いよいよオークションが始まる。

しかし、周りは静かで、張り詰めたような空気さえも感じる。

これかマフィアってヤツかぁ、なんて呑気に観察していた。

 

 

 

アクシデント

 

 

 

地下独特のうすら寒い空気。薄暗い部屋。

随分立派な会場で、二階もあるが、今日はそこに人は入っていない。

石造りでオペラとか出来そうだ。

前のステージには演台が一つ。

一通り凝で周りを見回すと、3人、念能力者が並んで座っているところがあった。

ほとんどが幹部自ら来ているなかで、あそこは代理のようだ。

わざわざオークションを代理に譲るなんて、何か有るんだろうか。

一応警戒しておくか、と思ったところで、前のステージに明かりが点く。

 

出てきたのは硬そうな黒髪を肩ぐらいまで伸ばした背の低い男。

その小さい方がマイクのセットをする。

その後ろで大きな顔中傷だらけの男が後ろ手に手を組んですまして立つ。

アレだ。映画とかのフランケンシュタインに似てる。ただ耳がネジじゃなくて、すげぇ福耳だけど。

あれだな、ボディーガードでがっぽがっぽ稼いでるんだな、彼は。

あの福耳なら将来ものすごく裕福になれるんだろう。

 

ただゴメン、やっぱり蝶ネクタイが面白い。

 

とくにフランケンシュタインの方。

腹筋がぷるぷるするよ。

あの風体で、蝶ネクタイでおすまししてるところがツボだ。

どうしてくれんだ、念願の割れた腹筋がこんな事で手に入ったら。凹むぞ?

ってかコイツも眉毛だけ色違うな。なんでだ?流行ってんのか?

 

そんなことを考えていると、時計が9時を告げる。

小さい男がマイクを取る。

 

「皆様、ようこそお集まりいただきました」

こちらをぐるりと見る瞳にゾクリと、嫌な予感がする。

 

「それでは、堅苦しい挨拶は抜きにして」

男が言葉を区切る。

 

 

 

「くたばるといいね」

 

 

 

ざわっ

「・・・ツルバミっ!!」

ニヤリと笑う男と、楽しそうに構えるフランケン。

指先が取れている。

それを横目に見ながら俺はツルバミを引っ張って二階へ跳躍する。

 

 

「俺の両手は機関銃(ダブルマシンガン)!!!」

 

 

指先が取れた手から念弾が無数飛び出す。まさにマシンガン。

俺はすばやくあの赤い液体を作りだすと膜のようにして自分たちを包む。下から見えないように伏せる。

 

心臓がドキドキする。

 

「おい、大丈夫か?」

「あぁ」

下ではもの凄い轟音と悲鳴。

悪いけど、俺は全てを守れるほど強くないし、危険を顧みず見ず知らずの奴を助けるお人よしでもない。

 

硬く目を閉じて神経を研ぎ澄ます。

主催者側は、すでにほぼやられていると見ていい。

ということは、さっきの2人以外のスタッフは全てコイツ等の仲間、敵の可能性が高い。

玄関ホールの入り口付近には少なくとも4人はいた。

この階に人の気配が無い事とこちらが射程に入っていない事を確認すると、念を解除して今度は円を張る。

念能力者はステージに2人。この会場の入り口三つにそれぞれ一人。ステージ裏の方に2人。

ってか、ステージ裏の奴、片方シャルっぽいんだけど・・・。

 

幻影旅団か。

 

「やっかいだな」

「何だ?」

「コイツらおそらく幻影旅団だ」

「・・・・・」

ツルバミは何も言わず眉を寄せる。

 

緊迫した空気の中、自分の心音が聞こえる。

やばい。柄にもなく緊張してるかも、俺。

そんな俺に気づいたのか、ツルバミが俺の頭を撫でてくる。

「・・・・・・さんきゅ」

「おぅ」

 

 

 

やがて会場が静かになる。

俺の仕事はG・Iの入手。どうするか・・・なんて考えていると、

 

 

「おぃ、その上にいる奴、出て来るね」

 

 

・・・・・・・・・・バレました。

 

 

「・・・・どうしましょうツルバミさん」

「どうもこうもねぇんじゃねぇか?」

「ですよねー」

ドキドキいう心臓を落ち着かせるべく、息を吐いて立ち上がる。

 

「なんだ、まだ居やがったのか」

フランケンが言う。

「意外に素直ね」

先程司会をしていた男。そして声を掛けてきた男だ。

「よく気づいたね、フェイ」

先程は射なかった眼鏡をかけた少女。

よく見れば、会場は何も無かったかのように綺麗だ。

彼女の持っているな掃除機みたいなアレの能力だろうか。

「そいつらが上に逃げるの、見えたよ」

 

ぎゃー!見られてたー!!

 

「な、中々の動体視力デスネー」

半ば自暴自棄な俺。

「お前等、目立つ。すぐわかたよ」

きゃー!!変装見事に逆効果?!逆効果??!

ははん!誰がこんな状態予想するかってんだ!(開き直り)

てか、促音がないんですが。うわー何この人可愛いよー喋り方。

って、そんな場合じゃねぇって俺。

 

「・・・・・・競売の品はどうした?」

とくにG・I。

「教える義理ないね「おーい、競売の品空っぽだぜー?」

置くから出てきた大男がそう言いながら、出てきた。

「・・・はぁ、ウボォ・・・」

フランケンが脱力する。

「あ?なんだよ」

じっと見つめられて居心地悪そうにする大男。

ナイス大男!素敵ー!!マジ素敵!!

 

「なぁ、ちょっとそれ本当か?」

「おぅ、どういう訳か綺麗さっぱり!」

大男マジナイス!!今だけお前のファンクラブ入ってやってもいいよ!!

「・・・・・・・・・って、お前誰だ??」

今更な大男に、フランケンが再度「ウボォ・・・」と溜息を吐くのが聞こえた。

「さぁ?それじゃ、俺らもう用はないんで」

「はっ!逃げられると思てるか?」

小さいのが挑戦的に笑うが、ごめんよ、こっちにはツルバミ様という最終兵器が!!

「もちろん。じゃ、さようなら!」

俺はツルバミの手を引いて奥のほうへ飛び闇にまぎれてツェズゲラさんの所へ飛んだ。

逃げるが勝ち!

う〜ん、いい言葉だ。

 

 

 

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20060807