楽しげに俺に攻撃してくださるちっこい人に、俺は最終奥義を繰り出して勝利した。
どんな形であれ勝ちは勝ち。
宴
「えぇ〜い!こうなったら」
ばっ!!
ちょっと切羽詰った悪役みたいな事を言ったあと、はすばやく身を翻した。
「!!」
急のことにフェイタンも一瞬驚く・・・が。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・何してるか」
フェイタンは眉をひそめてを見る。
「・・・・何って、奥義・変わり身の術」
奥義・変わり身の術。
@すばやく身を翻し跳躍
Aすばやく某オールバックの後ろに回り
Bオールバックの腰をがっちりホールド
C得意げに笑う
(ふはははは!見たか!逃げるが勝ち!最終的には逃げ足だぜ、逃げ足!)
俺はクツクツ喉で笑うクロロをがっちりホールドして盾にすることに成功した。
おまけにちっこい人の戦意喪失も成功さ!いや、これは予想外だけども。
俺いたって真面目なんだけどなぁ。
どうしてそう皆呆れた目で見てくるんざましょ。
「とりあえずは、守ってくれるんだろ?クロロ」
「まぁ、血祭りにはさせないと言ったな」
「俺このままだと血祭りよ?」
「じゃぁしょうがないな」
言いながら笑っているクロロ。
クロロが笑う振動が背中に伝わって面白い。
「フェイタン。もう楽しんだろう。そろそろ酒を飲もう」
「・・・・・・・・わかたよ」
フェイタンは多少不服気にしたが、今日セメタリ−ビルで大暴れしたおかげでそれなりに気分がいいらしく、案外すんなりと退いた。
何事も、逃げるが勝ち。コレ信条。
「。紹介しておく。フェイタンに、ノブナガ、フランクリン、シズク、マチ、ボノレノフだ」
近い順に適当に紹介していくクロロ。
フェイタンがさっきの人で、フランケンシュタインがフランクリン。フランケンじゃなくて・・間違えそう。
ノブナガはあの刀をもった髷の人。シズクは眼鏡ッ子。マチは着物風な服のピンクの頭の子。
ボノレノフは包帯ぐるぐるのボクサー。あとは知ってる面子。
「団長、ビールでいいかい?」
マチが箱を漁りながらクロロに聞く。
「あぁ」
その言葉に投げ渡されるビールの缶。大方の人にビールまたはチューハイが行き渡ったところで、マチはを振り返った。
「・・・アンタは?」
「うぇ!?俺?」
「アンタ以外誰がいるってんだい」
「・・・ノンアルコールのモノってない?・・・・デスカ」
「いいよ敬語なんて。生憎、皆酒だねぇ」
ぶっちゃけ酒に良い思い出のない俺。なるべく酒は飲みたくない。
だって、酒を一定量以上飲むと記憶が無くなる上、次の日その場にいた人全員に目をそらされるんだ!あれは恐怖だぞ。マジで。
俺が一体何をした!?って聞いても、知らない方がいい。とか、お前もう酒飲むなとかしか言われない。
・・・・何したんだ俺。そしてもし飲んだら何するんだ俺。
「・・・えっとマチって呼んでいいか?俺のことはって呼んで」
「いいよ、好きにしな。それで、どうすんだい?」
「チューハイでいいだろう。ちょっとは飲めるって言ってたじゃないか」
クロロが楽しそうに言う。絶対面白がってるぞコイツ。
「お前が選ばないと乾杯できない」
「う゛・・・・じゃぁ、チューハイで」
「はいよ」
投げ渡されたチューハイを見つめる。
・・・・うーん。
全員に飲み物が行き渡るとクロロが団員に軽く労いの言葉をかけてから乾杯した。
俺は上機嫌のクロロの後ろに引っ付き虫したまま、その光景を見つめる。
俺の手にはチューハイ。けれど飲んだ先には絶対嫌な事が待っている。
しかし、乾杯ゆえ、あけてしまった缶・・・・。
とりあえず缶は脇において乾杯しあう団員達を眺める。
そんな中クロロに近付いてきた人物。
・・・・新発見だ。いや大発見だ。
「乾杯」
「カンパイ」
クロロへと近付いてきて乾杯しあうコルトピ。
「コルトピって酒飲めるんだ?!」
「・・・一応」
「結構酒豪だぞ」
「酒豪!?」
すげぇ。俺あんま飲めないのに、こんなちっちゃくて可愛いのに。
っていうか口有るんだな、やっぱり。
俺は未だにお目目の片方しか発見できないよ。
瓦礫に座って談笑するもの、地べたに座り込むもの、立ったままのもの。
そしてクロロはさっきデメちゃんとかいう掃除機みたいな何かから出てきた盗品の箱の上に座っている。
俺はその後ろで引っ付き虫。
だって盾は心強いし。
さっきからヒソカが素敵に笑ってて怖いし。
そんなに身長の違わないクロロに引っ付いているので、丁度ファーは俺のモノだ。
っていうか、身長はさほど変わらないのに、意外にクロロが確りした体つきなのが悔しい。
だって腹筋が割れてる。
憧れの割れた腹筋。
どうして割れないんだ俺の腹筋。・・・皮下脂肪が多いのか?
