俺、只今バッテラ氏との待ち合わせ場所にきています。
就職試験
8時に○○ホテル 1382号室
そして今は7時55分!もちろん夜のだけどな。
クロロ達とじゃれてた所為でちょっと焦ったけど、さすが俺!ちゃんと5分前行動できてんじゃん?
なんだかすっげぇ豪華なホテルでびっくりだよ。
まぁこれくらいで気後れする俺じゃねぇけど。
なんでって?
俺の周り非常識さんが一杯だからだよ。
例えば某ハンター教会会長とかね。例えば某ゴンの父親とかね。
怖いもんなしだよマジで。
ロビーを通って今はエレベータの中。
ばっちりフードを被ってツルバミの入った指輪もスタンバイOK。
あ。一応ホテルの人にハンター証見せたから武器持ち込みOKだぜ?
そして目当ての階で降りる。
絶をしてる俺に気付く人間は稀だ。
念って便利ー。いろいろ大変だけど。
そしてやって来ました1382号室。
ケータイで時間を確認して8時ぴったりにノックする。
無言でドアが開かれ、ボディーガードらしき人物に促されて中に入る。
黒いスーツにグラサンに・・・ベタだな。なんてその人を見ながら思ったり。
中は普通の客室。シングルでそんなに広くない。
「お連れしました」と真っ黒黒助さんは中に立っている男性に言うと、黙って部屋から出て行ってしまった。
「さて、よくきたなクリムゾン」
男性は落ち着いた様子で話し掛けてくる。
威厳を感じさせる声音だ。
黒い髪をオールバックに固めていて、髭も蓄えている。
ただ、何故か眉毛だけ白い。
むむ、何故だ?はっ・・!!突然変異か!?
「私の名前はツェズゲラ。バッテラ氏に雇われている懸賞金ハンター。一応一つ星だ」
おおぅっと危ない。そんなこと考えてる場合じゃねぇよ俺!
「・・・・クリムゾン。一つ星です」
よろしく、と差し出された手に、若干警戒しつつも握手を返す。
「今回は君の実力を見極めてくれと頼まれてね。さっそくだがテストをさせてもらう」
「どうぞ」
「よし、それでは場所を移動しようか。ここは狭いからな」
あくまで、この部屋は待ち合わせのためだけのものだったらしい。
そして連れてこられた町外れ。
ただ地面の広がるところに、ツェズゲラさんとお仲間なのか他3人。
こんなに広いところな必要は何だ?
「さて、それでは試験だ」
パンっと手を打って仕切るツェズゲラさん。
「君には錬を見せてもらう」
・・・・・・・・・・・・・・・・は?
「・・・・それだけですか?」
「それだけで十分だ」
「・・・・・・・そうですか」
ツェズゲラさんは片手を上げて口端を上げて見せる。
ちなみに、この場合は普通に錬しろってんじゃなくて、おそらく念の修行の成果をみせろ的な・・・。
・・・俺、あんまり能力見せたくないんですけど。
どうするか。
う〜〜〜ん。う〜〜〜〜〜〜・・・・・・・ぷちっ。
「・・・・・手っ取り早く、誰か俺と戦うのはどうですか?」
「・・・・・どうしてだ?」
「あんまり人に能力見せたくないですし、錬は疲れるじゃないですか」
「・・・変わっているな。まぁ・・・それでもいいだろう」
ツェズゲラ氏は若干引きつったように笑って俺の申し出を受けた。
「それじゃ、俺がでよう」
鼻の高い薄い金髪で短髪の男性が名乗りをあげる。
「そうだな、頼む」
「よし、というわけだ。よろしく」
「・・・・・・・・・・はぁ」
なんだか、とっても舐められてる気がすんのは気のせいか?
気のせいって事にしとこう。
「それじゃ、はじめるぞ。・・・・・・はじめっ!!」
初めの合図に、相手さんはすばやく俺に突っ込んでくるけど、俺は動かない。
俺を手ぶらだと思ったら大間違いだぜ?
ほら、もう間合いだ。
びゅっ・・・・・・と鎌が空を斬る。
すばやく出して斬り掛かったつもりだったけど、流石に相手も伊達じゃないようで、ぎりぎりで交わした。
「わぉ」と小さく呟いて冷や汗をかく様子を見て、ちょっと楽しくなる。
無言で次の攻撃を繰り出す。
相手はすいすい避けながら隙を突いて攻撃してくる。
楽しい。
俺の口元はさっきからつり上がりっぱなしだ。
なんか、俺今シャル達の気持ちちょっとわからないでもないかも。
ただ俺は飽くまで一対一がいいから!弱いものいじめ反対だから!
++++++++
ザン・・・・っと地面にいくつも切れ込みが入る。
オレはそれを唖然と見ていた。
ケスーはオレの信頼する仲間で、念も身体能力もそこらのハンターより断然優れている。
それを、奴はまるでオモチャにじゃれるように、口元に笑みを浮かべて追い詰めていくのだ。
その様は恐ろしいようで、美しくすらある。
これが・・・・・死神か。
「ま、参った」
はっと気がつけば喉元にぴたりと鎌の切っ先を突きつけられて倒れているケスーが目に入った。
ケスーの息が乱れているのに対して、クリムゾンは全く乱れていない。
「・・・・・勝負ありだな。合格だ、クリムゾン」
オレがそういうと、クリムゾンはにっこりと笑って鎌を下ろし、ケスーを助け起こした。
そして有難う御座いましたと、道化のように優雅に腰を折った。
その意外さに目を見開いたのはオレだけではなかっただろう。
クリムゾン。バッテラ氏雇用試験に合格。
20060715