「・・・・きて」
・・・・んん〜?
「起きてよ」
ぅるさいな。
「・・・・起きないと刺すよ?」
溶ける。
「・・・・・・っ!?」
突然感じた殺気に俺は飛び起きた・・・・が、
ごちっ
盛大に、目の前にあったイルミのデコとごっつんしました。
「〜〜〜〜〜っ」
「目、覚めた?」
デコをおさえてベットの上でもがく俺とは反対に、イルミは普通に体を起こして尋ねてきた。
顔色一つ変えないなんて!石頭だなイルミ!!
「・・・・今失礼なこと思った?」
「イイエ!」
「そう?まぁいいや。お風呂入ってこれに着替えなよ」
そういってイルミが俺にたたまれた服らしきものを差し出す。
そういえば、と修行で汗だくになったことを思い出した。
「あ。汗臭くなっちまったかも、ベット。ごめん」
普通に寝ちまったよ。今更ながら申し訳なく思う。
「いいよ別に。ここに運んだの俺だし。すぐ寝具一式代えさせるし」
・・・・本当すげぇな、ゾル家。なんかこんなこと言ってばかりな気がする。
「じゃ、お言葉に甘えて風呂入ってくる」
「いってらっしゃい」
「おー―」
20分後
がちゃ
「イルミぃ〜?」
「何?」
「コレ誰の?」
「オレ」
「・・・・やっぱり」
風呂から上がった俺はイルミから手渡された着替えに袖を通した・・・が。
デカイ。
袖やズボンのすそが余りまくりだ。
・・・・なんか無性に哀しい・・・。
「やっぱり大きかったね」
「・・・・・・」
哀しい上に悔しいよ。
「でも、キルやカルトのは小さいし、ミルキや親父のはデカすぎるだろ?」
「・・・・・確かに」
「それにじぃさんのだと、可哀相かなと思ってさ」
「・・・・・・」
確かに、ゼノさんには悪いが一日一殺は・・・。
「それで我慢してよ」
「いや、わざわざサンキュ」
「どういたしまして。でも、変じゃないと思うけど?ソレ」
「そうか?」
ちなみにイルミが用意してくれたのはシンプル服で、下は白いズボン、んで、上は薄手の白の長袖で、肩口と袖口に補強がされていて、そこに金属の丸い飾りがついているものだった。
イルミは細いから横はそうでもないんだけど、どちらも長くてズボンは2回ほど折った。
くそぅ!
俺が牛乳でも飲むかな、とか考えたとき、コンコンと、ドアがノックされた。
入室を促されて入ってきたのは、朝ぶりのカルトだった。
「おぉ〜カルト!何か久しぶりだな〜」
「着替えたの?」
「ぉ、おう」
走りよってきたカルトが俺の格好をみて聞いてくる。
「白も似合うね」
「サンキュ」
にっこりと笑って返してやる。
カルトは俺の足元、おそらく折ってあるズボンを見て顔をあげた。
「・・・・それ兄さんの?」
間違いなく、俺の笑顔が0コンマ1秒ほど固まった。
・・・・・カルト、俺牛乳飲むよ!もう手遅れかもだけど!
二十歳の決意。
いいんだ。男は30まで伸びる奴とか居るらしいから!
俺が再び決意したとき、イルミが尋ねた。
「カルト何か用でもあるの?」
「あ!そうだ。そろそろ夕食みたいだよ」
忘れてたとカルトが兄に伝える。
「そう・・・あ。食べられる?だるくない?」
ふとイルミが振り合えって尋ねてくる。
「いや?平気。なんか風呂入ってさっぱりしたし」
「なら良かった。行こう」
ぎぎっ
重苦しい食堂のドアを開けて中に入ると、
「まぁ!!さん白いお召し物もお似合いね!!」
キキョウさんにいきなり詰め寄られて、俺はのけぞった。
そんな俺にかまわず、イルミとカルトは席についてしまう。
視線を送れば、カルトは眉をよせてるし、イルミは傍観している。
HELP ME-―――?!
「まぁ〜!可愛いわぁ〜vvv」
俺をあちこちから、せわしなく眺めてキキョウさんが言う。
・・・・だから俺は成人男性ですってば。それは嬉しくないんだって。
そんな俺を助けてくれたのは、大黒柱シルバさんだった。
「キキョウ、とりあえず座れ」
「・・・・はい」
流石のキキョウさんも大黒柱に諭されてしぶしぶ席についた。
・・・・・・た、助かった!!シルバさん感謝します!
食べ始まって少しした頃。
「だが、白を着ていると”死神”にはみえんな」
と、シルバさんが笑いをこぼす。
「あらアナタ!可愛ければ宜しいじゃありませんの!」
お〜い爆弾発言だぞ〜キキョウさん。
「うふふ、それにしてもどうしてイルミの服を着てますの?」
「俺着替え持ってなかったんで、貸してもらったんです」
「まぁ!なら私に言ってくだされば、可愛いお洋服やお着物がたくさんありましたのに!」
いや、可愛くなくて結構です!!
「そうだわ!さん!明日からお着替えは私に用意させてくださいな」
キキョウさんのまわりにお花やらハートやらが舞っているのが見える。
俺の中の何かが危険信号を発しまくってる。
「え?!いいですよ!俺自分の服が乾けばそっち来ますから!」
どんな格好させられるかわからんし!!
「あれはお仕事着でしょう?しばらくは家にいてくださるんでしょう?」
「まぁ・・・そうですけど・・・」
「だったら良いじゃありませんか!」
ズイッと近寄られる。
ぅ・・・勢いが怖いです。
俺が詰まっていると、イルミが口を開いた。
「まぁいいんじゃない?」
無責任なこというなよイルミ!!
「ボクもいいと思うよ。いろいろ似合いそう」
か・・・カルト・・・。お前も敵か!
「じゃぁ決まりね!」
キキョウさんが嬉しそうに両手を合わす。
「・・・・・もぅ・・好きにしてください」
俺の負けだ。
なんとか食事をすませ、キキョウさんをシルバさんに押し付け、部屋にもどった。
「つ・・・疲れた」
「そうだね、じゃぁ今日はもう寝よう」
「ぉ〜ぅ」
ばふりとベットに沈めばいい匂いがする。
ホントに全部きれいなのに取り替えたんだ・・・とか考えていたら、ぐいと引っ張られて目を開ける。
「・・・・イルミ?」
何故か昨日と同じようにイルミの抱き枕状態。
さっきは手が冷たいと思ったけど、こうしてると温かいなとか的外れなことを思う。
「体力回復のために今日は寝ながら絶ね。乱れたら明日のメニュー追加」
「ぅえ〜?」
「明日はたぶん母さんが朝早くに来るだろうから、早く寝なよ」
「・・・・・・・・・・」
「ずいぶん家に溶け込んだよね、」
・・・・ほんと、俺、まだ2日くらいしか居ないんだけど。
嬉しいような、なにやら複雑な気分で、俺は眠りについた。
20051028