がもんもんとそんなことを考え初めて、チューハイを放棄していたとき、
クロロは丁度腹のあたりに回っているの手を軽く叩いた。
「すこし熱い、逃げないから隣に座れ」
酒が回ってきたのか、クロロがそういった。
はそういやそうかと鵜呑みにしてクロロの隣に移動した。
その様子を何やら含みのある妖しげな笑みで見つめるクロロには眉を寄せる。
「・・・な」
「隙有り」
何だクロロ、と言おうとしたの顎をがっちり掴んでニコリと笑うクロロ。
クロロの手には放棄していたチューハイの缶。
さっとの顔色が悪くなる。
「まさか?まさかだよねクロロ君」
「まさか祝いの席で酒を飲まない、なんてこと、ないよな?君」
にっこり笑うクロロはそれはそれは楽しげだ。
「いやいやいや!俺には選択の自由ってもんがだなぁ!!」
「はい、あーん」
「もがっ!!?」
無理やりチューハイを飲まされる。
缶の中身がすべて無くなってから、やっとクロロは缶をの口から離した。
「・・・・はぁっ!殺す気か!!?」
「まさか」
爽やかな笑顔で言い切るクロロはかなり胡散臭い。
「殺す気ならもっと確実にやるよ」
うん。そうだった。君たちA級犯罪者。
そこまで思ったところで、くらりときた。
「・・・・・・うぇ、気持ちわる〜」
そういって気分悪そうにクロロにもたれかかる。
「あのチューハイはアルコール濃度高めだからな」
「・・・・知ってたな馬鹿野郎」
「ふふっ」
「くそぅ!」
軽くあしらわれている気がしてならない。
腹いせに思い切りクロロに寄りかかって楽をしてやることにした。
くらくらと、じんわりと、アルコールが体を回っていく感じがする。
まぁ缶1本くらいなら、まだ大丈夫だけど。
「なんだぁお前、酒飲めねぇのか!だせぇなぁ!!」
フィンクスが酒が入ったせいか陽気に笑う。
「うっせぇ」
「おぃおぃ、からかうのも程ほどにしとけよ。可哀想だろうが」
なんとなく、気分の悪そうな様子に不憫になったフランクリン。
「フランケンさん良い人!!」
妙に貴方が持つと缶がちっちゃく見えるけど、あんた良い人!!めっさ良い人!心が洗われるね!
「・・・・・・・・・フランクリンな」
あぅち!さっそく間違えましたであります。
それから色々とあって、大体の人と名前を呼び合えるようなくらいの知り合いにはなれたと思う。
ノブナガが随分機嫌が悪かったけど、なかなか楽しい宴だった。
・・・まぁ俺は早々に酔いが回ってクロロの膝の上で爆睡しちまったけど。
沢山話して、沢山じゃれて、笑った。
この後待ち受ける悲劇など知らずに。
20060908 次回シリアス注意報。