どう、しようか。
引っ掛り
今日俺がクロロを起しに行ってから、何故かクロロは機嫌がいいらしい。
それが何故かは知らないけど、俺はクロロが図書館であった青年だと気付いちゃったから大変だ。
・・・とりあえずあんまり顔に出さないように頑張ろう。
今までそんなに自分が売れているとは思わず、結構色んな人に適当に教えてきちゃったけど、これからは情報の管理きちんと頑張るよ。
ますます仕事時のフードは外せないな。
仕事といえば、今後どうするか、だ。
もうココへ来て1週間経っている。
ヨークシンでゴンたちに会ってからでもいいけど、そろそろ仕事しないと腕が訛っちまうわけだ。
一応、小型の重りをつけて生活してるけど、それじゃ足りない。
念も磨かなきゃぁ訛りそうだ。
あとは本格的に除念目的に能力を鍛えておいても損はなさそうだ。
まぁ、ぜってぇ人には見せないし、教えないけど。
俺だって命は惜しいし、面倒は嫌だし。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
シャルはどこかへ出かけたみたいだ。フィンクスは筋トレしてくるって出て行ったし、パクとコルトピは部屋だ。
そして俺はクロロの部屋のベットにクロロと並んで座っているわけだ。
クロロは何故か俺を隣に座らせてさっきからずっと本を読んでいる。
ぶっちゃけ暇だ。
読書は嫌いじゃねぇけど、クロロの本はマニアックすぎて俺にはのび太君現象の引き金にしかならない。
ふぁ〜っとあくびをして後ろに倒れる。
ぼふりとベットが揺れるが、クロロは気にするそぶりを見せない。
もそもそと枕を引き寄せて顔をうずめる。
ふかふかで気持ちいい。
どうしようか、このまま寝てしまおうかと思ったときだ。
ピピピピピピピピ
腰のあたりから電子音。
電話だ。
どうせクロロは気にしないだろうと勝手に出る。
「・・・・・・はぃもしもし?」
『あ!?』
聞こえてきたのは、結構久しぶりな声。
「おぅ。なんだ珍しいな。キルアか」
『そう!俺たちもうヨークシンについてたんだけど、はいつ頃こっち来れんだ?』
「は?もうお前ら着いてんの?」
『そう!G・Iってゲームゲットするための資金集めでゴンと競争中』
「へぇ〜面白そうな事やってんじゃん」
『結構楽しいよ。博打』
うん、キルア君、とっても楽しそうな、キラキラしたお声ですが・・・
「ガキが博打とすんなよ」
『ガキ扱いすんなよ!今俺結構勝ってんだぜ?』
「ふ〜ん?」
『そ!そんでいつ来れんの?すぐ来れるなら俺の手伝いしてくれよ』
「やだね。正々堂々一対一でやれ」
俺はタダ働きするほどいい人じゃありません!
『ちぇ〜』
「ちぇーじゃねぇよ。そんで俺はいつでもヨークシンいけるけど?」
・・・・ていうか、すでにヨークシン近郊に潜伏中!みたいな?まぁ、言わないけど。
『マジで?なら31日にこれるか?いろいろ相談とかあってさ』
「あぁ、そのゲームの事か?」
『そう』
「ん、わかった。じゃぁ31日にな」
『おぅ、じゃぁ詳しい場所とかは当日』
「はいよ」
ぷちっ
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「何?クロロ」
ぷちりと携帯を切って腰のカバンに仕舞うと、クロロと視線が合った。
すぐそらされるだろうと思ったのに、無言で凝視されたら、このセリフは自然だと思う。
「・・・・・・・・・いや」
「「・・・・・・・・・・・」」
き、気になる!!
「え?何々?気になる!!何なんだよっ!」
「・・・・何でもない」
「えぇ〜」
「・・・・・」
「はい、ゴメンナサイ」
何だか沈黙が怖いです。痛いです。
「・・・・・・・その携帯、どうした?」
しばらく黙ったと思ったら、ふとクロロが訪ねてくる。
「知り合いに貰った」
ヒソカから貰ったっていうか、まぁ買ったんだけど。
「・・・・・・・・そうか」
「それがどうかした?」
「いや、前に似たようなのを見た気がしてな」
「ふぅ〜ん?」
「まぁ、気にするな」
「おぅ」
そう言うと、クロロはまた読書に戻った。
クロロが読書に戻ってしまうと俺が暇だ。
自室ではないのでツルバミを出すわけにはいかないし。
「・・・・・」
寝転がったまま、クロロを後ろから観察する。
逆十字のコートにオールバック。なんともいえない存在感。
リーダーなだけあんなぁって感じ。
そこで、俺はあるモノに目を止めた。
「・・・・・・・・・・・」
クロロのコートの襟と袖のファー。
ふ・・・ふわふわしてんのかな。
毛並みフェチ(?)の俺としては放って置けない物件だ。
「よしょっ」
枕を抱えたまま起き上がって、クロロの後ろに回る。
それでもクロロは微動だにしない。
俺ってそんなに信用されてんのか?
いや、アレだな。俺が何かしても瞬時に対応できる自信があるんだなこりゃ。
「・・・・・クロロぉ」
「・・・・・・・」
呼んでも返事無し。
「・・・・・・・・・」
のしっ
俺はクロロに後ろからのしかかった。
「・・・・・・・っ!なんだ!」
「俺をシカトしたクロロが悪い」
クロロの右肩に顎を乗せて、さすがに驚いたらしいクロロの顔を見てすこし満足する。
そのまま首にきゅーっと抱きつけばファーがふわふわですべらかで気持ちいい。
さすが団長。いい物着てるな。
ファーに頬擦りする。はぁ、癒される〜。
バサッ
「ん?」
見れば、クロロが本を落としたようだった。
手元を見て、俺は袖のふわふわも気になって、首に回していた手を伸ばしてクロロの手首を掴む。
「な、何だ?」
「ん?袖もふわふわかなぁ〜と」
お。ふわふわであります。
「あぁ〜癒される。ふわふわじゃ〜」
もきゅもきゅとクロロの袖口のファーも触る。
3大ふわふわは制覇だ。
なんて考えていると、クロロが逆に俺の両手首を掴んだ。
「お?」
ぐいっと腕を前に引っ張られてクロロの意外と真面目な顔が見える。
「・・・、お前誘っているのか?」
「は?」
「・・・・・・・・・・お前に限ってないか」
何だか自己完結されてしまった模様。
「とりあえず、お前みたいな顔の奴は勘違いされるから気をつけろ」
「・・・・・・・?」
なんのこっちゃ。
「返事」
「はぃっ!」
・・・・・なんだかクロロがイルミに見えてきた。
「それで、いきなり何なんだ?」
「ん?いや、ふわふわしてそうだなぁ〜と思って」
「・・・・・・・・」
うわっ!何その冷めた目線!!!痛っ!痛いよ?!
「・・・まぁいい」
おぉ、お咎め無し!
「・・・・しょうがない、チェスでもするか」
溜息のあとクロロはそう言って苦笑した。
「やりぃっ!」
「絶対負けないからな」
ニヤリと口端をあげるクロロに、俺も笑い返す。
この日は、一日クロロと意地になって遊んだ。
クロロが、あの携帯に引っ掛かりを覚えていた事など忘れて。
20060616