時間が過ぎるのは早いもので、俺の仕事は明日に迫ってきている。
久々
ココ最近、もっぱら念の鍛錬をしていたせいか、街に出るのは久しぶりだったりする。
今はツルバミと2人でショッピングだ。
何を買いに来たかというとスーツだ。何せ明日は地下競売へ参加する。
この格好じゃまずいわけだ。
お金は先程渡されたから問題なし。ツルバミは買わなくてもそれっぽい格好だし。
今日は8/31つまりゴン達との約束もあるし、丁度いい。
待ち合わせは夜九時に広場。
まだまだ時間はある。
「おい、服屋あったぞ」
「ん」
紳士服の店を指差してツルバミが言う。
なかなか綺麗な店だ。
とりあえず店に入ってみることにした。
「いらっしゃいませ〜」
ドアを開けたときに鳴ったチリンという音に店員が愛想よく出てきた。
「今日は何をお求めでいらっしゃいますか?」
「スーツ一式お願いします。黒系で」
「畏まりました。こちらへ」
黒いスーツの並ぶコーナーへ促される。
「お客様は細身ですので、こちらと・・・こちらをお勧めいたしますが・・」
と真っ黒なスーツとダークグレーの細い線が入ったスーツの二つを出された。
「どちらもストレッチ素材を使用しておりますので動き易いですし、ある程度しまったラインを意識して仕立てております」
店員はそつなく説明をする。
「いいんじゃねぇ?とりあえず動きやすけりゃ」
ツルバミがスーツの端を触りながら言う。
「そうだな。じゃ、こっちの黒の下さい」
「畏まりました。では裾揚げを致しますので一度ご試着ください」
そのあと裾揚げをしてもらっている間にダークグレーのYシャツと黒いネクタイを買った。
ちなみにネクタイはツルバミ用にも1本買った。
「さて、次だな」
服屋を出て気合を入れ直す。
「次は何買うんだ?」
さりげなく俺のスーツの入った紙袋を持ってくれてるツルバミは,さして嫌そうでもなく聞いてくる。
「変装グッツ買いに」
「へぇ?」
にっこり笑えばツルバミもニヤリと笑う。
面倒事は嫌いだけど、面白い事は別ってわけだ。
そんなこんなで夜9時前。
俺は広場の中央にある噴水に腰掛けている。
ツルバミをどうするか迷ったけど、本人が子供の相手がメンドイとか言って指輪に戻った。
噴水の端に胡座をかいて頬杖をつく。
暇だ。
絶状態の俺はまわりにあまり気付かれずにいるから、人に話し掛けられることもない。
念の修行だと思って、円を保ってゴンとキルアが引っかかるのを待っている。
あとちょっとで9時になる。もうすぐ二人も来るだろう。
暇だナァ。
と、ぼーっとしていると、俺の円に二つの走ってくる塊をキャッチ。
片方はツンツン頭、片方は猫毛だ。
ニヤリと俺は口端を上げる。同時に用済みの円はやめる。
もう肉眼でちっこい何かが猛スピードで走ってくるのがみえる。
ずさぁ―――!!
「543万4997J!!」 「ゼ・・・0J」
「やったぁ〜勝ったぁ!!!」
「チックショ―――!!あとちょっとで12倍で入ったのに!!」
どうやら軍配はゴンに上がったみたいだ。
っていうか、目の前にいるのに気付かれない俺って痛くね?
「9時ギリギリだね」
まったくな。俺超暇だったし。
「あれ?来てねぇのかな」
いや、ホラ、目の前にさ、直ぐ横にさ、俺・・・俺・・・俺君。(錯乱
つーか本気で気付いてないのか?
「・・・・ここにいんだけど」
「「うわぁ!!」」
なんだその失礼な反応は。
「「いつからいたの?!」」
「お前ら来る前から」
「ってか絶してんなよ!!」
キルアがキレる。
「んなこと言ったって、気付かないお前らが悪い!こんなに目の前にいるのに!俺超疎外感!!」
「「そこなんだ」」
そうだよ、寂しいと死ぬんだよ兎は。あれ?関係ねぇか?
「俺なんっか街中だと浮くらしくてさぁ、いろいろ話し掛けられんのがウザイからな」
だから最近常に絶してる感じ。たまには纏もしねぇと訛る気がするから、纏もするけど。んで、たまに隠。
「それナンパなんじゃねぇの?」
キルアがニタリと猫顔になる。
「ねぇだろ。まぁ女性にも話し掛けられっけどよ、男も話し掛けてくるし」
ナンパじゃねぇだろ?と返すと、2人に実に微妙な顔をされた。
「んで、今日はこれからどうすんだ?話あんだろ?」
俺が促すと、2人はホテルへ行こうと口をそろえた。
んで、2人の取った部屋へ促される。
ハンター証の威力大。結構いい部屋だ。
「それで?G・Iだろ?話」
「「そう!」」
ベットに座った二人に俺は備え付けの椅子を2人の前に持ってきて座る。
う〜ん、なんか癒されるね。
子供ビバみたいな?弟最高!みたいな?
