遠い・・・・。
呼ばれて飛び出て・・・?
今俺はロイスの屋敷から空港へ軽く数百キロ走って、今は飛行船の中だ。
ロイスの屋敷はアイジエン大陸の西外れの方に在って、ヨークシンから非常に遠い。
飛行船で4箇所ほど空港に立ち寄りながら10日かかる。
そして俺は今非常に暇なわけだ。
ハンター証のおかげでスイートルーム取れちまったから快適だけど。
只管修行と鎌磨きを繰り返す。
最近の映画はつまらないし。気を引く本もない。
それもこれも皆、あんな偏屈なところに住んでやがるロイスのせいだ。(擦り付け)
シュッシュッ
部屋には鎌を磨く音だけが響いている。
なんだかんだ言っても、結局長い付き合いだから愛着のある鎌。
最初、離れねぇし、訳わかんねぇしで半泣きだったのが遠い昔のようだ。
「・・・・そういや、どうやって技って増やしていったんだっけ?」
ふと、そんなことを思う。
自然と、身体能力云々が成長すると、何かしらできることが増えてきた。
まぁ、念のようにエネルギー源的なものが増えるとできることも増えるんだろうが、その能力の選択っつぅーか、どういう能力ってのは、どうやって決まるんだ?
あれか?こんなの便利かなーとか思ってたらできた系がほとんどだけど、そういうノリ?
・・・・非常識な鎌だよなぁ〜。
血ぃかかるのヤダなぁ。とか思ってたら斬っても相手さんから血ぃ出なくなったし。
テレポートとかできれば良いのにとか思ったら出来たし。
刃とか見えなければ良くない?とか思ったら出来たし。
・・・・・そういうノリか。
「・・・っつってもなぁ・・・」
暇じゃなくなる技ってねぇよなぁ。
「・・・じゃぁ、話し相手が欲しい・・とか?」
ってか、鎌が人になるわけないし。
誰か召還するとか?無理だな。
・・・電話すればいいか。
「そうだよ、誰かに電話するか!」
ズシッ
よし電話しよう!と立ち上がろうとすると、もの凄くG(重力)が腕と膝に掛かって立ち上がれなかった。
「・・・・・なんだろう、この妙な重さは」
「何って俺だよ俺」
・・・・・・・・・うーん。ココには俺一人なハズなのに・・・・。
「幻聴か!」
「現実見ろよオイ」
そろりと重みを感じる自らの腕を見る。
俺の記憶が正しければ磨いていた鎌があるなず・・・なんだけど・・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・うわぁ」
俺、自分よりデカイ奴お姫様抱っこしたの初めてぇー・・・
「って・・・えぇ?!誰?何してんのさ!俺の腕の中で!」
「よぅ」
「あ。どうも・・・じゃなくて!誰よ」
・・・俺の腕の中には偉い男前で偉そうなやつがいた。
とりあえず、俺の腕の中にいる男に身元を尋ねる。
やたら長身の、細身の男性。つり目で鉄色の瞳。深紅の髪はやたら伸び放題。
「誰って・・・忘れたのか?ゴシュジンサマ」
「俺、こんなでっかいメイドさん雇った覚えないけど」
「・・・・はぁ・・・・・鎌だよ」
現実逃避を続ける俺に、ソイツは溜息をついてから、俺の目を見据えて言った。
「俺は鎌の化身だ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ワンモアプリーズ?」
「・・・何語だそれは」
「もう一回お願いシマス」
「だから、俺はお前の鎌の化身だ」
・・・・・・・何ですと-――?!
なに、この非科学的な展開!いや!科学とか俺まったく分からないけど、何?念じゃねぇんだろ?何?幻覚?いやいやいや、俺まだそんな落ちぶれてねぇだろ。
「・・・・あ。ドッキリか「んなわけねぇだろ」
すげぇ、ナイス突っ込み。
「っじゃなくて、いきなり言われても訳わかんねぇし・・・。とりあえず・・・・俺の腕から降りて、説明しろ」
++++++++
只今俺プチパニック中でっす。
「だぁ〜かぁ〜らぁ〜!俺はお前の持ってた鎌なわけだ」
原因はそう言ってソファにふんぞり返っている男。
黒い着物みたいな服着てて、髪は深い赤で綺麗なんだけど、首大丈夫?ってくらい長い。床つきまくり。
鉄色のつり目は切れ長で、鼻筋もスッとしていて唇も薄い。
まぁ、所謂美形さんだ。
身長もイルミとかヒソカとかくらいありそうだったり。
羨ましい・・・じゃなくて!
