イルミから5時間練ね。といわれてから、その言葉どおりずっと練をしていた。

最初は普通に軽い運動や読書をしながら。

イルミがずっとストップウォッチのようなもので時間を図ってはいるが、この部屋には時計がないので、いったい何時間たったのか分からない。

しばらくすると、だんだんキツクなってきたので、じっと床に座ったまま練をし続けた。

その間俺が「ねぇまだ5時間経ってねぇの?」と何度尋ねたかはわからない。

 

 

 

五時間。

 

 

 

お昼頃から始めたはずだ。

おかしい。絶対おかしい。

もうとっぷり日が暮れている。

1月の5時といえば暗いが、こうも星が見えるほどではないはずだ。

「なぁ、イルミまだ5時間経ってネェの?」

「がんばって」

「・・・・・・・・・・・」

 

絶対おかしい。

 

それにかなりキツイ。先ほどから少々息が切れ始めた。

俺とイルミの距離、約10メートル。

イルミはゆったりと足を組んでベットに腰掛け優雅に読書中だ。

またもや様になっているのが腹立たしい。

そんなことを思っている間にも、じわじわと汗が噴出す。

・・・・やばくない?

そう思った次の瞬間、ガクリと体が傾いた。片手をついて体を支える。

息も随分切れてきた。

「はぁ、はぁ・・・っ・・・はぁ」

くそぉ〜辛い。

ぽたりと床に汗が落ちる。

 

「・・・・大丈夫?

そんな俺の様子に気付いてイルミが本をぱたりと閉じ、わきに置きながら聞いてくる。

大丈夫に見えんのかコラァ!!

「・・・っんな・・・わけ・・ねぇだろ」

俺がそういうと、イルミは少しの間俺を見つめてから、手元の時計らしきものに目をやった。

 

「うん。上出来かな。もういいよ、

 

やっと開放された俺は、練を解いてだらりと床にのびる。

もの凄い開放感&疲労感。

「はぁ、はぁ、も・・・無理・・・・!!」

 

「よく頑張ったね。タイム6時間45分23秒

 

―――ん???

 

「6・・・時間??」

「おしいね。あと15分で7時間だったのに」

「お・・・ちょい、まて」

切れ切れに言う俺に何?とイルミが首を傾げる。

「5・・時間・・・て、言ってな、かった、か・・・?」

「うん。目標はそこだったんだけど、まだ余裕ありそうだったからもう少しやらせようと思って

おい―――!!

俺へとへとだぜ〜?っていうか、部屋に風呂あるくせに、時計とトイレが無いってどういうこっちゃ!!!

変なところにまで憤慨する俺。

 

 

「はぁ〜も、いいよ。・・・・・イルミィ〜俺動けねぇ〜・・・・」

頑張れば動けないことも無いだろうけど、すごくだるい。

コートは早々脱いでたけど、汗かいて気持ち悪いし。

でろりと床にころがって、視線だけイルミに投げかけて迷惑をかけてみる。

結構腹いせだったりする。

イルミはベットに腰掛けたまま、じっとこっちを見ている。

ずっとイルミを上目に見ているのは疲れるので、目を伏せて浅く呼吸を繰り返す。

マジで辛い。このまま寝てもいいですか〜。

 

 

しばらくそのままでいると、イルミが近付いてきて、ぺたりと俺の額に触れた。

冷たい手が心地良い。

「この前のハンゾー戦のときも思ったけど、今の色っぽいよね

「・・・・・・・・・・・・・・」

今。なんていわれたかな?い・・色?

突如落とされた爆弾発言に、目を伏せたまま冷や汗を流す。

「・・・大丈夫?

何でもないようなイルミの声が聞こえる。

「イルミさん、さっきなんて言った?」

ゆっくりと目を開けながら恐る恐る聞く。

激しく聞き間違いであって欲しい。

 

「うん。だから、色っぽいねって」

 

「・・・・・・・・っ!!」

聞き間違いじゃなかったよじぃちゃん!!!!

「・・・・そんなこと初めて言われたよイルミくん」

「そう?」

「いや、普通言われなくないか?」

なら言われるんじゃない?」

「・・・・・・・」

なんか嫌。

 

「あ。ヒソカにこういう姿みせちゃダメだよ?」

ヒソカ・・・?

「何で?」

「絶対ただじゃすまないから」

「・・・・・・・・・怖いな」

「わかった?」

ずい。と顔を寄せてイルミが念を押す。てか、イルミの目がマジだ。

「・・・・はい!」

こういう姿、がいまいちわかっていなかったが、イルミが怖いので即答する。

 

「うん。・・・ところで、動けないんだよね?」

「う・・・ん?さっきよりは回復したけど、だるーーーい」

でろっと転がる。

イルミが冷たい手で頬や額を撫ででくれるのが心地良くて目を伏せる。

「・・・わかった」

そういうと、ひょいっと俺を横抱きにして、すたすた歩き出した。

「ぅお!」

イキナリ体が中に浮かんで驚く。すたすたとベットまで運ばれ、ふわりとおろされる。

「カヤと変えの服持ってる?」

「・・・・持ってない」

「そう。あと30分もすれば回復するだろうから、それまでに何か用意するよ。それじゃ気持ち悪いだろ?」

「・・・・ども」

何から何まで・・。

「とりあえず寝てなよ。ちょっと親父達のところ行ってくるから」

「へ〜い」

すっと目元に手がかざされて目を閉じさせられた。とろとろと眠気が襲ってくる。

 

パタンとドアが閉められたのと、俺が疲れきって眠りにつくのはほぼ同時だった。

 

 

 

 

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20051025