「やっぱジンさんがらみか」
「そうなんだ!ジンが俺に残していったっていう箱の中にロムカードが入ってたんだよ」
「へぇ〜・・・って・・・ん?」
俺はちょっと違和感た。
「お前ジンさんのこと親父って呼んでなかったか?」
「え?だって、こっちの方がしっくりくるかなぁ〜って」
ちょっと照れながらいうゴン。
ぅああぁ〜癒し系だぁ〜〜〜!
ぐりぐりと頭を撫でてやる。なんなら飴やるぞ?俺常備してんだから。
「わっちょ、!?」
「うんうん」
ていうか、ジンさんついに息子から親父扱いされなくなったなぁ。
うんうん、是非ともこれをネタにからかってやろう!!
「それで、俺らそのゲーム落札したいんだ」
俺がゴンの頭を撫でて色々自己満足していると、キルアが横からお構いなしに話を続ける。
ナイス選択。
「で、金が足りないと」
さっき500何万とか言ってたしな。
「そうなんだよ〜」
ゴンが項垂れる。眉毛は素敵にハの字だ。
「なにか良い仕事しらねぇ?今日までに金が何とかなることを期待してたんだけど、俺は負けたし・・」
「だから賭け事は甘くねぇんだって」
「う゛」
「んで、仕事だな?」
項垂れたキルアの頭をぽんぽんと軽く叩く感じで撫でる。
「紹介してやってもいいぜ」
「「ホント!?」」
「ただ、お前らが落札できる確立は0だ」
「「!?」」
俺が真剣に言い放つと2人はこれでもかってほど目を見開いた。
「どういうことだよ」
キルアが怪訝そうに訪ねてくる。
「どうもこうも、俺今大富豪のバッテラ氏に雇われてんだよ」
「「それで?」」
あぁ〜久しぶり、こう誰かがハモってる感じ!!
「その大富豪がな、G・Iの買占めを目的に今回オークションに参加してる」
「「えぇ?!」」
「金はこれでもかってほど、もう湧いて出るほど持ってる人だからな。1日2日で稼いだ金で渡り合えるわけが無い」
「「うぅ・・・」」
「まぁ、ガンバレや。俺は今んとこバッテラ氏側だし」
「「えぇ〜〜〜っ」」
「え〜じゃねぇ。俺は仕事なの」
「「ちぇ〜」」
「ただ、G・Iの情報なら手にいれて来たけど・・・まぁ基礎的なことだから知ってんだろ?お前ら」
「うん。調べたよ」
「念能力者による念能力者のためのゲームだろ」
なんだそのどこぞの国の政治論みたいなのは、キルア。
「それで世界で100個しかないってこと」
「この機会を逃すと危ういってことだな」
ゴンとキルアが交互に説明していく。
「へぇ、一応いろいろ考えてんの、お前ら」
「ま。一応な・・・だぁ〜金だよ金!」
「どうしよ」
髪を掻き毟るキルアに落ち込むゴン。
まさに子犬だ。
「・・・・・貸してやれなくもねぇけど」
「「え?」」
「だから金」
さり気に俺ってお金もちだったりする。最近バッテラ氏から前金に50億貰ったし。
毎回・・・まぁ所謂お金持ちからのお仕事は儲かるからな。
「とりあえず、幾ら必要なんだ?お前ら」
「・・・ひゃ、100億くらい」
「なんだ?そんなもんか」
もっと吹っかけて来られっかと思ったのに。
「「そんなもん?!」」
「そんなもんなら俺貸すぜ?」
「う〜〜〜でもっ・・・・」
「自分でなんとかしたいってか」
ぐぬぬぬっと唸ってしまったゴンに苦笑する。頑固だなぁと。
「ま、100億くらいならなんとかなっから、必要ならメールくれ」
「わかった」
未だに唸っているゴンの変わりにキルアが答える。
「んじゃ、俺帰るぜ?」
「ん。そうだ、明日レオリオ来るけど、どうする?」
「んーそうだな、仕事の関係もあるから明日行けそうだったら行く」
「そっか。じゃ、またな」
「おう」
最後まで唸っていたゴンを放置して、俺は帰路についた。
オークションは明日。
20060723