を傾げてトランプを見てるってことは、さっきのアレは無意識なのか・・・・?
俺にもたまにないわけじゃないけど、この状況で寝惚けてられる男の神経の図太さに感心する。
「くくく・・・・♥」
げっ・・・ヒソカ・・・。
あいつの仕業だったのか。
その男に近付く奇妙なイントネーションの男。
見間違うわけがない。奇抜な格好に、俺と同じ、闇のにおい。
変なのに目つけられて・・・・ご愁傷サマだな。
「・・・・・ぴえ・・ろ・・・?」
ヒソカを見上げたソイツの目は赤みがかった紫。とろんと今にも目蓋が落っこちそうだ。
あぁ〜アイツ完璧寝ぼけてるよ。俺は片手をデコに当てて呆れた顔をする。
「ごめんね。ソレ、ボクのなんだ♥」
ヒソカはすげーご機嫌みたいだ。くつくつと喉で笑って楽しげにそいつを見下ろしていた。
ソイツは「ソレ」といわれてぼんやりトランプを見て、ソレをおもむろにヒソカに差し出した。
その行動に俺だけじゃなく他の奴も目を向いた。
「ん。ごめん」
なんで謝んだよ!!
しかもごく自然にトランプを返そうとしてる。なに考えてんだ?
自殺行為だ。
ヒソカもびっくりしてる。
受け取らないヒソカに首を傾げて、ソイツは・・・
ふわりと微笑んだ。
クールそうに見えた顔は、笑うことでちょっと幼い感じになった。
いろいろびっくりしているうちに、ソイツはまた寝ちまったみたいだ。
ヒソカは残念そうに、でもご機嫌にその場を去っていく。
ソイツの周りはさらに距離をとって、ドーナツ化現象が進んでる。
・・・・・・おもしれぇな、アイツ。
俺は強く興味を引かれて、そいつに声をかけることにした。
「つまらない」ということは減るだろうことを期待して。