「おぉー何この湯気みたいなの」
「あぁ。それ、早く収めないと悪ければ死ぬから」
・・・・・・聞いてないよ?
無理やり起こす
なんだかんだで、早速ゾル家での修行が決まった。
決まったはいいけど、ゾル家になんのメリットがあるんだ?なんてふと思って聞いてみる。
「あ。でも俺を強くして頂けるのは嬉しいんだけどさ、シルバさんとかに何のメリットもないんじゃね?」
「あぁ。それならある」
「・・・・何?」
「「面白そうだから」」
2人の息はピッタリだ。
・・・・親子め!!仲良くハモりやがってこんちくしょーっ!
よくわからない憤りを感じマス。
「んじゃ、早速始めるか」
「そうだね」
「待て、急いで仕事を終えてきた俺に休息とかないの!?」
「「ない(ね)」」
「即答かよ!!俺お客と違うの!?」
「修行するからには家族扱いだな。もしくは弟子」
「・・・・・家族扱いねぇ・・・」
嬉しいような、遠慮したいような。
非常に複雑だ。
「それじゃ、精孔開こうか」
イルミが淡々と言う。
「何それ?」
「念は生命エネルギーを使う、そのエネルギーは精孔から出てる。だから精孔を開いてソレを出せるようにするんだよ」
「へぇ。どうやって開くんだ?」
「オレがに直接念を送って、の生命エネルギー・・・オーラって言うんだけど、ソレを刺激して起こす」
イルミが分かりやすく教えてくれる。シルバさんはその間興味深そうに此方を見ている。
所謂ショック療法的なもんってことだろう。
「じゃ、上着脱いでね」
「おう」
そういって俺はコートを脱ぐ。コート脱ぐなんて久しぶりだ。カイト兄との組み手以来?
なにせあのコート、ナイフとか仕込みまくりだから。
コートの下は肩の辺りまでバックリ開けてる黒のノースリーブ。右腕には赤い革製のリストバンド。
動き易いスタイルだ。ちなみにリストバンドには鉄製の板がついてて攻撃力抜群だ。
「・・・・細いね」
露わになった白い、細い肩と腕を見てイルミがボソリと言う。
「どうせ俺はもやしですよー。コレでも頑張って鍛えてんだぞ?」
「あぁ、いい体してるな。無駄がない」
・・・複雑!
シルバさん、誉めていただけるのは嬉しいけど、言い方ってもんがあるでしょうっ!!
一歩間違ったら危ない発言な気がする。
「ここにあっち向いて立って」
イルミがマイペース全開で進行する。
俺はそれに従って、イルミの数歩前辺りに背中を向けて立った。
鎌は足元に置く。
するといきなりイルミが俺の両肩をぺたりと触った。
「っ!!何だよイルミ!」
ひんやりとした手に突然触れられて驚いた。
「ん?いや・・・やっぱ細いと思って。んじゃいくよ?」
何だよソレ?
俺が?マークを浮かべていると、イルミが手を離して今度はゆっくり近づけてきた。
まだ触れていないのに後ろから押されているような感覚がする。
倒れないように足に力を込める。
「いくよ」
ズン!!
イルミの声と共に体に衝撃が走る。なんとかふんばって倒れるのを免れる。
次の瞬間、体から湯気がそりゃーもうすっげぇ勢いで立ち上る。
「おぉー何この湯気みたいなの。コレがあれか?えーっとオーラ!!」
「正解。・・・あぁ。それ、早く収めないと悪ければ死ぬから」
聞 い て ね ぇ ぞ ?!
「うーわーどうすりゃいいよ!?」
「それがゆっくり体を巡るみたいな感じを想像して」
そう言われたので、自然と目を瞑ってそう想像してみる。
「そう、それでオーラがゆっくり止まって、からだの周りをゆらぐイメージ」
あぁ、それ分かるかも。精神統一の感じ。
ピタリと、ぬるい湯気が止まる感じがした。
「よくできました」
イルミのその声にゆっくり目を開ける。
おぉーなんかすげェっ!!体の周りにぬるい何かがあるよ!
「それが基本形の”纏”。無意識に出来るようにしてね」
「どんなかんじだ?」
イルミがさらりと凄いことを言って、シルバさんが感想を求めてくる。
・・・どんなかんじって・・・・?そうだなぁ。
こう、なんか皮膚がもやもやしてるって言うか・・・うーん。
あ。
「なんか俺 今 脱 皮 で き そ う !!」
初めて蛇の気持ちがわかった気がする!
俺は目を輝かせて真剣に言い放った。
「・・・・・・ブッ!!」
「・・・・・・っ!!」
シルバさんが思い切り噴出し、イルミが急いで横をむく。
「あっはっはっはっは!!」
シルバさん大爆笑。
・・・何か変なこと言ったかな?こうも豪快に笑われると複雑なものがあるよ。
「・・・。つまりは皮膚の上にもう一枚皮膚がある・・もしくは服を着ているようだってことだろ?」
俺が唖然とシルバさんを見つめていると、持ち直したイルミがズバリ言ってくれた。
「お〜ぅそんな感じ」
そんな表現もできるか!と感心。
てか俺の表現どうよ。皮膚がもやもやするって。
「それじゃ、その状態出来る限り保ってね。もちろん寝てる時もだよ」
「・・・・は、はぁ〜い」
・・・頑張りまっす。
「それじゃ、部屋へいこう」
げんなり返事をする俺に一つ頷くと、イルミは淡々と切り出した。
「・・・・シルバさんは・・・」
「ほっとこう」
「・・・・さいですか」
「じゃ。親父、オレたち部屋に戻るから」
一応届いたみたいで、なんとか返事をしてくれた。
すげぇ笑ってるよ。そんなに俺の脱皮宣言がつぼったのか!?
「じゃぁ行こう」
俺はイルミに促されてシルバさんの部屋から出た。
ドアを閉める直前までシルバさんの豪快な笑い声が聞こえていた。