「あ〜首凝る。髪切ってくれ」

 

 

 

 

 

 

 

あれから5日が過ぎた。あと2日もすればヨークシンだ。

ツルバミと色々話して、いろいろ知った。

たとえば、ツルバミが人の姿のときは、俺から遠く離れても平気だという事。

なんでも、気を追って飛んで来れるからだそうだ。

そして、夕飯(さりげにツルバミも食ってた)を終えて、お茶をしていたところに、さっきのツルバミの発言。

 

「・・・・・・・・・綺麗なのに。まぁ、たしかに重たそうだけどな」

今ツルバミの髪はだらりと地面についている。鎌の柄と同じ色の髪。

もったいないけど、しょうがないか。

「わかった。んじゃ、風呂行ってて」

「おう」

なんだか、長年いっしょにいたっていうか、なんというかな所為か、とっても馴染んでしまった。

親友・・・っていうか、やっぱり「相棒」ってかんじ。

 

そんなことを思いながら、はさみを出して風呂へ向かう。

「入るぞー」

「おぅ」

がちゃりと風呂へ入ると、ツルバミはタオル一枚でお湯に使って寛いでいた。

さすがスィートなだけあって、ここは風呂もデカイ。

「あー・・・いい湯だな・・・」

「・・・・・・・どれくらい切る?」

なんか親父臭ぇな。とか思ったのは胸のうちだけに留めておく。

「テキト―」とひらひら手を振るツルバミに、俺はどうしようと一房ツルバミの髪を取る。

やっぱり勿体無い。

「・・・じゃぁ、候補な。腰、肩甲骨、肩、短髪。さぁドレ!?

クワッ!とオーバーリアクションで尋ねるも、

「お前の好みでいいぞ」と秒殺

「いや、困んだけど。・・・じゃぁ前髪は?」

「軽くなりゃぁ、どうでもいい」

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

どうしよう。

切りたくない。

 

「・・・・・・・・・じゃぁ、一発目はツルバミ自分で切れよ。それに合わせて俺が切る」

ダメなんだ!俺が髪を切るなんて・・・!!

大好きなんだ!そらもう!!!毛並みのいい奴LOVE!!

あぁ、もう認めてやるよ。髪フェチです!!大好きです!!文句在るかコラァ!!

 

「ん」

 

ザクッ

 

「・・・・・・・・・・・」

即決ですねツルバミさん。

”ん。ザクッ”って・・・・3秒?

くっ・・・俺の葛藤を返せ!!!

腹が立ったのでツルバミの頭をバシッと一発叩いておく。

「った!何すんだ」

「俺の葛藤代」

「なんだそりゃ」

「いいから。ほら前向く!切ってやらねぇぞ」

 

 

そんなやり取りの後、覚悟を決めて髪を切り始めた俺。

結局は段々楽しくなってきて、最後のほうは鼻歌なんて歌っちゃいながら切って、梳いて。

後ろ髪を腰くらいまで、前髪は顎より短くした。

これでも半分以下になったわけだし、十分だろ。

あとで俺のワックス使って弄って遊んでやろう。

 

 

「おぉー・・・軽い!」

ツルバミは頭が軽くなってご機嫌だ。

「はーい。タオル一枚でうろつかない!」

そう言って、俺はツルバミに買ってきた服を渡す。

「おぅ」

意外に素直に着替えるツルバミを確認して、俺はお茶を用意するために脱衣所を出てキッチンへ向かう。

ツルバミは緑茶とアールグレイがお気に入りだ。

今回は紅茶にして、ポットとカップを暖め、結構本格的なやり方でお茶をいれる。

まぁ聞きかじりだから合ってるかどうかわかんねぇけど。

 

アールグレイの葉を入れて、時計と睨めっこしていると、ツルバミが着替え終わったようで、近寄ってくる。

「おぅ、どうだ?似合うか?」

昨日一時留まった空港のショップで見繕った服だ。

いくらなんでも、あの服は目立つからと、こちらの世界のものを買った。

「おぉー似合うじゃん」

ツルバミが黒がいい。というから、俺とそろって真っ黒クロスケだ。

上は黒のワイシャツと皮のベスト。下は黒のストレートパンツとブーツ。ブーツのとめ紐は赤。

長持ちするように、一応上等なものを買った。

それに今日初めて袖を通したわけだが、Yシャツのボタンが3,4個も肌蹴ているのがツルバミらしいと言えば、らしい。

「ボタン上まで締めねぇの?」

「・・・ちまちましててメンドイ。苦しいし」

・・・・・やっぱりお前とは気が合う気がするぜぃ。

 

ふと時計を見れば、丁度いい頃だ。

こぽこぽとカップにお茶を注げは、いい香りが広がる。

「へい、ツルバミのぶん」

「おぅ、わりぃな」

「・・・お前、もの食えんだな」

結構前から思ってたけど。なんとなしに言ってみる。

「食わんでも平気だがな」

にやりと笑って紅茶を口にするツルバミ。

・・・まぁ、いっか。

 

 

ツルバミの年齢は不詳だ。本人もわからないらしい。

昔、悪鬼悪霊を払うための神具として名工に作られたらしい。

鎌の時でも意識はあるらしい。

というか、本来は鎌なんだそうだ。

なんともおかしな存在だ。

 

「おかわり」

ぼーっとしていると急に後ろから腕が伸びてきて、その手には空のカップが引っ掛っている。

ツルバミは、だらりと俺の肩に後ろから腕をかけて、俯いた俺の頭に顎を乗っけて催促する。

「へぃへぃ」

カップに紅茶を注ぎながら、なんだかそんなやり取りも自然になって来た事に苦笑を漏らす。

なんだか、家族が増えたようで、嬉しいような、少々複雑な気分だ。

 

 

まぁ・・・・わるくないけどな。

 

 

 

 

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20060414