「それで、俺は9月1日の地下競売への参加と、それ以降の競売でのあなたの護衛をすれば言い訳ですね?バッテラ氏」
対話
俺は今、ツェズゲラ氏達に連れられて、それはもう立派なホテルの一室へ来ている。
ふっかふかのソファへ座ってバッテラ氏とご対面中だ。
ツェズゲラさんたちはバッテラ氏の後ろに立っている。
「そうだ。頼めるか?」
「・・・お引き受けしましょう」
「・・・そうか。私はG・Iというゲームを狙っている。どれだけ金をかけてもいい。
もし地下競売にもG・Iが出るようなことがあれば迷わず落として欲しい」
バッテラ氏は、鋭い眼光の初老の男性だ。
何かこう、譲れないものがある感じの、意思の感じられる瞳。
「・・・・・・・・分かりました」
ってか、G・Iってアレだよな。ゴンたちの探してるゲーム。
・・・・まぁ、俺が任されたのアンダークラウンドオークションだし。普通の方は何とかしてくれ。
「このホテルに部屋を取ってある、9月までは好きにするといい。私も少々仕事があるからな」
「はい」
「それと報酬だが、前金は50でいいかな?」
「十分です」
「そうか。何かあればツェズゲラに聞いてくれ。それでは私は失礼するよ」
「わかりました」
腰を上げるバッテラ氏に、俺も腰を上げてお辞儀する。
雇い主にはそれなりに礼儀をつくすもんだ。
バッテラ氏が去ったあと、ツェズゲラさんに部屋へ案内してもらった。
結構立派な部屋で俺は嬉しい。
「ここで過ごしてくれ。もちろん出かけるなどは自由だ。もし何か有ればここにかけて来い」
そういって電話番号らしき数字の書いてある紙切れを渡された。
「オレの電話番号だ」
「どうも」
俺が受け取って礼を言うと、ツェズゲラ氏は一瞬視線を泳がせてから、溜息をついて腰に手を当てた。
「?」
「一応。可能性だが言っておこう。俺はG・Iのクリアの為に雇われている。
つまり、G・Iをプレイするために雇われた。G・Iは念能力者しか入れないからな。
もしかしたら、働き次第だが、お前もG・Iへの参加を依頼されるかもしれない。考えておけ」
ツェズゲラ氏はそう言ったあと、踵を返して帰っていってしまった。
「・・・・G・Iのプレイ?」
考えながら部屋のドアを閉め、カギをかけた。
ついでに悪いけど円を張って盗聴器や隠しカメラの有無を調べる。
っていうか、そもそもG・Iって何だ?
俺の持ってる情報は、
@ゴンたちが欲しがってる。
Aバッテラ氏が欲しがってる。
B念能力者しかプレイできないらしい。
・・・・・つ、使えない情報ばっかだなオイ。
まぁ、最後のは重要だけどさ。
・・・・調べてみるか。
部屋の隅にあるPCを起動させる。
「狩人の酒場」というページが表示される。
結構凝った造りだ。
バーテンにカーソルを合わせてGIの情報をクリックする。
『2000万いただくぜ』
「・・・・・・・・・・・高いな」
どうせ基礎的な情報しか寄越さないくせに。
これはロイスに聞いた方が正確で詳しいだろうな。
・・・・後で聞きにいくか。
マフィアでもないバッテラ氏がどうして地下競売に入れるかも気になるし。
まぁ、大方金でなんとかしたんだろうけど。
そこまでする理由は不明だ。
・・・・ま、これは後々分かるだろうし、いいか。
とりあえずG・Iの情報は聞きに行くとしよう。
「おーぃツルバミ、起きてるか?」
「・・・・何だ?」
指輪から出てきたツルバミが多少気だるげにテーブルに片手を着いて立つ。
様になってるから悔しいが。
「どう思う?G・I」
「どうってもなぁ」
くるりと椅子を回してツルバミの方を向く。
「ゴンが探してるってことは、ジンさん絡みだろ?」
「まぁ、そうだろうな」
「ちょっと興味あるな」
「ふ〜ん・・・」
ツルバミは欠伸をして興味なさげだ。
「ま、まずはそのG・Iとやらが何なのか分からん事には始まらねぇだろ」
「まぁな」
「明日当たり出かけんのか?」
「ん、そうする」
「なら今日はもう寝ろ」
ふわりと掌で目元を覆われると、自然と眠くなってくる。
そういや、今日は蜘蛛と追いかけっこしたり、就職試験したりいろいろあったからなぁ。
そんなことをうつらうつら考えた。
ふわっと浮く気配がすると、ツルバミが俺を運んでくれてた。
「いいからさっさと寝ろ」
「ん」
鎌の化身のはずのツルバミは何故か温かくて余計眠くなる。
そうして俺は意識を手放した。
20060716