・・・俺もスケボー持ってくればよかった。
一次試験と出会い
1次試験は、どうやら試験官のジェントルマンことサトツ氏に着いて行くことらしい。
行き先、到着時間は不明。
俺は今のところキルアと一緒に走ってる。
いや、キルアに関しては走ってない。
滑ってる。
かなり羨ましい。だって楽しそうだし楽そうだ。ガ〜って。
「いいなぁキルア。俺も何か持ってくれば良かった」
「・・・・・。その馬鹿でかい鎌以外にまだ何か持つ気なの?」
呆れ顔のキルアが俺を見上げる。
「あ。そっか・・・・それは面倒だなぁ」
俺、ただ今でかい鎌を肩に担いで走っているため、周りの人が引きまくり。
いい具合に妨害も入らないし、まぁよしとするけど。
「なんか・・・抜けてるよな、って」
「えぇ〜〜〜」
「えぇ〜じゃないよ; そういえばって仕事とか何してんの?」
何となしにキルアが聞いてくる。まぁこんなところにいるんだからそれなりに何かしていると思うのは妥当だ。
「仕事?・・・ん〜主に運び屋と守り屋・・・か?」
首を傾げながら言う。
「疑問系?」
「あぁ〜・・・まぁいろいろやるけど、主には。危ないもの運んだり、守ったり。あ、でも警備の仕事は受けねぇな」
「何ソレ。警備と守るのって違うの?」
「俺ね、人と組んで仕事とかできねぇの。警備ってなると他の警備員とか、色々いるだろ?そういうのは思うとーり動いてくれない訳。んでパニックのうちに〜なんてヤだろ。それに守る範囲がでかいのもダメ」
「そういうもん?」
「そう!俺は自分の目の届かないところまで守れないのさっ!!」
ものすごいイイ笑顔で威張って言ってやる。俺は見ての通り半人前です!
「威張んなよ;でも、そのほうが仕事は確実だな」
ふむ、と頷くキルアに嬉しそうに言う。
「おうよ!今のトコ成功率100%だもんねっ!」
「100?!すげぇじゃん。けっこう有名だったりする?」
「どうだろ?まだ仕事初めて4年だし。」
「なんて名前で仕事してんの?」
「”クリムゾン”」
綺麗な赤色の名前。もちろん由来は鎌の柄の色。
結構気に入ってるんだ、と無邪気に言う。
は事も無げに言ったが、キルアはその一言で固まった。
固まってはいるが、器用に滑り続けている。
おもしろいな〜とか思いつつ、とりあえずキルアの顔の前で手を振って「きーるーあぁ〜?」と間抜けに呼びかけると、やっとキルアが戻ってきた。
そして開口一番
「マジで?!」
と、かなりのビックリ顔で詰め寄られる。
その様子にちょっと引きつつ「嘘言ってどうすんだよ。」と返すと、キルアから凄いことを言われた。
「”クリムゾン”っていったら、仕事引き受けてもらうのすら難しいって有名だぜ?客と仕事は選ぶけど、仕事は正確。別名”死神”」
「死神?!」
「そう、煙のように消えるとか、敵の戦意喪失ばかりか、虜にしちまうって噂だぜ?」
「虜?!マジかよ!?キショッ!」
「マジ、生き残った奴らは大概”クリムゾン”のファンになっちまうんだとよ」
「うわ〜ぉ。イカツイおっさんがファンでも、そんな嬉しくねぇ・・・・てか俺って有名?」
「・・・・結構」
「マジで?!」
今度は俺が叫ぶ番だった。
その間も、キルアは何故かきらきらした目で俺を見ている。
そんな目で見ないでくれ・・・俺は小心者で保守的な小市民だから!そんな凄い人じゃないから!
