「なぁなぁクロロ」
「ん?なんだ?」
ご飯。
クロロの名前と、敬語無しの許可してもらってから約2時間。
なんでも蜘蛛は、今月末に此処に団員を集めて何かするらしい。
あと約1ヶ月暇人・・・というわけでもないけどそんな感じらしい。
外はすっかり夕暮れ。
俺が何故まだここにいるかというと、シャルやパク、フィンクスがもうちょっと居ろと言ったから。
クロロも、まぁいいか程度で承諾してくれたし。
俺も、また街まで戻るの面倒だったし。
そんな訳で、俺はご飯の用意をしようとキッチンへ言った訳だ。
しかし!
「・・・・食材が無いんだけど」
「あぁ、冷蔵庫のやつか?・・・食った」
・・・・・・・・・・・・聞きまして?!
食った!?俺の食材をっ?!あと3日分は大丈夫って思ってたのに!
はっ!・・・・そうか!5人ならあっという間だ。
「・・・・俺ご飯どうしよう」
「ビールと酒があったろう」
「アレは俺のじゃないんですーぅ」
ツルバミのです。
ビールは違うけど。
おそらくフィンクスあたりが持ち込んだんだろう。
「そんなの気にするなよ、どうせどこかで盗ってきたものだし」
「いや、俺酒はそんなに飲めねぇんだよ」
何故かじいちゃんから禁止令出てます。
俺も記憶なくすのは嫌いだし。缶ビール一本くらいでご馳走様だ。
「へぇ、意外だな。下戸か」
「ちょっとは飲めるけど、俺、酔うと危ないらしいから」
「・・・へぇ」
にやりと笑うクロロ。
「・・・・試そうとか思うなよ?」
ニコリ。
「ちぇ」
ちぇーじゃない。オールバックの癖に、たまに言葉遣いが可愛いのは何故だ。
「はぁ、じゃぁ今日は我慢するかな」
食わなくても生きていけるし。それなりの期間は。
「食べた方がいいんじゃないか?折れそうだ」
「・・・もやしっ子を舐めるなよ?結構腕力だって脚力だってあるんだからな」
「へぇー」
「うっわ。興味なさげ」
「興味ならあるさ、何なら試してみるか?」
ぼぅっと手にオーラを集め始めたクロロに、即決で結構ですと告げると、クロロは楽しげに喉を鳴らした。
「あーぁ。じゃぁどうっすかなぁ、飯ないなら明日当たり街に行くかな」
ドサリとクロロの隣に腰掛けて、頭の後ろで手を組みながら今後如何するか考える。
食料が無いならここは用済みだ。
蜘蛛も、これから活動するのに俺が居ては邪魔になるだろう。
9月1日にはヨークシン約束があるし、仕事もそれまで執らないつもりだ。
天空競技場に戻ってもいいが、ぶっちゃけもうファイトマネーは貰えないし、ツマラナイ。
新技を開発するのはホテルでもできるし、ハンター証のおかげでただ。やっぱりホテルか。
「おい、何だ?もうどっか行っちまうのか?」
後ろからフィンクスに話し掛けられて振り向く。
「うー?此処に俺いたら邪魔じゃね?これから仕事なんだろ?ご飯ないし」
「あら、邪魔なんかじゃないわよ?むしろ私はもっとと居たいわ」
「美人さんにそう言われるのは嬉しいネェ」
「ふふ、ありがとう」
パクは素敵にいい女だ。
「は何か用事があるの?」
と、パクが優雅に足を組替えながら聞いてくる。
「いや、9月1日にヨークシンで友達と会う約束してんだ」
「へぇ、なんでまたその日なの?」
シャルが食いついてきた。
「いや、その友達の一人がその日なら確実にヨークシンに居るからとかなんとか」
「へぇーオークション関係の仕事ってことか」
シャルが爽やか笑顔で頷く。
「さぁ?最後に会ったときは、これから仕事探すとか言ってたからなぁ」
クラピカどうしてるだろうなぁ。
そんなことを思っていると、フィンクスがそれじゃぁと声を出す。
「それまで暇なんじゃねぇか?」
「まぁ、そうだけど、まぁ俺は仕事終ったし、ホテルでも問題ないからなぁ」
「ホテルだと金かかるだろうが」
「いや。かかんないぜ?俺一応ハンター証もってるし」
「へぇ」「ほぅ」
シャルとクロロが何故か感心したように声をそろえた。
「な、何?」
その反応。
「「いや、別に?」」
シャルはにっこりと、クロロは本に目を落としながら、またも声をそろえた。
「なんだよ2人して・・・」
「ちなみに何ハンターなの?」
パクがそういえば、みたいに聞いてくる。
「別に〜?ただ資格目的」
立ち入り禁止区域には入れるとか、それにホテル代タダはデカイ。
「仕事って行ってたけど、ハンターの仕事じゃないの?」
「違う違う。知り合い・・・てかお得意さん?に頼まれて、ちょっと運び屋みたいなことしただけ」
+++++
クロロは”運び屋”の単語にぴくりと反応する。
頭に過るのは、守り屋と同時に運び屋としても名高い、死神の異名を持つ・・・
「そんなことよりよぉ、は飯があればここに居んのか?」
「んーそうだなぁ」
そんな会話に過ぎった事など忘れてしまう。
そうだ、もう行ってしまうのか・・・。
なんとなくこの人物に執着が沸く。
++++++
「・・・まぁ、いれても8月末までだな。さすがに1週間前くらいはいろいろ在るだろうし、お暇するよ」
「じゃぁ!飯があればそれまではいるの?」
今度はシャルが声を弾ませる。
「まぁ、ベットはあるし、シャルたちいっから淋しくないし」
ご飯さえあれば俺はOK。ホテルはいちいち頼むのが面倒だ。
「じゃあいなよ!オレもうちょっとと居たいし!」
無邪気に笑うシャルナーク。なんだろうこの可愛らしさは。
お兄さん、ときめいちゃったよ。
いや、俺のほうが年下かもだけどさ。
「シャルシャル」
「?」
ちょいちょいと呼ぶと、首を傾げながらやってきたシャルを座らせて、サラサラの金髪をくしゃくしゃと撫でてやる。
「え?ちょっと何?!!?」
「うんうん」
何だ何だとちょっと暴れるシャルを撫でて俺は大満足だ。
可愛いものは愛でるべし。
「いいでしょう?団長」
そんなシャルナークたちを尻目に、パクノダが話を進める。
「あぁ。好きにしろ」
「うふふ、それじゃぁ・・・・」
「「「フィンクス食べ物取って(来て/こい)」」」
「俺?!」
シャルナーク、パクノダ、クロロに揃って命じられたフィンクスは、最初講義するも、
口の上手い3人に丸め込まれて結局食べ物を調達に行った。
哀れだ。
がんばれフィンクス。俺は陰なから応援しているよ。
心の中で爆笑させてもらったけど。
そして、俺の仮宿滞在が決まったらしい。
20060513