幕間劇に興じよう
新たに仲間を探すもいいだろう
向うなら東がいい
きっと待ち人に会えるから
幕間劇。
9月4日
今朝方まで昨日の盗みの成功を祝ってドンチャン騒ぎをした。
という青年も交えて。
それまでは皆、上機嫌だった。
しかし、今は・・・・。
「だぁっ!ったく何なんだよ!」
フィンクスはイライラと悪態をついた。
青年が帰って一時間ほどたってから雨が降り始めた。
蜘蛛は鎖野郎の手がかりを掴みベーチタクルホテルへ急行。
途中鎖野郎の仲間を殺し、手がかりを掴んだ。
しかし、ホテルでの急の停電。そして
団長がさらわれた。
パクノダを覗く旅団メンバーは、鎖野郎に渋々従い人質2人をつれ、アジトへ戻るところだった。
相手方に嘘を見破る能力者がいるとなると、こちらも慎重に出なければならないだろうと、とりあえずそういう形に纏まったからだ。
口に出して悪態をつくものは少ないが、フィンクスの隣をもくもくと歩くフェイタンもかなり殺気立っている。
「うるさいよ。ちょっと黙ったらどうなんだい」
「うっせ!」
マチがイライラとフィンクスを嗜める。
他のメンバーもかなり苛立っている。
そんな中、若干名は冷静を保ち、思考を続けていた。
シャルナークもその一人である。
蜘蛛の頭脳的な役割を担っている彼だからこそ、こういった場合は逆に冷めてしまうものだ。
「ねぇシャル。どう思う?今日のこと」
シズクが普段と変わらぬ調子で話し掛けてくる。
彼女が取り乱すところを、シャルナークは一度としてみたことがない。
「おかしいね。占いが少しずれているみたいだ」
「あ。やっぱりそう思う?」
「・・・これからどうでるかな」
シャルナークは顎に手を当てて思案し始めた。
・・・これが、幕間劇というやつか。
憤る鎖野郎を目の前に、俺はそんなことをボンヤリ考えた。
こいつを捕らえるためにベーチタクルホテルへ向った俺は、停電で生じたわずかな隙をつかれ、こうして捕らえられている。
滑稽だな。
しかし、俺に取ってはどうでもいいこと。
やっかいなのは、パクが残念ながら鎖野郎の隙をつけなかったことで掟の剣を指されてしまったことか。
おかげで俺は蜘蛛との接触と念能力を封じられた。
面倒だが、これから除念師を探さなくてはならない。
パクは念能力と奴に関する情報を漏らすことを封じられた。
・・・・・・・・・・パクは、死ぬ気なんだろう。
それでも貴方の優位は揺るがない
残る手足が半分になろうとも
―――クロロは静かに瞳を閉じた。
ゴンと俺は旅団に捕まった。
クラピカが上手くやって、それもプラスの方向になったけど。
今、俺たちは人質兼旅団の見張り役。ってところ。
さっきパクノダが出て行った。
クラピカと交渉をしに。
俺たちは他の旅団とアジトに戻り、連中が出て行かないかどうか見張っている。
空気は穏やかじゃない。
俺はぼんやりと、俺は今更になってを巻き来なかったことを良しとするべきか考えた。
ゴンのハンター証を質に入れた日以来会ってないけど、このことを知ったら怒るだろうなと思う。
それに、だったら俺たちみたいなことにならなかっただろうとも思う。
クラピカが今俺たちの為に団長を殺さずに人質として生かしてる。
その代わりパクノダは殺すことができるかもしれないけど、まずは頭を殺っておいて損は無い。
・・・俺たちが足かせになってる。
ただ、俺、いや俺たちはを巻き込みたくなかった。
仕事があるってのもあるけど、なんとなく、にはこういうこと、言っちゃいけないと思った。
最初、クラピカ関係ナシに蜘蛛を捕まえようとしたときは手伝って欲しかったけど。
それとこれとは違う気がする。
あの時はに危ないから止めろって怒られると思ったから言わなかった。
でも、今回は別のことで怒られる気がする。しかも比べ物にならないくらい怒られそう。
そこまで考えて俺はちょっと身震いをした。
うぅー・・って本気で怒ったらどうなんだろ。怖っ。
色々と考えていると、どんどんあたりは暗くなって、冷えてきた。
重苦しい空気と、まじる殺気と苛立ち。
ザーザーと雨は上がる気配も無い。
そんな中、パクノダが返ってきた。
俺たちを一人で連れて行くと言い出して、旅団は真っ二つに分かれて対立した。
付いて行く派と行かせる派。
結局は付いて行く派がでっかいのに丸め込まれて俺たちはパクノダと共にアジトをあとにした。
そとの雨は冷たい。
しばらく歩いたところで、パクノダが徐に口を開いた。
「あんた達、何故逃げないの?」
「・・・逃げるって?」
反応したのはゴンだった。
そういや、なんで俺、逃げないんだろうな。
言われてみれば今ならできなくもなさそうだ。
パクノダの言うとおり、今逃げれば切り札がなくなって団長を殺せる。
何故仲間ならそうしないのかと、パクノダは聞いた。
「そんなの、仲間だからだよ」
ゴンの言葉に、俺も、パクノダも止まった。
俺はそこでゴンの言葉と自分の行動のもとにあった心理を理解する。
「仲間だから、本当はクラピカに人殺しなんてしてほしくない!」
「だから・・・交換ですむならそれが一番いいんだ」
そのとおりだ。
きっとのことだってそうなんだ。
仲間だから。
ゴンの言葉を聞いて静かに俺は前を向いて歩き出す。
けれど、聞こえてきた予想外の声に、俺たちはまた足を止めた。
「・・・・ゴン・・・・・キルア・・・・」
振り向いた先には・・・・・・・・・が居た。
とても普段からは想像も出来ないほど、悲愴な表情で。
俺は驚きに目を見開いた。
それと同時に、今にも泣きそうなに胸がきしんだ。
20070223