煙のように消えるってのは認めるけど。
俺の鎌の力だ。知っている人のもとへ移動することができる。
ジンさんのところに行けたのも鎌のおかげ。
まぁ昔は使えなかったんだけど、修行してたら使えるようになった。
さすが曰くつき。
「そっかぁ〜”クリムゾン”なら納得。あのヒソカにもの怖じない訳だ。」
「??・・・ヒソカって?」
何だ? 一人満足げに頷いているキルアにたずねる。
「俺が話し掛ける前に話してただろ?ピエロみたいな危ない奴と」
「ピエロ・・・・・・・・・・・・・・・あぁ!あのピエロ、ヒソカって言うんだ」
「・・・・半分忘れかけてただろ。」
「ソンナコトナイヨ」
いや、正直あんまり記憶に無かったり。
「・・・・・・はぁ・・・・」
「ちょっ!溜息つくなy「おい ガキ汚ねーぞ そりゃ反則じゃねーかオイ!!」
丁度、俺の文句から逃げようと速度を上げたキルアがスーツ姿の男に絡まれた。
面白そうなので、ほっておこう!(をい
「なんで?」
きょとんと聞き返すキルアはかなり生意気そうだ!
「こりゃ持久力のテストなんだぞ!」と男がキレつつ答える。
男は持久力のテストだと思ってるらしい。しかぁし、そうじゃないんだな〜。
俺は目の前で繰り広げられている会話に忍び笑いをする。
「違うよ。試験管はついて来いって言っただけだもんね」
どうすっか教えてやろうかと思っていると、男の隣のつんつん髪の男の子が代わりに言ってくれた。
「ゴン!!てめぇどっちの味方だ!?」
いや、味方云々の前に正論だ。その子の言ってることは。
なんだか仲間にまで、しかも小さい子に正論言われちゃってるスーツの男の図が面白くて、頑張って噴出すのを我慢する。
「どなるな、体力を消耗するぞ。何よりまずうるさい。テストは原則として持ち込み自由なのだよ!」
さらに隣の金髪の人(後ろ姿しか見えない)にものすごい正論を言われてる。
しかも、うるさがられてる。てか、むしろウザがられてる?
「〜〜〜〜〜っ!」
真っ赤になって怒っている様子の男。それでも反論できず口は真一文字に結ばれていた。
ぶっ!もう言い返せねぇぞあの人。仲間に味方がいねぇってか、これはコント?コントなのか?!
完璧に傍観者を決め込んでいる俺にはコントにしか見えず、笑いを必死に耐える。
今大笑いしだしたら、きっと目の前のコントは幕を閉じてしまうだろうから。
「ねェ、君、年いくつ?」
自然な感じのそのセリフにナンパかキルア!?とか思うのは俺だけじゃないはず。
「もうすぐ12歳!」
「・・・・・・ふ〜ん」
お、なんだ?同い年とか?
キルアが「俺も走ろ」とかいって、スケボーから降りた。
自己紹介しあっちゃってるし。
新たな友情の芽生えの瞬間だなぁ〜とか、その様子を傍観していたら、いきなりキルアが振り返った。
「おい、!!いつまで傍観して楽しんでんだよ!」
唇を尖らせてちょっとすね気味。
そんなキルアにより、傍観強制終了。
皆してキルアに呼ばれた俺を振り返る。
視線を感じつつ「ごめんごめん」と軽く笑ってキルアに並ぶ。
「ごめんとか思ってないだろ」
「ちょっとは思ってるぜ?」
「ちょっとかよ!!」
まぁいいじゃん、とキルアの頭をなでていると、ぽかんとした顔の3人がこっちを見ているのに気が付いた。
「あ、ごめん。俺。よろしくな」
にっこり笑って言うと、黒髪の男の子がうれしそうに笑う。
「俺はゴン!よろしくね!!」
・・・・・かわいい!こんな弟も欲しい!!とか思いつつ、ゴンの頭をぐりぐりなでる。
キルアとは違って堅めの髪だ。くすぐったそうになでられている。
キルアはそんな様子をみて少し不機嫌になりつつもスーツの男に声をかける。
「オッサンの名前は?」
「オッサ・・・これでもお前らと同じ10代なんだぞオレはよ!!」
「「「ウッソォ!?」」」
見事なハモリ一丁
「あーーー!!ゴンまで・・・!!ひっでーもォ絶交な!!」
そんなやりとりをしていると金髪の人は離れていってしまった。
そしてふと気付く。
「ん?じゃぁオレが一番お兄さんか?」
「「「えぇ?!」」」
「おぉ〜すばらしいハモリ!」
「え?っていうかっていくつなの?」
ゴンが恐る恐る聞いてくる。
「ハタチ。今年21」
いい笑顔で言ってやったら・・・
「「「「嘘だ!!」」」」
見事な4重唱一丁上がり。
「嘘じゃねぇよ;」
「十代だと思ってた!」
キルアが本日2度目のビックリ顔で言う。
「・・・俺ってそんな童顔かなぁ?」
「ううん、全然。それよりレオリオより年上ってゆうのが、びっくりなんだよね」
ゴンが苦笑していう。
「レオリオ??」
俺が?マークを浮かべつつ首を傾げるとスーツの男があぁと言って自己紹介してくれた。
「俺はレオリオ。よろしくな」
にっかりと笑う。なんとなく大らかな感じを受けて、いいやつかもコイツなんて思う。
「私はクラピカという者だ。よろしく頼む」
金髪の人も挨拶してくれた。
「・・・・・・美人さんだな、クラピカ」
初めて顔をみて、思ったことをそのまま口にしたら怒られた。
だって睫毛長いし、目はおっきいし。金髪サラサラだし。
「私は男だ!!」
「知ってるって!怒んなよっ」
「というか、には言われたくないな」
それに皆も賛同する。
訳がわからない。
「何でだよ」
そういうと心底呆れた顔をされてしまった。
「・・・???」
なんで俺には美人って言われたくないんだ??
