何もかもが順調です。
・・・・でも、俺はちょっと欲求不満。
きっかけ。
俺は闘技場近くの街に出て、ぶらぶらとお昼を食べる場所を物色していた。
ジャポン料理屋にカフェ、ファーストフード店と、意外にも品揃え豊富。
色んな店を見ながら、ぼんやりと、これからどうすっかなーなんて考える。
キルアたちの修行は順調だし、ゴンは希望通りにヒソカと対戦できる!!ってキラキラした声で報告してくれちゃったし。
俺は何故か皆対戦してくれないし。(なんでか全て不戦勝
暇。
「あ〜ぁ。つまんねぇーの」
思わず独り言。
「何がつまらないんだい?」
「何がってお前・・・・・・・・あ?」
・・・・独り言のキャッチボールなんて器用な真似、俺には出来ないはず。
そして背筋にゾクッとくるこのオーラ。
もしかしなくても、
「ね♠何がつまらないんだい?」
「・・・・・・・・・ヒソカ?」
ギチギチギチ・・・・っと、機械仕掛けのロボよろしくゆっくりと振り返れば、案の定にっこりと極上の笑みを浮かべたピエロ様。
ただ、予想外だったのは、初めて闘技場で会ったときのような、スタイリッシュな服装で、ノーメイクだったこと。
「やぁ奇遇だね♥」
「何してんだよお前、こんなとこで」
しかもそんなカッコで。・・・という台詞は飲み込んだ。
だってこっちが普通であるべきだもんな、一般的に。
「何って、ご飯を食べにね◆よかったら一緒にどうだい?いいパスタ屋を知ってるんだ♣」
「・・・・・・・・」
「ね?」
うん。よかったらとか言いつつ、がっちり俺の手首掴んでるってどういうことかな?
しかも、ね?とか小首傾げても可愛くないからな!お前格好いい系だから・・・・・って、うわ、自分で言ってて悔しくなってきた。
「?いくよね♥」
うん、疑問系だけど決定事項だね、その言い方。
思わず乾いた笑いが口から漏れたが、まぁ俺も昼飯に出てきたわけだし、特に問題は無い訳で、素直に首を縦に振っておいた。
ヒソカさんからは満足げな笑顔を頂きましたとさ。
そんなこんなで、連れてこられたパスタ屋さん。
こじんまりとしているが、清潔感の有る、隠れ家的お店。
「へぇ〜・・・いい店じゃん」
おもわずそんな感想が漏れる。
「でしょ♠」
にっこりと笑うと、ヒソカはそっと店のドアを開けて俺に入るように促す。
チリンと控えめなベルに迎えらる。
中も落ち着いた雰囲気で、美味しそうな匂いが香っている。
「んーコレとかお奨めかな♠ちょっと変わってるけど、食べ易いし◆」
席に通され、今はメニューとにらめっこ。だってどれも美味しそうだし。
決めかねてる俺を見て、ヒソカがお奨めの品を教えてくれる。
・・・・・・・・なんだか、俺も男だけど、ヒソカにエスコートされてるみたいだ。
ドアなんか開けてくれたし、さっきだって椅子を引いてくれた。
「なんか、ヒソカって意外と紳士だよな」
無事オーダーを済ませて一息ついたところで、徐に思ったことを言ってみる。
「・・・・行き成り何を言い出すんだい?」
「だってさー。なんかエスコートし慣れてる」
キョトンとしたヒソカは、俺の台詞にちょっと間をおいてからククク・・・♠と笑い出した。
・・・うん、見た目クールビューティーだけど、笑い方はピエロだ。
「ククク・・・なんだ、そんなこと?ボクは何時だって紳士で優しいじゃないか♥」
「・・・・・・・・」
上機嫌に笑っているので、あえて訂正はしないことにした。うん、俺ってオトナじゃね?
「そういやお前、ゴンと戦るんだって?」
「うん♥今から楽しみなんだ♣」
「・・・殺すなよ」
ぼこぼこにされるのはある種勉強だからいいとしても、俺の友達を減らされたんじゃたまらない。
そんな真剣な俺の言葉に、ヒソカはクスクスと笑いながら上機嫌だ。
「ハイハイ♠」
「・・・もしもの時も、お前の理性総動員しろよ?」
「善処するよ♥
ところで、もちろんも見に来てくれるんだろ?」
ゴンとヒソカの試合、もちろん見に行きたい。
「おう、来週だったか?もち・・・」
ピピピピピピピピピピ・・・!!!
「「・・・・・・・・・・・」」
・・・ろんと続く前に、珍しくも俺の携帯がなっている。しかも電話。
俺はヒソカに目配せすると、通信ボタンを押した。
「はい、もしもし」
『や。』
・・・・いや、普通名乗るところだろ此処は。
まぁ、この挨拶には心当たりがあるわけで、さらにはこの美声にも心当たりありまくりなわけで、問題は無いんだけどさ。
溜息が出てしまうのは許してくれって感じだ。
「はぁ・・・・・・・・イルミ?」
『そうだけど』
「何の用だ?」
『ん。仕事宜しく』
「・・・・・・は?」
『親父がさ、ちょっとに運んで欲しいものがあるとかでさ。詳しいことはあとで。家においで』
・・・・いや、おいでってさ。
呆れるしかないな、このマイペース一家には。
「いつ?急ぎか?」
『そ。できれば明日来てくれると嬉しいな』
「明日?・・・・・・・わかった」
『じゃ』
通話終了。
「・・・・・ってことでヒソカ。俺仕事入っちゃった」
てへってな感じでごまかすけれど、ヒソカは禍々しいオーラ出まくりなわけで、俺は焦っていろいろと付け足す。
急ぎで、相手はゾルディック家当主で、お得意候補だから無碍にはできなくて、ってか一家と敵対するとかありえないし、とかとか。
「・・・イルミのお父さん?」
「ん?あぁ、そう」
「イルミに会いに行く訳じゃないんだ?」
「会いに行くのはシルバさんの方」
「・・・・・・・そっか♠」
まぁ飛ぶときはイルミのとこだけどさ、番犬の居ない比較的安全な場所がいいからな。
いつの間にか嫌なオーラは引っ込んだけど、ヒソカは口を尖らせて拗ねモード。
なんだかその様子が、ちょっと、本当にちょっとだけど微笑ましいような感じがして、俺は項垂れるヒソカの頭を撫でた。
「悪い。まぁビデオで見れるだろうし、なんならお前から話も聞けるし。勘弁な」
今日は奢るからさ。と付け足して、ご機嫌を伺う。
大人しく俺に撫でられてたヒソカは、今はキョトンと俺を見つめている。
「デザートつけてもいいぜ?」
なんだかその顔が可笑しくて、今度は髪をかき混ぜるみたいに撫でてやる。
俺は運ばれてきたパスタに舌鼓を打ちながら、試合を見れないのは残念だけど、これからちょっとは楽しくなるかなーなんて呑気なことを考えていた。
20080311
オマケ。
上機嫌でパスタをほうばるくん。
ヒソカさんはそれをボンヤリと眺めていました。
・・・・・・・・・頭、撫でられちゃった・・・・♣
「ん?食わないのか?」
「イヤ◆食べるよ♥」
ヒソカさんは、上機嫌にククク・・・♥と笑いをもらしましたとさ。