「・・・・よく出来ました」
「っしゃ〜〜〜!!」
ゾル家の森で俺の叫び声がこだました。だって嬉しいじゃんか!
過酷な修行。容赦ないイルミ!
マジ血反吐とか吐いたぜ・・・。
それを!俺はたった今それを!乗り越えたんだから!!!
出発
キルア達と別れて9日目の今日、なんとか修行は終了した。
今までより、さらにスパルタ式で。
「うん。だいたいはまぁ、OKかな」
「頑張った俺!!」
「そうだね・・・はい」
喜んでいる俺に、イルミが紙切れをよこす。
「何コレ??」
「何って、メニュー」
さらっと言うイルミ。
紙には、念の各系統ごとのトレーニングメニューと、基礎体力、基礎攻撃力UPのトレーニングメニューが書かれていた。
「・・・・・コレは?」
「日々精進」
・・・・イルミの口から!!?
「時間があったらやるんだよ?」
「・・・・は―――い」
しゃぁねぇ、まだ、イルミやシルバさんには及ばないからな。そう思いながらごそごそと紙をしまう。
「あと、絶対A級以上には手、出さないこと」
「たとえば?」
俺は何級とかそういうのにあんまり頓着ないから、どれが何だかさっぱりだ。
「ん〜まぁ、ヤバそいうなヤツには手ださないことだね」
「はーい」
よし、といってイルミが俺の頭をなでる。
そんな和やかな風景だが、離れて見ると岩肌が削れていたり、巨大クレーターがあったり、木がなぎ倒されていたり、もの凄いことになっていた。
そして夕食。
約一ヶ月の間食べつづけ、毒入りの食事に慣れてしまった自分を、ちょっと、しょっぱく感じながら、いつもながら豪華な夕食を嚥下した。
「明日でお別れなんて・・・寂しくなるわネェ」
珍しくキキョウさんが沈んでいた。
ヤバっ・・・俺今ちょっときゅんとしたよ・・・!
「また絶対、遊びに来ますから」
「えぇ。絶対よ?」
「ハイ」
にっこり笑い返せば、キキョウさんも笑ってくれた。
「気兼ねせんで、いつでも来ていいからの」
とゼノさんも微笑む。
・・・・本当に暗殺一家か?コレ。
カルトは何も言わずに俺を見上げてくる。わずかに眉がよっていて、目が行かないでと言っているようだった。
・・・・可愛いなぁ。
ぐりぐりと頭を撫でてやると、カルトの顔が綻んだ。
「ふふふ、仲良しね」
所かわってイルミの部屋、お休みの時間です。
いつもどおり、イルミの後にお風呂に入る。
このごろは俺が疲れてやる気が無いのを見かねて、イルミが髪を乾かしてくれる。
その心地良さに、こっくり舟をこぎ始めると、イルミに動くなと怒られる。
あぁ〜本当に家族が出来たみたいだ。
「ハイ、終わり」と、イルミが俺の頭をぽんぽんと軽く叩く。
どうやらぼーっとしている間に乾かし終わったみたいだ。
「ありがとー」
「どういたしまして。じゃぁ、寝ようか」
「うん」
今日もくたくたな俺は凄く眠い。
なんだかここ1ヶ月、結局ずっとイルミの部屋に居候だったな〜と、ボンヤリ考える。
いつの間にかイルミにいつもの体制で、きゅっと抱き込まれる。
あぁ、そういや初日からずっと、イルミの抱き枕じゃん、俺。
・・・ま、いいか。
「・・・こうやって寝るのも、今日で最後だね」
「そうだな〜」
「・・・・・抱き心地良かったのにな」
「・・・・・」
なんか微妙だ。
まぁ、でも、人のぬくもりが近くにあるのは落ち着くものだ。
こうやって抱っこされて寝るなんて、小さい頃、じぃさんにしてもらって以来だ。
たまに、カイト兄がやってくれるけど。カイト兄は忙しいから。
しばらく、こうやって寝るのは出来ないんだなぁ・・・。
「・・・ちょっと寂しいかな」
「?」
「うん、寂しい・・・」
「どうしたの?」
あぁ、ダメだ、眠くなってきた。
いぶかしそうに、イルミが俺の前髪を撫でるのを頭の隅っこで感じる。
心地良くて、きゅっと抱きつく。
「遊び・・・にきたら、また、こうやってくれると・・・嬉しい・・・かも・・・・」
それから俺の記憶は途切れていて、気付けば朝だった。
目覚めは、哀しいかな、慣れてしまったキキョウボイス。
「さん!お着替えしましょ〜!!」
「・・・ぅあーい」
バスルームに押し込まれ、服を渡され、ぼーっとシャワーを浴びる。
シャワーで目覚めてから、どんな服かに気付く。
「コレ・・・俺の服?」
それは俺が愛用している形と色をしていた。
が、結構着古していたのに、なんかぴかぴかだ。
・・・・なぜ?
「キキョウさーん?」
風呂場のドアからでて、これはどうしたことかとキキョウさんに聞く。
「どうしたって、クリーニングにかけただけですわよ?」
嘘だ。
「だって、ココとか、ココとか、破れてませんでした?」
私服で在ると同時に、戦闘服なそれは、所々切れたりほつれたりしていたのだ。
「ウチのメイドは優秀ですもの!」
そういう問題か??
「・・・なんか、ありがとうございます」
「いいのよ〜!あら、ちょっと襟が曲がってるわ」
「ど、どうも」
・・・何かこっぱずかしい!!
朝食を取ると、玄関(なのか?)まで、皆が見送りに着てくれた。
昨日仕事でいなかったシルバさんも今日は居た。
「いつでも来い」
そういうと、ぎゅっと抱きしめてくれた。
・・・・・パパッ!!!俺今ちょっと感激してるよ!!
てか、俺、今、足、浮いてますのことよ?
ちょっと背中も痛い。まぁ、嬉しいから許すけどさ。
「まぁ!シルバばっかりずるいわ!」
とキキョウさんにも、ぎゅーーーっとされる。
「絶対また、いらっしゃいね!!」
「約束します」
離してもらうと、今度はポン、と肩をゼノさんに叩かれた。
「今度はもっと扱いてやるからな」
意地の悪い笑みを浮かべでいるゼノさん。らしいなと苦笑する。
「お手やわらかに」
今度は、くんっとコートが引っ張られて、見るとカルトが眉を寄せてこちらを見上げている。
ここまで懐かれるとうれしいもんだ。
カルトの首が痛くならないように、しゃがんで目線をあわせる。
「カルト、今度は遊ぼうな」
今回は修行修行であんまりかまってやれなかったから。
そういうと、カルトの眉間のしわが消えて、口端がちょっと持ち上がる。
「うん!」
・・・・・・可愛い!!!
お兄ちゃんはめろめろです!!
「じゃ、行くよ」
・・・本当のお兄ちゃんは相変わらずマイペースだなぁオイ。
「うぃ。それじゃ、お世話になりました!また来ます!!」
笑顔で手を振りつつ、さっさと先に行ってしまったイルミを追いかける。
ちなみに次男は出てこなかった。大方徹夜でもしたのだろうと聞いた。
あぁ。きっとゲームのやりすぎだね!ミルキくんや(偏見)
・・・早速、ネテロじぃちゃんの試験でも終ったら、遊びに来てしまおうか。
そう思って俺は忍び笑いした。
20051122