まさか、こんなことって・・・・・ない。

 

 

 

強まる雨脚

 

 

 

俺はあの後、即座にパクのもとへと飛んだ。

人質や鎖野郎を警戒し、絶も忘れずに。

しかし、そこで見たのは信じたくない現実が待っていた。

どうして

 

「ゴン・・・キルア」

 

お前達がそこにいる。

 

 

 

 

 

俺の声に、3人が振り返る。

一様に目を見開いて。

・・・・」

パクが呟いて、それにキルアが大きく目を見開く。

 

「・・・・なぁ、どういうことだ?

・・・なぁゴン、キルア。どうしてパクといるんだ?」

 

酷く混乱した。

分かってる。

分かってるよ。

つまりは人質はゴンとキルアだったってこと。

鎖野郎はゴンとキルアの仲間である事。

・・・・もしかしたら、鎖野郎は俺の友達かもしれない事。

でも、その結論を真正面に捕らえたくなかった。

 

 

 

ザァ―――。

 

 

 

「・・・・・・こそ、なんで・・・」

ゴンの瞳が困惑に揺れ、キルアはストンと表情が落ちていた。

「つまりは蜘蛛の仲間って事だろ」

キルアが無表情のまま言う。

無償に痛いその表情。

 

「・・・いいえ違うわ。友人ではあるけれど、仲間ではないわ」

緊迫した空気に、パクの静かな声が響いた。

「・・・どうせシャルかフィンクスあたりに頼まれたんでしょ」

「・・・あぁ」

「どうやら、この子達とも知り合いみたいね。話は行きながらしましょう。時間が惜しいわ」

 

 

パクはとても冷静で、凛として、こんな時でも凄く綺麗だ。

でも、不自然なくらい穏やかなパクの様子になんだか酷く落ち着かない気分になった。

 

 

 

 

俺は蜘蛛との出会いの経緯をゴンたちに話し、ゴン達との関係もパクに話した。

「・・・・・クラピカ・・・なんだ。鎖野郎って」

ゴンの一言に心臓が大げさなほど跳ねた。

賞金首ハンターになりたいとはなんとなく聞いていたけれど、まさか・・・。

「・・・クラピカはクルタ族なんだ」

2人から告げられるクラピカのこと。

 

 

俺は何も知らなかった。

 

 

俺は片手で顔を覆うと溜息をついた。

やりきれない思いが渦巻く。自分に対する怒りとか、いろいろ。

どうして気付かなかった。

どうして・・・

 

「・・・・・、貴方は帰りなさい」

パクが静かに言った。

「きっと優しい貴方は私とこの子達を選べないわ。私は大丈夫。団長・・・クロロも平気よ。見なかった事にして・・・」

「ふざけんなよ」

「・・・・・

パクも、ゴンもキルアも、俺を気の毒そうに見つめる。

あぁ、もう泣きたい。

俺も、クロロもクラピカも・・・・・

 

 

大馬鹿野郎だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

+++++++++++++Sideクラピカ

 

 

 

再び現れたパクノダは約束通り3人で現れなかった。

私は酷く動揺した。ヒソカの登場以上に。

 

 

どうしてそこにいるんだ・・・・・

 

 

 

無事、ゴンとキルアを蜘蛛の頭と交換できた。

しかし、は何故あちらにいる。

いや、操られているのか?

ならば助けなければ。

・・・・・どうする。

 

「・・・・クラピカ。は正気だよ」

「操られてなんか無い」

ゴンとキルアが彼を見つめて言う。

 

私はさらに動揺する。

どうして・・・・。

クルタでの生活や惨劇。

仲間の死体。くりぬかれた目。

生前の同朋たちの笑顔。

私に手をふる友の姿。

様々なものが走馬灯のように頭を駆けた。

 

 

目眩を覚えながら、蜘蛛の方を見やる。

 

「ハッ!良い格好だな、クロロ」

「手厳しいな」

「当たり前だ!・・・・・・馬鹿たれ」

は泣きそうに顔を歪めて蜘蛛の頭の胸を弱弱しく殴る。

 

会話が成立しているという事は、彼は蜘蛛の仲間ではない。

なら、どうして・・・!!

私の混乱は極限に達した。

 

 

 

「・・・どうして・・・どうして君がそこにいるんだ!?!!」

 

 

半ば祈るかのような叫びだった。

嘘だと思いたい。

操られているんだと思いたい。

 

しかし、無情にも、彼の瞳は前会ったときと同じ輝きを持っていて、私は言葉に詰まった。

 

 

「・・・・友達だからだ」

 

 

驚愕だった。

何故、何故、何故・・・・!!?

