夜になった。

夜の図書館・・・3日目でも不気味なもんは不気味だ。

 

 

 

泥棒

 

 

 

朝になれば依頼終了。俺の役目も終わりだ。

そうすれば、めでたくネテロじぃちゃんから逃げ・・・一つ星ハンターになれる。

 

もうすぐ深夜の0時。

 

賊とやらの気配は無い。

ったく、来るなら早く来いってんだ。

俺としては早く片付けて寝たい。

まぁ、1週間くらい寝なくても大丈夫なくらいの体力はあるが、できれば毎日睡眠はとりたい。

昼寝、寝坊は大好きだ!

 

 

そんなことを思っていた矢先。

俺の円にばっちり、5人の人影が引っかかった。

一人は長身で三人は小柄、残り一人は中くらい。

全員男だ。

一人中くらいのが天井。小柄のうち二人は裏。

のこりの背の高いのと小さいのは正面だ。

 

 

おぉっしゃ来い!今俺は早く寝たくてイライラしてんだ。ストレス発散させろ。

 

 

人はイライラするとある意味無敵だ。

はおもむろに立ち上がって鎌を指輪から取り出して構える。

どうやら一番強いのは背の高い男。残りはそこそこだ。

 

 

バンッ

 

 

大きな音を立てて正面と後ろの扉が開き、正面から2人裏口から2人男が入ってくる。

そして、するりともう一人が天井からワイヤーで降りてくる。

堂々とした登場の仕方から、相当の自信家であることが伺える。

正面から入ってきた一番ガタイのいい男がリーダーだろう。

 

 

 

「いらっしゃいませ?」

 

 

はおどけて腰を折る。

「誰だてめぇ」

背の高い男がドスの聞いた声をだす。

どうやら短気なようだ。その声には苛立ちが含まれていた。

 

 

 

月明かりだけに照らされた円形の空間。

何もかもが鋭く濃い影を落としている。

静寂のなか響く声や音。

紙とインクの匂いと、月明かりに輪郭を鋭く縁取られた本。

ぬらりと光る赤い鎌の柄と刃。

充満する殺気。

 

微笑む死神。

 

 

 

「当館は閉館時刻を過ぎております、つきましてはお引取り願えませんでしょうか?」

腰を折ったまま顔をを上げ、ニヤリと笑う。

「っの・・・!舐めやがって!」

背の高い男のの隣にいた小さい男が声を荒げる。

しかし、リーダーに止められる。お前はすっこんでろ、と言ったところか。

プライドの高さが伺える。

「誰が帰るか!誰だって聞いてんだろ!」

唸るように言う。

しかし警戒してまだ動きは見せない。

リーダー以外の男はすでに相手の漏れ出る殺気に多少ビビっている模様。

腰を起こして、クスリと笑っては言った。

 

 

「ただの臨時警備員だ・・・・貴様に名乗る義理なんてないぜ?」

 

 

「はっ!生意気に!今ならまだ許してやる。その本を寄越してさっさと行け」

お約束なセリフには噴出しそうになるが、堪えて相手を煽る。

「こっちのセリフだ。さっさと帰れば許してやるぜ?泥棒さん」

すでには自分の勝ちを確信していた。

――負ける気が、しない。

 

「ちっ!」

次の瞬間、後ろにいた小柄の男二人が蹴りを繰り出してきた。

 

・・・・が、遅い。

 

イルミやシルバ、果てはネテロなどといった面々と手合わせをしてきたにはそれは遅く感じた。

鎌を一振りして一気に二人をのす。

生け捕りということで、肉体的外傷はつけない。

要するに痛覚、神経のみに痛みが伝わるが、実際切れていないため出血や傷で死ぬことはない。

しかし相当の痛みに二人は倒れた。

 

「言っとくが逃がさねぇぞ?」

 

ニヤリ、と笑う。

は出来たての念能力を発動した。

 

「っ?!何?!」

 

現れたのは赤い液体の塊。

宇宙などで牛乳零すとなるみたいに、球状の赤い液体がふよふよと漂う。

具現化系の能力だ。

現れた液体の正体がわからずうろたえる下っ端。

 

「っ!気にするな!殺れ!

 

リーダーの男の声に念を発動する残りの3人。

どうやら小男は具現化系のようで腕に武器を具現化し、液体に切りかかった。

 

 

「あぁ、触らない方がいいのに」

 

 

ボソリと呟かれた台詞は、愉快そうな音が含まれていた。

 

切りかかった瞬間赤い液体は弾け、雨のように降りかかる。

賊の具現化した武器は雨に当たり溶けていく。

 

 

「何だ!?」

「っく」

 

 

降り注ぐ雨。突然念が使えなくなって戸惑う賊。

「年貢の納め時だぜ?」

 

 

死神が笑う。

 

 

(その液体の効果は体力の吸収と強制的に絶状態に陥らせること・・・上手くいっていればだけど)

は戦いの最中でも自分の能力が上手く発動しているか観察していた。

そして、どうやら上手くいっているらしいことに、は微笑った。

降り注ぐ液体の色のせいか、やけに孤を描いた唇が紅く見える。

 

 

「くそっ!」

大柄の男だ。

さすがリーダーだけあって、何とか液体を逃れたようで力を振り絞って自分のダブルを作り出して襲ってくる。

具現化系能力でも高度な技。

たしかにダブルはそうとう厄介だ。

しかし、降り注ぐ赤い雨の中、ダブルはみるみる溶ける。

は向かってきた男も鎌で一薙ぎした。

「ぐあっ!!」

 

どさり。

 

男は倒れた。

の勝ちだ。

それを見て、残った二人は逃げよだした。仲間意識云々は薄かったようである。

 

 

「・・・・・・・・逃がさネェって言っただろうが」

 

 

は自前の脚力で一気に二人の前に移動して鎌を薙いだ。

叫び声を上げて二人は倒れた。

「・・・・残念だったな」

はピッと鎌を一回しして肩に担いだ。

「・・・ところで、

 

 

 

   さっきから覗き見してんのは誰?」

 

 

 

さっきから気になってしょうがなかったのだ。

一対の視線が。

 

 

 

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20051211