かれこれ、修行も応用に入って1週間が経ちました。
そして、今、俺の前には、嬉々とした表情のシルバさんがいます。
遠慮したい貴重な体験。
ここ1週間、ものすごくハードだった。
円のほか、周・隠・硬・堅・流と、応用すべてを叩き込まれた。
流にいたっては、イルミに1%のずれも許されなくて、それはもう疲れた。
叩き込み終わると、今後は念使用の組み手をやらされた。
でもさ、めっさ本気で攻撃するの止めようよイルミ・・・。
何度俺が死にかけたことか!!
何度主張しようとも、「大丈夫だよ、死なないでしょ?」と飄々とぬかすのだ。
「本気でやらないと身につかないでしょ?」って・・・君の本気の蹴りは並みの動体視力じゃ見えないからね?
一撃一撃ものすげぇんだ。マジで。手加減てものを覚えてくれゾルディック家。
毎日のようにイルミと手合わせをして、嫌というほど念の基礎は身についた。
そして今日、何故か俺は朝起きてすぐ、寝惚け半分のままここに連れてこられた。
とてつもなく広い部屋で、他の部屋同様石造りだ。
そして、中央付近に嬉々とした目で立っているシルバさん。
・・・・・どういうことだ?
眉を寄せてイルミを仰ぎ見れば、爆弾発言が投下された。
「あぁ、今日は親父と手合わせだから」
・・・・・は?
・・・・・・はぁ?!?!
「・・・・・・・・マジで?」
「うん」
恐る恐る聞けば、微かな希望虚しくコクンと頷かれてしまった。
マジで?!ゾル家当主だぜ?俺、青二才だぜ?念覚えて2週間もしてねぇぜ?!
「はい、さっさと行く」
と、混乱中の俺を、イルミは普通に背中を押して前に出す。
「や、ちょっと落ち着こう!!」
「いや、焦ってるのだけだし」
「NO〜!!」
マージ―デ―?ワタシ ハンタゴ ワカリマセン (現実逃避
「はいはい。ほら修行修行」
淡々とイルミにあしらわれてしまった。くそぅ!!
しょうがなくシルバさんの前に進みでる。
「・・・・・」
「手加減は得意じゃないからな?」
「・・・・・」
わー―――お父様目が活き活きしてらっしゃいますわー。
って!俺!ピンチ!!
「い・・イルミ・・・?」
「何?」
壁に寄りかかって傍観モードのイルミに声をかける。
「ちなみに鎌の使用は?」
「・・・・ん〜・・・親父に任せる」
そういわれて、シルバさんを伺ってみる。
パパさん、すげぇにんまりしてるよ。
俺とシルバさんの身長差、20センチ強。大迫力でぶっちゃけ怖い。
できれば相棒は使いたい。じゃないと俺生き残れる自信ないよ!!
「まぁ、いいだろう。イルミ、時間は?」
「んーまぁ3時間やれれば合格じゃない?」
「・・・・・・ハイ!?」
時間、とは、手合わせの長さだ。
イルミ相手には最終的に6時間くらいやらされたけど、死にそうだった。
それを、当主と3時間!?しかも念あり。
「・・・・・・」
「・・・そんな目してもダメ」
じっと目で訴えてみたがダメだった。くそぅ!
「まぁ俺相手に3時間やれれば何処でも通用するな」
や、それで通用しなかったらどうかしてるから!!
「じゃぁ早く鎌とってこい」
「あ。はーい」
そうだった、鎌の秘密はイルミにだけ教えているんだった。
ちなみに念の系統もまだイルミしか知らない。
まぁ、そのうち念のほうはバレルかもしれないけど。
イルミに目配せすると、しょうがないと言った様子で手招きしてくれた。
連れてってもらわないと、俺はまだ屋敷内で迷子になるからな!
「5分で戻って来いよ」
とシルバさんに言われてその場をいったんはなれる。
部屋をでて、シルバさんに気配を辿られないところまで行って折り返す。
とってくるフリだ。
「なぁイルミ、マジでシルバさんと手合わせしなきゃダメか?」
最後の希望に聞いてみる。
「ダメ」
即答かよ!