「そいつらは私の仲間を殺した!!」

「そうだな。でも俺の仲間は殺してない」

「・・・・っ!それは私たちを裏切るという事か?!」

自分でも何を口走っているのかわからない。

でも”裏切られた”という感情が激しく胸の中で渦巻いていた。

 

 

「俺は、クラピカも、レオリオも、ゴンも、キルアも大好きだ」

「なら!!」

「でも、クロロも、パクも大好きだ」

「何故?!奴等は」

「殺人者だ?」

「っ!」

「なら、クラピカだって、キルアだってそうだ」

 

 

   ドクン

 

 

酷く心臓の音が耳につく。

私一人だけが、焦っているように感じる。

キルアは静かに瞳を閉じただけだった。

 

「人殺しが何?非情かもしれないけど、俺は自分の感知しないところで、関係ない人がどれだけ殺されようとどうでもいい」

 

しかし・・・・っ!!

どうも感情がまとまらず、ただを見つめる事しか出来ない。

は、今にも泣きそうな顔をしていた。

 

「あんまり人殺しはしてほしくない。けど、そういう世界の人間なら、それをするなと俺は口出しできないし、しない」

 

 

しょせん世の中弱肉強食。ということか?

そんな風に割り切れるというのか?

 

 

「人は沢山の動物を殺すのに、どうして人間を殺しちゃいけない?」

「・・・・・・・・・」

私は言葉に詰まった。

 

 

「クラピカみたいな人がでるからだ」

 

 

  くらりと、眩暈がした。

 

 

「ソレを、殺す側の人間はわきまえてる。人間は厄介だと。

だから誰にも負けないくらい強くなる努力をするし、自分が殺される側に回っても冷静だ。

そうじゃないのはただの馬鹿かアマチュアだろ」

 

 

 この音は死を受け入れている音・・・!!

 

 

「なぁクラピカ。なんでパクは大人しくお前に従ったと思う?」

「何を・・・・」

何を聞くのだ?そんなこと・・・・

「クロロを取り戻したいからだ」

「・・・・・」

「どうしてだと思う?クロロに蜘蛛として人質の価値は無いのに」

 

私はの言葉に酷く狼狽した。

 

「それは団員に、パクにとって”クロロ”が人質として価値を成したから。

大切な仲間に戻ってきて欲しかったからだってわからないか?

なぁ、クラピカ?」

ぐにゃりと、彼の顔が歪んだ。

そっと、パクノダがそっとの肩に手を置いて首を振る。

 

 

「お前の復讐について、俺が口出しできないのは知ってる。

でもな、今のお前、ちっとも楽しそうじゃないし、嬉しそうじゃねぇぞ?」

 

 

私はついに、から顔をそらした。

 

 

「・・・・・・・・・だぁっ!!畜生!クロロの馬鹿ぁ!」

 

癇癪を起こしたように、無理やり気持ちを持ち上げるかのように、蜘蛛の頭にタックルする彼。

見ていて何故か痛々しい気持ちになる。

私は・・・・・・。

 

 

蜘蛛の頭は、私の前では見せなかった人間臭い苦笑を浮かべて、彼を抱き寄せた。

「・・・すまん」

「馬鹿」

「・・・ちゃんと全滅させられてなかったからな」

「クラピカ殺したら怒るぞ、絶交だぞ」

「・・・我侭だな」

「お前ほどじゃねぇ」

 

 

何だ、あれは。

 

どうしてをそんな目で見る。

どうしてそんな顔で微笑む。

あれは・・・

 

 

人間だ。

 

 

 

 

 

「そろそろ♣良いかい?」

 

 

ヒソカが、おそらく早く頭と殺りあいたいからだろう、少し焦れたように声を掛けた。

その声に、頭はをそっと離してパクノダの方へ背を押した。

は大人しくパクノダに肩を抱かれた。

 

 

「・・・そちらに、私とを乗せてくれないかしら。どうせ私は念を使えないわ」

 

 

私はひどい目眩に襲われながら、無理やり冷静を装って、それを承諾した。

 

 

 

 

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20060909 原作では2者の間は凄まじく離れてますが、こちらではクラピカの聴覚で声が聞き取れるくらいの距離って事で;