そのあと、一度レオリオがくじけそうになるも、自力で復活。
しばらく走ると階段が見えてきた。
なんとなくキルアと並んで走っていたら一番前まで来てしまったみたいだ。
「いつの間にか一番前に来ちゃったね」
「うん。だってペース遅いもん。こんなんじゃ逆に疲れちゃうよな〜。結構ハンター試験も楽勝かもな。つまんねーの」
おいキルア、後ろで必死なおじ様たちに聞かれたらリンチされっぞ?
「キルアは何でハンターになりたいの?」
「オレ?別にハンターになんかなりたくないよ。ものすごい難関だって言われてるから面白そうだと思っただけさ。でも拍子抜けだな」
いや、マジでぼこられるぞーキルアー!とか思ってたら俺にも話題が振られた。
「は?どしてハンターになりたいの?」
どうしてって・・・・・・
「ん〜前々からライセンスは欲しいかなって思ってたんだけど、面倒臭がってたら師匠みたいな人に勝手に応募されて今に至る」
「何だソレ。ってか面倒がるなよ」
キルアに突っ込まれた!んでもって笑われた。くっそう!ちょっと悔しい。
「んで?ゴンは?」
「オレの親父がハンターをやってるんだ。親父みたいなハンターになるのが目標だよ」
キルアの質問に、ゴンはきらきらした目で答えた。
俺は静かに傍聴者を決め込んだ。ほら、あとは若いもん同士でってことで。
「どんなハンター?親父って」
「わからない!」
「お前それ変じゃん!」
キルアが可笑しそうに笑う。ゴンはそう?ときょとんとしている。
「オレ、生まれてすぐおばさんの家で育てられたから、親父は写真でしかしらないんだ」
ゴンはキラキラとした目で語り始める。
「でも、何年か前、カイトっていう人と出会って、親父のこと色々教えてもらえた。
”ジンさんは、面倒くさがって申請してないが,実は三ツ星ハンターと比較してもなんら遜色がない”って」
・・・ん?
「それってすごいことなのか?」
「ううん、わからない。ただ、カイトは自分のことみたく自慢気に、とてもうれしそうに話してくれた。それを見て思ったんだ。オレも、親父みたいなハンターになりたいって」
・・・・んん???
「ちょっと待て、ゴン。誰と会って、誰の話を聞いたって?」
片手で額を抑えながら話に割って入る。
「え?カイトに会って、親父・・・ジンの話を聞いたんだよ?」
・・・・・・もしかしなくても?
「ジンさんの息子?!」
マージーでー?
まぬけ顔の俺に、ゴンがキョトンとした顔で聞いてくる。
「え?親父を知ってるの?」
「あぁ、俺の師匠みたいな人って、ジンさんのこと」
「えぇ?!」
今度はゴンが驚いている。俺は一つ学習した。世間は意外と狭いらしい。
「ココに来るちょっと前に、顔出しに行ったら試験受けて来いって言われたんだよ。俺の息子も受けるんだとかいって。言われてみれば目とかそっくりジャン!髪質そっくりジャン!!気づけよ俺!!」
そんな話をしていたら出口についた。
ジンさん、早くもあなたの息子に出会いました。
ジンさんそっくりのいい目してる。