何故か殺そうとは思わなかった。

 

 

 

興味対象

 

 

 

俺はその人物が風呂を使うと去った方向をぼうっと、ただ見ていた。

「団長、いいのかよ。部外者が居てよ」

フィンクスが大して興味もなさそうに聞いてくる。

「・・・・・・・・いいんじゃないか?別に」

「別にって団長ぉ・・・」

シャルナークが脱力する。

けれど、本当にそう思っているのだから仕方がない。

 

 

 

先程いきなりやってきた、この場所を俺たち以前に利用していたという人物。

生憎暗く、薄ぼんやりと輪郭しか見えなかったが、声と身長からして男だ。

俺たちが蜘蛛と知って恐れない。かといって俺たちを憎むわけでもない。

一言で言うと「」だ。

パクノダのセリフに返ってきた言葉にも、的の外れた事を飄々とぬかす。

敵中にいて何故あのような態度が取れるのか謎だ。

まぁ、俺たちがプリン発言に多少気が抜けたにしてもだ、5対1の場面でよくも・・・。

 

不思議と殺してしまおうとは思わなかった。

邪魔だとは思わなかった。

 

 

 

ドン!!!

「にょ――――――――――――――っ!!!」

 

 

 

ぴかりと、閃光のごとく当たり一面が光ったかと思うと、近距離で太鼓を叩かれたような音が凄まじい響いた。

極近くに、雷が落ちたのだろう。

それはいい、それはいいが・・・。

 

 

「・・・今の間の抜けた叫び声は何だ」

 

 

「「「・・・・さっきの人じゃない?」」」

パク・シャル・コルトピがハモる。

「・・・・・・・・・・・様子を見てくる」

「あ。それなら私も行くわ」

なんとなく放って置いてはいけないような気がして立ち上がれば、パクノダもついてくる。

おそらくは、あの一室だけ妙に綺麗になっていた部屋だろう。

 

 

目当ての場所に行き着くと、特にノックもせずに扉をあける。

「どうした?」

「ぅおっ!ノックくらいしよーぜ?!まさに風呂上がりだったら如何してくれんデスカ!!」

扉を開ければ着替えたらしい男がタオルを頭に被せた状態で振り返った。顔は、やはりよく見えない。

黒いタンクトップと白っぽいズボン姿だ。

 

「きゃーって言って目を覆ってあげましょうか?」

「その前に俺がきゃーって言って逃げます!」

「どうでもいいだろう」

そもそもなんの話だ。

 

「それよりさっきの叫び声はお前か?」

「わぉ、聞こえちゃった?恥ずかしー・・・。いや、あんまり近くにヤツが降り立ったもんだからビックリして」

「つまり、雷に驚いた・・・と?」

「い・・・YES」

ほっかむりをするようにタオルをきゅっと掬ぶソイツ。

「まさかアナタ雷苦手なの?」

目を見開いて呆けていたパクが質問すると、奴は気まずそうに頷いた。

何だか余計拍子抜けだ。

俺たちは怖がらないのに、雷は怖いらしい。

「でも、こんな近くに落ちなきゃ平気・・・・ですよ」

 

 

「・・・・・・・・・はぁ、まぁいい。お前、俺の目の届くところにいろ」

溜息をついて踵を返す。

「ほら行くわよ」

「は?えぇ?!」

後ろから戸惑った様子の男の声と、先を促すパクノダの声が聞こえる。

 

 

なんとなく、この男と話をしたいと思った。

 

 

 

 

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20050504