「オークション開始は9時だ。それまでに会場へ行く事。これが通行証だ」
カードらしきものを渡される。
「本日G・Iが1台出る予定だ。金に糸目はつけずに落として来い」
「わかりました」
「それだけだ。オークション終了後は俺に連絡するように」
そういってツェズゲラは部屋を後にした。
地下競売
ちなみに只今午後6時。
昼前にレオリオたちのところにも行ったんだが、レオリオが神業的値切りで注目の的だったんで、目立つのは得策じゃないだろうと、思いっきり心の中で爆笑してこっそり立ち去った。
キルアには、メールで仕事で行けないと連絡して、夜に備えてさっきまで寝ていた。
外は夕暮れから夜の間で、星は見えない。
眼下にはキラキラ光るネオンやビルの光り。
ぐっと伸びをして、キッチンに向かい冷蔵庫を漁る。
入っていたパンを食べながらオークションの資料を確認をする。
開始は九時ジャスト。
検問というか入る際いろいろチェックされるらしいから、若干早めに行っといた方が良さそうだ。
同伴者1・2名はカードなしでも入場できるようだ。
目当てのG・Iはオークション終盤ごろ登場予定。ちなみにこっちの入手元は不明。だからこそ地下競売なんだろうが。
ちなみに落札されなかった商品はネットオークションに回るらしい。
パンとカフェオレを飲み食いしながら、競りのルールも頭に入れておく。
手の形で幾らアップか見るらしい。はっきり言って面倒だがしょうがない。お仕事ですから。
それから俺は変装を済ませてツルバミにネクタイを着けてやる。
「・・・に、しても逆に目立つんじゃねぇか?」
大人しく屈んで俺にネクタイを結ばれているツルバミが、面白そうに俺の姿をマジマジと見る。
「いいんだよ。顔に注意が行かなきゃ」
「ま、たしかに、この格好だと顔より他んとこが記憶に残るかもな」
「だろ?」
はい、できた。と結べたネクタイをぽんぽんと叩く。
俺の髪は珍しいらしく、目立つ。だから普段はフードで隠してる訳だけど。
さすがにフードを被ったままオークションに参加できないから、変装する事にしたわけだ。
だから、今回はワザと派手な格好で俺の正体を霞ませる方向で!
あれ?なんか違うか?
・・・まぁ、いっか。
それから俺は通行証と携帯を持ったことを確かめると部屋を出た。
用意されたタクシーで約1時間半。
外は渋滞しまくっていて、思った以上に時間を食った。
何度俺がタクシーを降りて走っていきたくなった事か。
オークション会場。
時刻は8時を少し過ぎた辺り。
ツルバミとはやはり目立った。というか、浮いているような気さえする。
原因は、その見た目。
ツルバミは長い紅の髪を高い位置で結び、人相が分からないようにサングラス。
そして。
たぶん、一目でそれとはわからないだろう。
ツルバミと同じ紅のショートカットで、前髪は目に掛かる程度。シャギーがかっていて、少し外ハネだ。
所々ピンで留めている。もちろんヅラ。そして口元に黒子のメイク。
そしてフレームの太い黒ぶち眼鏡。ダサいのは趣味ではないので、四角いタイプでスタイリッシュなもの。
赤髪・眼鏡・黒子と覚え易いような容姿にしたため、おそらく顔を覚えているような者はいないだろう。
そのまえにインパクトが先立つ。
それに、近寄るなヤバイぞオーラが漂う2人に近寄ろうとするような馬鹿はいない。
「「・・・・・・・・」」
本人達はいたって真顔だが、実は2人とも周りの顔が可笑し過ぎて笑うのを必死で堪えていた。
ゴツイ、厳ついマフィアがコッチをみて一瞬なんだあいつら、という顔をするのがおかしいのだ。
なんたって変装成功なのだから。
というか、まず、マフィアが蝶ネクタイである時点では限界だった。腹筋がプルプルとフル活動中だ。
「ツ・・・ちょ、蝶ネクタイ、あの厳ついおっさん・・・ちょ。蝶・・・!!」(小声
「わかったから喋るな。・・・くっ・・・・」(小声
そんな会話が成されていても、ハタから見れば打ち合わせをしているようにしか見えない。
2人の頬の筋肉もフル活動中なのだ。
「皆様、お待たせいたしました、こちらの会場へ順番でお入りください」
しばらくすると、地下の会場のドアが開き、次々に客が中に入っていく。
たちは比較的後ろの方の席なので、のんびりその様を見ていた。
只今時刻は8時30分。
オークション開始まで、あと30分。
20060806