「そういえば、試しの門は開けられたの?」

その一言にギクリとなる。

・・・・イルミ。嫌なことを思い出させてくれたな。

 

 

 

笑われました。

 

 

 

「早かったな」

イルミのパパが獣を執事に移動させながら言う。

おうともさ!頑張ったしね!!とかちょっと鼻高々になっていると、イルミがとっても気の重いことを思い出してくださった。

 

「で?どうなの?」

 

ズイっと俺に詰め寄るイルミ。

「えっと一応開けられた・・・けど・・・」

あちこちと視線を泳がす。背中を詰めたい汗が伝う。

 

「けど?」

 

しかしイルミは許してくれない。

「その・・・一回目はちゃんと押して開けたんだけど・・・入りそびれたっていうか、あの3人とはしゃいでたら、閉まって・・・。

に・・・2回目・・・その腕が疲れたからって・・・蹴っ飛ばして開けたんだけど・・・・」

「ほぉ・・・それで?」

感心したように男性が頷いて先を促す。

ちらちらイルミを伺うも、相変わらずのポーカーフェイス。

うぅ・・・。

 

 

「・・・・・すみません!扉へこませちゃいました!!!!

がばっと腰を折って謝る。

 

 

「「・・・・・・・」」

 

沈黙が怖いです。顔が上げづらいです。

 

 

「ぷ」

「ふ」

 

・・・・・・・・・・ぷ?ふ????

 

あっはっはっは!!へこませたのかアレを!!!」

男性が豪快に笑う。

それに驚いて顔をあげる。良く見ればイルミも笑っている。てか笑いを耐えている。

フルフルと肩が震えている。

珍しい!!!

 

「・・・・お、怒らないん・・・ですか??」

 

「そんなもんで怒らネェよ。あの扉を蹴って開けたヤツも、へこませたヤツも初めてだ!!」

と、また豪快に笑う。まさにライオンとかあそこら辺。

「しゅ、修理代とかお出ししますか?あの・・・結構へこみましたし;」

「いいや。今回のお前の報酬に加算するさ。それくらいどぉってことはねぇ」

良かった!!怒られなかった〜!!イルミパパ素敵!!器がでかいね!!

何はともあれ、後ろめたいことがなくなってほっと胸をなでおろした。

 

 

それから仕事の話に戻った。

「・・・それでは、此方の口座にお願いします」

お仕事モードに戻ってセリフと共に名刺を差し出す。

名刺といっても、口座番号とメルアドが書かれているだけの、唯の赤い紙だ。

名前は書いてない。紙の色がクリムゾンだから。わかりやすいだろ?

一応インクは3ヶ月もすると蒸発して消えるっていう特殊なヤツを使ってる。

「わかった、あとで振り込んでおこう」

「3ヶ月以内にお願いします」

「あぁ・・・・ところで、さっきといいアレは念ではないのか?」

あぁ、瞬間移動ね。

というか、ネン?・・・ネンねぇ・・・。

 

「イルミにもそんなことを聞かれましたが、聞き覚えはありませんね」

「そうか・・・・」

そう頷くと、王様から嫌な感じがした。

この前イルミから感じたみたいな。

そのまま手を伸ばしてくるから、とっさに後ろに逃げてしまった。

 

 

「・・・すみません、いきなり。・・・できればその手で触れないで頂きたい」

マジ無理。怖いもん何か。

 

 

「うむ。なかなか反応がいい。どうだ。コレを学んでみないか?」

「はぁ?」

思わず素で返しちまった!!!

そもそもコレって何さ!?ネンとかいう奴か?

 

「さっきどうして俺から逃げた?・・・正直に言ってくれ」

 

えぇ〜貴方から嫌な感じがしました〜とかいっても怒られないかな。収入減らないかな?

ちょっと戸惑ったが、じっと男性がこちらを見てくるので、しぶしぶ口を開く。

「・・・・・気分を害されたらスミマセン。その・・・なんか嫌な感じがしたので・・・;」

「以前感じたことはあるか?」

真剣に聞いてくる。

・・・なんだ?と思いつつも、一応正直答える。

 

「この間のハンター試験のとき、イルミから。それが初めてですね」

「イル・・・使ったのか?」

「1度使おうとしただけで使ってはいないよ」

「ほお」

なにやら感心している。

・・・俺ハブ?!すっげぇハブられてる!てか置いてかれてる!?

