「なぁ、本当にいいのかよ」
夜と朝
クロロたちと出会ったり、いろいろあった今日ももうすぐ終る。
俺は今、仮宿の以前から俺が使っていた部屋にいる。
なんでも、他の面子は皆好き好きに部屋を利用しているらしい。
外は昼間の雷雨が嘘だったように綺麗な空に月が浮かんでいる。
電気の通っていないこの建物の中で、光といえばその月明かりだけだ。
もう平気だろうとツルバミを出してみれば、やたら不機嫌な面持ちでいいのかと聞いてくる。
「なにが〜?」
ベットに足を投げ出しながら聞けば、壁にもたれて此方を伺っていたツルバミが寄ってくる。
「何がじゃねぇよ。あいつ等とココで暮らすことに決まってんだろうが」
ベットの横まで来てギロリと見下ろされる。
外からの月明かりでツルバミの紅い髪と鉄色の瞳が鈍く光る。
まぁ怖い!悪人面だよ。悪人面。
あれだね、泣く子も黙っちゃうね。いや、余計大泣きするかもな。
「別に俺に被害がなけりゃぁいいんじゃねぇ?」
「あいつら、ただモンじゃねぇんだぞ?関わるのがいい事とは思えねぇ」
「そんなこと言ったらネテロじぃちゃんだってジンさんだってカイト兄だってただモンじゃあねぇよ」
そう返すと、ツルバミは押し黙って不機嫌そうにそっぽを向く。
「心配サンキュ。でもまぁあいつら悪い奴じゃなさそうだし、俺は楽しいのが好きだし。めんどいの嫌いだし。いざとなったら、お前がいるし。なぁツルバミ」
顔を覗き込んでニヤリと笑えば、ツルバミは溜息をついてから同じようにニヤリと笑う。
「言ってくれるじゃねぇか」
「本当のことだろ?」
「まぁ、な」
ツルバミはどかりとベットに腰掛けるとばたりと俺の腹あたりに背中から倒れてくる。
「ぐえっ・・・!重っ!何すんだよ」
頭が腹にクリーンヒット。
夕飯飛び出しちゃうぞ馬鹿野郎。
「・・・しっかり頼むぜご主人サマ?」
ニヤリと笑うツルバミに俺も不敵な笑みで対抗する。
「誰に言ってんだ?」
「くくっそれもそうか」
それからツルバミは皆の前で具現化しないことを決めた。
切り札は隠しておいたほうがいい。
そうツルバミが言うからだ。
まぁ俺も賛成だし、言う事なしだ。
そうして俺たちは眠りについた。
「・・・・・い、おい、起きろ。・・・まったくなんで俺が・・・・・おい!起きろ」
何だか遠くで声がする。
どこかで聞いたこと在るような声。
・・・・誰・・・・だっけ。
んー・・・・・眠い。
「おい、起きろ」
「んんー・・・・。あと・・・あと2時間・・・・・」
「長すぎだ!おい、起きろ」
ゆさゆさと肩を揺さぶられる。
なんなんだ。俺が気持ちよく寝てるってのに。
あぁ、ツルバミか?
アレ?それにしては声が違う気がする。
んんー・・・?
「おい・・・・はぁ・・・」
お?静かになった。
「・・・・・・・・・・・」
キシリ・・・と誰かが近寄ってくる気配がする。
どうせツルバミだろう。と高をくくる。
昨日も一緒に寝たのだから当然だ。
「おい、早く起きないと凄いことするぞ?」
ふぅーっと耳に息を吹きかけられて毛が逆立つ。
「っにょわー――――っ!?!?!」
ガバッとうつ伏せだった身を起こして左耳をおさえる。
「なっ何すんだよ!!」
「お。やっと起きたか」
そう言って満足そうに喉を鳴らしている人物。
「・・・・・・・・・・・・・クロロ?」
「何だ?」
「・・・・・・」
ツルバミの奴。勝手に指輪に戻ったらしい。
・・・起こしてくれたっていいじゃねぇか。
「・・・?」
「あ?あぁ、ごめん。ぼーっとしてた。今何時?」
「さぁ?まぁ10時かそこらじゃないか?パクが呼んでいる。飯だそうだ」
・・・・幻影旅団て結構規則正しい生活してんのな。
「ホラ行くぞ。パクにどやされる」
ぐいっと両手を引っ張られて立たされる。
あまりに突然だったのでそのままクロロにぶつかってしまう。
「ぶっ」
「あ。すまん」
鼻強打。
鼻血が出なかったのは不幸中の幸いか?
いてて、と鼻を擦りながらあることに気付く。
「あれ?クロロって俺とあんま変わらねぇのな」
身長。
クロロの方が少し高いくらいだ。目線はあまり変わらない。
「・・・・・・まぁ、俺は意外にあの面子の中では標準的かな」
「へぇ〜」
団長なのに。
なんでも腕相撲大会を開いたときも丁度真中だったそうだ。
いや、そもそもなんで腕相撲大会なんてしてんのさ、いい大人だろ?って突っ込みはしないでおいた。
身長の事で言えば、なんでも250をこす男が居るらしい。
コルトピとかソイツのポケットとかに入るんじゃねぇか?
そんなことを話しながら俺たちは瓦礫だらけの正面ホールというのか、そこへたどり着いた。
「あら、。おはよう」
「おはようパク」
パクがにっこりと迎えてくれて、俺も笑顔で返す。
「まったく、起こすの大変だったんだからな」
「ふふ、お疲れ様団長」
ていうか、団員に使われてていいんですか団長さん。
「さぁご飯にしましょう」
パンののった籠と、マーガリンとジャム。
このいちごジャムをフィンクスがセレクトしたと思うと笑える。
「おはよう」
「おぅ、おはようシャル」
朝から爽やか笑顔の眩しいシャルナークが奥から顔を出す。
「なんだ、やっと起きたのかお前」
「寝る子は育つんだぞ?フィンクス」
それに続いてフィンクスもでてくる。
あとはコルトピだけだが、コルトピは自室に戻ってしまったらしい。
そんなこんなで5人でパンを食べながら、ふと、俺って結構馴染んでるなぁと思ってみたり。
あと1ヶ月。ここで生活楽しんでやろうでないの。
20050604