俺は半分好奇心で、その図書館へと脚を運んだ。
収獲
ここで一昨日から開かれている小さな展示会。
しばらく旅団の集合も無い事だし、ここで展示される本でも見ておこうかと、俺はこの町に一ヶ月前まえから滞在している。
この町の図書館は、なかなか古書がそろっていて退屈しなかった。
まぁ、それほど欲しい本はなかったから、まじめに借りて返してを繰り返している。
先週の事だ。風の噂で、今度開かれる展示会の本を雑魚が狙っていると知ったのは。
まぁ、雑魚が上手く盗めば、そいつらを殺って横取りでもするかと思っていた。
それほど興味を惹かれる本ではなかったが、手ごろに手に入るなら読んでみるのも悪くない。
飽きたら売ればいいんだ。
それから少したって、今回の展示会の警備につくのが、”クリムゾン”であるという噂も耳に入った。
何年か前から、ネット上や裏で騒がれているクリムゾン。
俺も興味があった。
俺はヒソカみたいな戦闘マニアじゃないから、ヤリ合いたいわけじゃないけど。
綺麗なものは嫌いじゃない。
俺はこの間借りた本を持って図書館へと向かった。
図書館には誰も居なかった。
別館は締まっていて、本館だけしか入れないようだ。
カウンターに、いつも座っていた初老の司書は居ない。
・・・・・せっかく本を持ってきたのに。
まぁいい、と気を取り直して、本が展示してあるだろう奥の部屋へ向かった。
部屋には俺のほかに、ちらほら本棚を物色しているお偉いさんがいるだけだ。
そして、例の本。
たしかに相当古く、それでいて綺麗に保存されていた。
それから・・・・・・クリムゾン。
おそらくアレがそうなんだろな。
本物かどうかはわからないけど、黒で統一された服。フードを深く被り、コートの前も合わされている。
・・・・たしかに死神っぽい。
本の隣で、完璧な絶を行っている。顔はフードに隠れて見えない。
まぁ、お食事中みたいだが。
黙々と口におにぎりを運んでいる。
・・・・なんか面白いところに出くわしたな。
死神が食事をしてるよ。
思わず口もとが緩んだ。
俺は警戒されないだろう位置、数メートル離れたところから、死神に声を掛けた。
「ねぇ」と声を掛けると、おにぎりを口物に運ぶのをやめ、ゆっくりとこちらに顔を向けた。
やはり顔は見えない。
「何か?」
死神の第一声はそれだった。
警戒されないだろうと思ったんだけど、どうやら、俺が念使いなのはバレてる。
そしてものすごく警戒されている。
鋭い声。そしてオーラ。
・・・・なかなかやるな。
まぁ、賊が狙っているらしいから、ちょっとくらい神経質になるのも無理は無いのか。
・・・・・失敗したな。
まずは交友的に行きたかったんだが。タイミングが悪かった。まともな会話は期待できない。
「いや、本の返却に来たんだが、係員がいなくって・・・困ってるんだ」
これは本当の事だ。展示会のために警備員や司書が居なくなるとは思わなかった。
俺がそう言いながら近づくと、ちょっと品定めするかのような間を開けてから、
「返却、貸し出しは明日からです。今日まではコレの展示のため、係員はおりません」
と、機械的な調子で言った。
やはり係員の類は展示会のために居ないらしい。
てか、世紀の大発見・・・とか言われてる本をコレ呼ばわりか。
「そうか・・・・延滞とか取られないよな?」
一応無難な事を言っておく。
まぁ、延滞とたれたらムカツクし。
「俺から言っておきますので大丈夫。心配なさらず」
へぇ、死神の一人称は俺だったのか。
俺は変なところに関心しながら、あたりを見回した。
本当に警備員は一人も居ない。
・・・・どうするか。
本は盗ってしまえなくもない。
じっと死神をみやる。
・・・でも、こいつとやるのは少々骨が折れそうだな。
そう思って、「わかったよ、ありがとう」そう言ってその場を離れた。
俺は、あの独特な雰囲気を持った死神に興味を持った。
今日は最終日だ。雑魚が動くなら今日だろう。夜にでも行ってみるか。
今度は舞っているところがみたいしな。
俺はそっと口端を上げた。
20051210