カチ、カチカチカチ、カチ・・・・
「おっ?」
携帯電話。
「なんだ?いいのあったのか?」
先程から携帯を弄っていた俺が声をあげると、つまらなそうに俺の背もたれと化していたツルバミが後ろから覗き込んでくる。
今日は朝フィンクスに蹴り起こされてから、飯を食べて、やる事があるから、と部屋に篭っている。
ちなみに、ちゃんと円で周りに人が来たらわかるようにしてるぜ?
ツルバミを見られたら大変だし。
そんで、やることっつーのは、ズバリ仕事探し。
朝から最近溜まっていた数百通のメールを処理していた。
面白そうなヨークシン近郊での仕事。が今回のターゲット。
俺は1通のメールに目をつけた。
こりゃー中々面白い。
俺の肩に顎を乗せてメールを読んでいたツルバミも、ほぉ、と声を漏らす。
「・・・な?コレ面白いだろ?」
「確かに、いい度胸してんじゃん?依頼人の癖にを試すだなんてよ」
「だろ?」
届いたメール
件名:依頼
本文:ヨークシンサザンピースオークションでの護衛。および地下競売の代理参加。
報酬は前金50億。ただし、信用足るかどうか試させて貰う。返答はできるだけ早く頼む。
差出人:
バッテラ
「あれ?どっかいくの?」
俺がコートを羽織ってみんなの溜まり場所・・・つまりはあの瓦礫の広間に行くと、シャルが俺に気付いてそう声を掛けた。
俺がここに着てからコートを着るなんて初日以来だ。
「おう、ちょっとな」
「え?何しに?」
「就職試験?」
「何だそりゃ」
俺がう〜んと首を傾げながら言うと、上の方にいたフィンクスが声をあげる。
「・・・フィンクスって、いっつも高いとこに居るよな」
まじまじとフィンクスを見ながら言うと、シャルが綺麗に笑って言った。
「ホラ、ナントカと煙は・・・っていうでしょ?」
「あぁそっか!!」
「おい!!!」
馬鹿と煙は高いところがお好きってね。
「で、いつ行くの?すぐ?」
「ん?あぁ、メールがくれば行くけど」
「おい!!」
怒れるフィンクスは放置して話し始める。
「メール?」
「あぁ、仕事の依頼がきててさ、さっき返事したからそろそろ来ると思うんだけど」
「へぇ〜」
「おいっ!!」
「「フィンクス煩い」」
「なっ?!」
「フフ、大人気ないわよフィンクス」
「パクまで?!」
ずーんと沈んでしまったフィンクスをちょっと気の毒に思って、飴玉をあげた。
なんだか余計沈んだ気もするが気にしない、気にしない。
「それより、その分だとはここから居なくなるってことよね?」
「あ!そうだよ、戻ってくるの?」
パクの言葉にシャルがそうだとばかりに聞いてくる。
「ん?まぁ採用されればそのまま向うにいるし、されなかったら帰ってくるし」
まぁ、受かる自信あるけどな。
「なんだ、もう行くのか」
黙っていたクロロが本から顔を上げて聞いてくる。
「まぁな、そろそろ仲間も集まってきて大変だろうし」
「淋しくなるわね」
「そう言ってくれると嬉しいですなぁ」
そんなことを言って笑い合っていると、腰のカバンから微かな振動が伝わる。
「お、着た」
薄い携帯を取り出して開くと、場所と時間を指定する内容のメールだった。
”今夜8時、○○ホテル 1382号室”
「んじゃ、行くよ」
「ちょっと待て、アドレス教えろ」
踵を返そうとすると、クロロに止められる。
そういや、誰ともそんなことしてなかった。
「・・・まぁ、いいけど、外部に漏らすなよ?」
「分かってる」
番号とアドレスを提示した画面をクロロに差し出す。
もちろん、メルアドは私用の方で。
それなりになれた感じでアドレスを打ち込んでいくクロロをちょっと感心しながら見ていると、シャルがなにやら思案顔なのに気づいた。
「どうかしたか?シャル」
「ん?あぁ何でもないよ、オレにもアドレス教えて?」
「いいけど・・・じゃぁクロロ、シャルにもまわしといて」
「分かった」
クロロからクロロのアドレスが届いて、それからシャルに俺のアドレスが届く。
「じゃぁ、シャルも俺に送ってくれよ」
「う?うん」
しばらく画面を見つめるシャル。
その顔はかなり複雑そうだ。
その顔を見てクロロが少し口端を上げたのを、俺は見逃した。
「ねぇ、その携帯どうしたの?」
しばらくしてシャルが聞いてきた。前にクロロにも聞かれた気がするが、不思議に思いながらも答える。
「貰った・・・ってか買った?」
「誰から?」
「知り合い」
「幾らくらいで?」
なんだ?シャルも欲しいのか?
「まけて貰って350万Jだけど・・・それがどうかしたか?」
「・・・・・・・・・」
「なんだよ。そのビックリ顔は」
「・・・・・・って、クリムゾンなの?」
は?
はぁ?!
「その携帯オレが作ったんだよ。ヒソカからクリムゾンからの依頼だからって頼まれて」
へぇ〜シャルお前携帯作れるなんて凄いなぁ〜、じゃなくて!!!
てか何余計なこと言ってやがんだヒソカ!
「それ持ってるってことは・・・がそうなんでしょ?」
「い、いやだなぁ〜そんな訳ないでしょー?」
ヤバイ、棒読みです。
「シャル、それは本当か?」
クロロが、至極楽しげに口端を引き上げて言う。
わ〜ぉ!悪人顔〜って俺ピンチですよね!?
「え?うん、間違いないよ」
その言葉を聞いて、クロロは更に笑みを深くする。
「そうか、・・・お前だったか」
「な、なんのことでしょー?」
「とぼけるな。気付いていたんだろう?お前がクリムゾンなら、あの時口走った言葉も納得がいく」
「なに」
「”B級”・・・あの時図書館に入った雑魚はB級犯罪者だ。なぁ・・・そうだったろう?」
ひ、非常にヤバイ。
ど、どうする俺。
じりじりと近寄ってくるクロロに、後退するしかない。
「考えてくれたか?約束だったろう?次ぎ会ったら仲間に誘うと・・・なぁ?」
「あっはは〜誰が幻影旅団のメンバーにだと思うよ!?」
「それも、そうか」
くつくつ喉を鳴らして笑うクロロ。
「で、返事は?」
「・・・・丁重にお断りします」
「そうか。ならしょうがないな・・・」
お、聞き分けいいじゃん、とか思ったのもつかの間。
「捕まえろ」
そんな殺生な。
20060624