は、その日、目が覚めてからずっとイヤに胸が騒いで煩かった。
外は・・・
雨
朝から降る雨は酷くなるばかりで、先程から雷が響いている。
シャルナークは遠くの雷の音を聞いた。
薄暗い空間は重苦しい空気と相まって、団員達の心情を映しているようだ。
団長がさらわれた。
緋の目を追って行き着いたホテルで、急の停電の一瞬の隙を突いて、鎖野郎に。
さっきまで団員は、鎖野郎の指示によって出て行ったパクノダを追うか負わないかで対立していた。
相手側には嘘を見抜く能力者がいるらしい。
今のところ追わない方向で話が進んでいる。とりあえずは指示に従った方がいいだろうと。
人質の子供2人も先程パクが連れて行った。
しかし、このままじゃアイツの思うままだ。
電話を掛けてはいけない
一番大事なときに繋がらないから
電話に出るのも勧めない
緋の目が笑うから
忘れてはいけない 貴方はすでに死神と繋がっていることを
つまり、俺は身動きが取れないということ。
”電話”は俺の念能力を暗示しているとも取れる。
そして現に掛かって来ている鎖野郎の電話にはでない方が良いと。
つまり、俺の思考は鎖野郎・・・”緋の目”を喜ばすだけという事か。
ならばこの状態良い方向だと考える事もできる。
そこまで考えてハッとした。
俺の占い。
緋の目の客はどうして次の文で死神と呼ばれているのか。
まず、俺の命の危険を示唆しているとも取れる。
しかし、”すでに繋がっている”とはどういうことか。
向こうが団長の携帯を奪って俺の携帯へ掛けている現実の事を指しているのだとしたら、おかしい気がする。
それでは後天的繋がりだ。
しかしこれでは占いを受けた時点で俺は死神と繋がっていることになっている。
ノストラードファミリーを調べたときも、ウボォーを奪還しに行ったときも、鎖野郎は逃げた後で接点は皆無。
もし、死神=緋の目(鎖野郎)でなかっとしたら?
俺たちがストレートに暦として示されるように、もしこれが誰かを指す言葉なら・・・・。
それは一人しか居ない。
「・・・フィンクス」
イライラと落ち着かないフィンクスにこっそり声を掛ける。
「あ゛?」
「・・・もし、オレの占いの”死神”が・・・を指す言葉だったら?」
クリムゾンは俗称では死神といわれている。
現にあの大鎌を操る姿はソレを髣髴とさせる。
ならば、俺らの正式な仲間ではないから、ノーマーク。自由に動ける。
言い方は悪いけど、大事な駒になりうる存在。忘れてはならないだろう。
フィンクスの目が見開かれる。
俺とパクノダ両方とも、と面識があるし、俺に至っては番号の交換もしている。
つまり、すでに繋がっている。しかも”電話”というもので。
どうして忘れてはいけないのか、警戒を促すものか、それとも、希望の光なのか。
しばし、見詰め合う。
大きな掛けだ。
俺は電話を掛けられない、しかしメールはできる。
そうでなくても俺以外の誰かが掛ければ良い。
しかし、死神を指すのが鎖野郎で、死の暗示である場合も五分。
すでに繋がっているというのも、すでに情報を握られていると捕らえることもできる。
フィンクスが口を開いた。
「・・・・・・・・シャル、ちょっと携帯貸せ」
+++++++++++++++++
は起きてからずっと沈んでいるように見えた。
しかし、昨日の酒のせいではない。
やがての苦手な雷が鳴ってきたというのに、騒ぎもせずに、ただツルバミの隣にいた。
「・・・具合が悪いんじゃないんだな?」
「・・・あぁ」
ツルバミは自分の肩にの頭を寄りかからせて、その髪を梳く。
「雨の所為か何かか」
「・・・そうかもな」
ぎゅっと手を握り締めて何かに耐えているような、そんな様子のはポツリと漏らした。
「すげぇ胸騒ぎがする」
ツルバミはただ見守って側にいた。
は只管なにかを待つような、稀に見る真顔で一点を見つめたままだ。
外は雨が降っている。
部屋の中にはだた雨音が響く。
電気もつけずにいるため、時折落ちる雷に部屋が照らされる。
しばらくして、の携帯が鳴った。
はハッとしてそれに出た。
「・・もしもし」
『か?』
「・・・・・・・フィンクス?」
それは予期せぬ人物で、さらに予期せぬことを継げた。
「団長が攫われて、今相手の指示でパクが一人で出て行った」
昨日、あんなにじゃれて、笑いあったというのに。
悪い予感ほど、当たる。
は驚きに目を見開いたあと、泣きそうに顔を歪めた。
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『俺たちは生憎と身動きが取れない』
「・・・・わかった、とりあえず今からそっち行く」
電話を切るとツルバミを振り返った。
「・・・・無理はするなよ」
「あぁ」
フィンクスの声音からも、内容からも、事態は緊迫している。もたもたしている暇は無い。
鎌の姿にもどって手に収まったツルバミを一撫でしてフィンクスたちのもとへ向かった。
クロロの馬鹿野郎。なんで今更捕まったりするんだ。
そんな憤りを感じながら。
俺が行き成り現れると、少々身構えられたが、直ぐに事の次第を説明された。
何でも、相手は鎖使いで、体内に”掟の剣”を刺して相手を制限する能力者で、ウボォ―という、おそらくこの間の大男をも捕らえることの出来る能力も持つ。
おそらくパクはすでに”鎖野郎”から自分の情報を漏らすなという掟を強いられているであろうことも推測できた。パクは先程までいた人質2人を連れて出て行ったらしい。
つい5分前の事。
「あたし達が行けば、おそらく団長は殺される」
マチが忌々しげに言う。
「・・・・・・でも俺なら動ける・・・・か」
俺はココまで話を聞いて違和感を覚えた。
非道だという鎖野郎と、どうしてこうもスムーズに人質交換ができているか。
明らかに、蜘蛛への復讐よりも人質奪還に目的があるように思える。
・・・・・・なんとかなるかもしれない。
俺の念は、念の無効化。掟の剣は通用しないから。
「・・・・わかった。俺がパクを追う。ヘマはしない。逃げるのと隠れるのは得意だ」
「胸張て言う事か」
フェイタンの言葉に力なく笑った。
20060909