 

「あの・・・!それが何か?」

「この嫌な感じが念って言ってな。習得すれば特殊な能力を使えるようになる。コレを、ここで学ぶ気はないかと聞いているんだ」

「・・・・・・・・はぃ?」

それはゾル家に滞在しろと?

 

「ていうか覚えろ。お前は素質がある。一応ハンターなんだろ?覚えておかないと瞬殺されるぞ?」

「げぇ・・・」

マジか!そういやイルミは使えるっぽい。

「オレが教えてあげるから」

淡々とイルミが言う。そ・・そんなぁ。

教えてくれるのは嬉しいけれど、ゾルディック家にお世話になるのは抵抗があるって言うか。

「イルミぃ・・・」

助けて、と見えないだろうけど目で訴えてみる。

けど、当然のごとく失敗。うぅ。

 

「ククク・・・しごき甲斐がありそうだ・・・」

「ぅ・・・イルミパパまで・・・」

泣けてくるよ。男はつらいよ。

てかパパさんそれ本音でしょ?妙に楽しげだぜ?俺身の危険を感じる。

 

「・・・・・・・・・・・」

何も言われないことを不思議に思ってパパさんを見れば、何故かビックリ顔で固まってた。

え?何?!何かやってしまったのか俺。

身に覚えの無いことに内心大慌てな俺に「ふっ」と息を漏らす声が聞こえた。

 

「・・・・パパって・・・ッ」

見れば、イルミが笑いを耐えている。

 

 

あぁ!イルミパパとか言っちゃったからか!!(遅

 

 

「そういえば名乗っていなかったな。オレの名前はシルバだ」

必死に笑いを堪えて名乗ってくれた。めっちゃ声震えてた。

「・・・・です」

一応名乗る。

本当は依頼人に名前教えたりしないんだけど、イルミのパパだし。いっかってことで。

 

「そういやお前、いつまでフード被ってるつもりだ?もう仕事は終わったんだから取れよ。長い付き合いになるんだ

「決定ですか、それ」

あぁ。、お前のことは気に入った。だからこれからお前を扱いて強くなったら、贔屓にさせてもらうさ」

「いや、贔屓にされるのは光栄です・・・はぁ」

思わず溜息が漏れてしまう。どうしてこんなに個性の強い人が俺の周り多いんだろう。

もう観念しますよ。なんか勝てる気しないし。覚えといて損なさそうだし。教えてくれるのイルミだし。

 

 

それまでにあるものを覚えて来れればベストじゃな

 

 

ふと、ネテロじいちゃんの言葉が頭をよぎって思い当たる。もしかして、と。

 

「なぁイルミ、ネンって受験者でお前以外に使えるヤツいたか?」

「うん。でもヒソカだけだね。ちなみに受験者以外の試験管は全員使えるね」

あぁやっぱり。たぶんネテロじぃちゃんの言ってたのはコレってわけか。

このさき俺に必要な力。

プロに教えてもらうんだから、まぁいいだろ。そう思ってフードをとる。

これからお世話になるんだから素顔を隠すなんて失礼だと思うからだ。

「宜しくお願いします」

軽く頭を下げる。さらりと独特の色の髪が零れる。

 

「・・・・ずいぶん上玉だな。こりゃぁ」

シルバが俺を見てボソリと何か漏らす。

「・・・・はい?」

上手く聞き取れなかった。

 

 

「いや、みっちりしごいてやるさ。部屋は・・・好きなとこ使え。腐るほど空いてる」

すげぇーなオイ!腐るほどって!じゃぁそんなに作るなよ。

てかみっちり?お客待遇とかなし?うぇーぃ。

まぁ予想しなかったわけじゃないけどさ。修行がそんな甘っちょろいとは思ってなかったけどさ。

 

「・・・ありがとうございます」

「あぁ。あとその敬語やめろ。しっくりこねぇ」

「・・・善処します」

 

 

なんか知らないうちにゾル家滞在&修行が決定した。

 

 

 

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20051008