「いや、だからなんで俺の鎌が人になってるのさ」
「だから化身だから」
「・・・・・・・・話が進まねぇ」
「お前が望んだんだろ?」
・・・・・・・・・・いいえ。まったく予想だにしない展開ですよ。
話し相手欲しいとは思ったけど・・・でもなぁ・・・うーむ。
俺が首を捻っていると、はぁ、と男が溜息をついて眉間あたりに軽く指を置いて頭痛いのポーズをとった。
いや、それ俺がやりたいくらいなんだけど。
「いいか?そもそも俺はなぁ、この世界のモンじゃねぇんだよ」
「・・・・・じぃちゃんに持って来られたんだろ?」
異世界トリッパーらしいしな。
「そう、んで、俺の動力源はお前なわけ」
「俺?」
男は気だるげに髪を掻き揚げて、説明を始めた。
「俺を使うには”気”ってもんが必要だ。まぁ”気”自体は誰でも持ってるが、桁外れにそれが必要なわけだ。んでお前はそれを持ってるわけ」
「・・・・・え?っていうか、そもそもなんで俺はアンタを装備しちゃったのさ?」
「俺が気に入ったから」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えぇ――――。
そんな威張られても。
「んな白けた目で見るんじぇねェよ。お前の気は中々いい色してたからな。っていうか喜べよ俺に選ばれたことに!これでも前いた世界では神様なんだぞ?俺は」
「・・・・・・神様なぁ」
いきなりそんなこと言われても。
「しかも闘神だ。俺のいた世界では悪鬼悪霊がうようよしてた時季があってな、それをたたっ斬るのが俺の仕事」
そういってにやりと右の口端を持ち上げて笑う。
つまりは神具ってことか。偉いもん持ってたんだな俺。・・・あんま実感ねぇけど。
「ここ数百年は俺の使い手になるような気の持ち主はいなくてな、退屈してたところにお前のじじぃが来て、この世界に持って帰ったわけだ」
じぃちゃん・・・・!!もう呆れて何も言えないよ。
「俺はもともとは鎌だから、主の気を使って力を振るう。お前が望まない限りこうして具現化も出来ない」
「じゃぁ、アンタは数百年も一人だったのか?」
さぞかし退屈だったろうなぁ。俺、まだ数日だけど、すげぇ退屈だし。
「・・・・・・っく」
は?
「あはははっはっはははっはははっはははは!!!」
「・・なんで笑うんだよ」
「そこか?気にしどこはそこなのか!?あぁ〜やっぱお前選んでよかったわ!!」
「さっぱ訳わかんねぇんだけど」
腹を抱えて大爆笑する男。
「クク・・まぁ気にするな。・・・話を戻すが、俺は自分の意志で鎌に戻れるが、鎌に戻れば何も出来ない。お前が俺を呼ぶまで俺は鎌のままだ」
「・・・・・・・そこまでは分かった」
とりあえず。俺の意思で出し入れ可能。且つ自動(気分)で戻ることも可能と。
「あ」
「んだよ」
「アンタの名前は?」
そういえば聞いていなかった。この鎌の名前。
「・・・・・名前ねぇ、俺にそんなもんはねぇな。闘神様〜って呼ばれてたし。なんならお前がつけろ」
「・・・お前じゃなくてな。ちなみにご主人様は却下だから。
んじゃぁ・・・クリムゾンは俺の仕事名だしな」
俺はしばらくシンキングタイムに入った。だって名前をつけるのをいいかげんにするのは、なんかダメだろ。
散々悩んで俺は口を開いた。
「・・・・・・・・「ツルバミ」とかは?お前のその着物の色。
何者にも染まらない色”橡”」
俺がちょっと迷い気味にそう告げると、男は満足そうに口端をあげて
「気に入った!これからもよろしくな」そういって笑った。
20050411