やっと、やっと出来ました。
ご依頼承りました。
俺はあの後、今日までの12日間、ネテロじぃちゃんに寝る間も惜しまれて修行をつけられた。
・・・アレは・・・スパルタっつぅか・・・・拷問?
マジで一時血反吐まで出なくなったりしたぜ、アハハハハハー。
・・・うん。実は笑えねぇんだけど。
修行内容は、四大行以外の念の基礎能力向上と基礎体術訓練。
なんか、イルミに貰った紙に書いてあったこと全てやり尽くしちまったさ。
その合間を縫って、自分の能力作り。
そして依頼2日前の今日、やっと原型が完成したのだ。
名前とかつけるのは苦手だから、保留。
まぁ、そこそこ使える能力になった・・・・と思う。
まだ実践で使ったこと無いから不安は残るけど。
「よし、このくらいにするかの」
待ち焦がれたセリフに、ぐったりしていた俺は復活した。
是非!そうしてくれ!マジ休みたい!!!
本気で切なる願いだ。もうこれ以上無理です!
「明日、向うに行って館長に挨拶に行くからしっかり休むんじゃな」
ふぉっふぉっふぉ・・・じゃねぇぞ?じじぃ。
愉快そうに笑うじぃちゃんにちょっとばかり殺意を覚える。
まぁ、疲れてるからスルーしてやろう。
「んじゃーオヤスミ」
明日は昼まで寝てやる!!
そう決意して俺はふらふらとあてがわれた寝室へ向かった。
翌日、目が覚めるとほどよく太陽が南中を越していた。
昼まで寝てやるという目標達成は上手いこと達成された。
さっすが俺!とか喜ぶのもつかの間、ドアには、
『わし等は先に飛行船で向うに向かっておるから、起きたら来い』
とのメッセージが・・・・・・・。
・・・・・・・置いてかれた?!
まぁ、鎌でネテロじぃちゃんのトコまでならすぐだけどさ。
先に相手のところに着いていたら大変だから、俺は急いで身支度を済ませて、じぃちゃんのところへ移動した。
ふわりと視界が開ける。
「「・・・・・・・・・・」」
沈黙が微妙だ。
一応クリムゾン仕様で行ってよかった。
見知らぬオヤジが居たよ。
きっと館長さんだよ。
だって、胸のプレートに書いてあるもんねー。
って、俺遅刻じゃん?!
「おぉ、よう来たの」
ネテロじぃちゃんは平然としてる。
でも向かいの恰幅の良いオヤジさんは、いや、館長さんはすげぇビックリしてます。
ゴメンナサイ。
内心冷や汗あせかきまくりな俺。
こういうとき、フードが顔を隠してくれるっていいよな。
ちなみに俺が到着したのはちょっと広め、20畳くらいの応接室。
机をはさんで、長方形の長い方に2・3人掛けソファーがあって、短い方に一人掛けのイスがある。
どれも統一されていて落ち着いている。
んで、長い方に、館長さんとネテロじぃちゃんが座ってて、入り口付近にマーメンさんがいて。
俺は、じぃちゃんのソファーの真後ろに到着しちゃったわけ。
「・・・ネテロ会長?」
館長さんが恐々と俺とネテロじぃちゃんに疑問の視線を送る。
「あぁ、彼が今回守り屋をやってくれる者じゃ。腕は確かじゃから安心してくださって結構じゃよ」
自己紹介を促されたので、なるべく落ち着いた声が出せるように心がけて俺は口を開いた。
信条その一。客に舐められないこと。
「クリムゾンと申します。・・・・俺以外の警備員はいりません。巻き込んでしまう可能性もありますので。それと、フードをとれ、とか、俺への詮索はなしにしてください。それがイヤでしたら依頼はお受けできません」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・クリムゾン?」
館長さんの口がポカンと開いたと思ったら、俺を穴のあくほど見てそう呟いた。
そうさ、クリムゾンだよ。
なんだか最近こっぱずかしい噂が立ってるらしいクリムゾンさ!!(やけ)
「・・・・彼は本物ですぞ?」
じぃちゃんが館長をじっと見詰める。
「・・・・わかりました、明後日からの展示会、警備員はつけません。どうぞ、宜しくお願いします」
館長が深深と頭を下げた。そこまで重大なものが来るのか・・・・。
まぁ、全力で守るさ。それが仕事ならば。
「ご依頼承りました」
そういって俺も腰を折った。
20051208