「というか、、他の奴に言わないの?それ(鎌)」
「うん。まぁ一応切り札だし。」
「オレはいいの?」
「お友達&師匠だから!」
「・・・・そう」
「そう!それにイルミ口固そうだし」
「ふーん」
わ、興味なさそー。ちょっと凹むぞ?
いいさ。俺はイルミを信用するって決めたんだもんねー。意地だ意地。
そうこうしていると、またあの部屋に戻ってきてしまった。
もう腹括るしかない俺。うぁ〜〜〜。果てしなく踏ん切りがつかない。
「来たか。さっそく始めよう」
わぁ・・・パパうきうきしてねぇ?
「・・・・頑張ってね」
「・・・おぅ」
意を決してシルバさんの前に立つ。
すると、シルバさんから殺気とオーラが漏れ出した。
研ぎ澄まされた恐ろしく鋭いオーラ。
・・・・マジでやばい。
「お手合わせ願おう、クリムゾン殿?」
くそぅ!楽しそうにしやがって!!
「こちらこそ、お手柔らかに、ゾルディック家当主殿」
お返しに此方もにやりと笑う。内心イッパイイッパイだけどね!ははん!
そして次の瞬間から、”手合わせ”が始まった。
全く隙のないシルバさんに鎌を周で覆って攻撃を仕掛ける。
堅でガードされるも、恐ろしい程の流の特訓で得たコントロール能力でシルバさんに触れる寸前に周のオーラ密度を上げる。
しかし、向うも瞬時に気付いてガードされてしまい、服をかすめただけだった。
「・・・・・ちっ」
「なかなかやるな」
「そりゃどーも」
やっぱ強ぇーなコンチクショウ。
それから3時間、もうマジでキツかった。
今、部屋は至るところに穴ぼこ、亀裂だらけです。
本当に本気で来やがって!!
最初はそうでもなかったのに、後半はもう、マジだ。
アレは絶対マジな目だ。
本気で怖かったデス。
「た、助かった―――!!俺!俺、今、生きてる―――!!!」
生きてるってなーんだーろ、生きてるってなぁ〜に♪(古)
そんなの今!今だっつの!!マジ俺、生ーきてーるじゃ〜ん!!
「お疲れ様」
終了の声を聞いて、盛大に床に転がった俺に、イルミがいつ持って来たのかタオルを渡してくれた。
「よかったね、今日、動きやすい服で」
「ホントだよ」
かなり余談だか、ここ1週間、これでもかというほどいろんなものを着せられた。
そう、キキョウさんですよ。
最初の着物の次はスーツ、パンク、ゴシック、貴族風・・・それはもう色々。
ちなみに今日は黒のチャイナ。上は黒の前後の布が長いチャイナ服で、金の刺繍の竜の柄。下は白のズボンだ。
まぁ、動きやすくて助かったけど。
どっから持ってくるんですか、キキョウさん。
「それにしても、ホント念の基礎は完璧だな」
シルバさんも汗を拭きつつ誉めてくれた。
「ありがとーゴザイマス!」
「あとは、経験だな」
「いや、もうすごい経験したから俺」
マジ、ゾル家の当主と3時間の死闘だなんて恐ろしい経験、ほぼ強制でさせられましたから!!
「そういやそうだな」と笑うシルバさん。
「今度親父とも手合わせするといい。親父の念のスキルはすげぇぞ」
「知ってマス。激しく遠慮します」
ゼノさんは、まさに達人ですよ、達人。
「まぁ今は仕事でいないがな。明後日には帰ってくるぞ?」
「そうだね。今度付き合ってもらいなよ。手合わせしたがってたし」
「や、俺の意思は!?」
「「なし」」
「何でさ!!!」
「「面白いから(ね/な)」」
「ハモんな親子!!」
変に息ぴったりで癪にさわるんじゃ!!
結局、俺とゼノさんの手合わせは決定事項らしい。
ゾル家恐るべし・・・。
20051106