雷嫌いで悪いか。
雨のち晴れ
雷がゴロゴロとまだ唸っていて、いつもは安心するツルバミの存在は、こういったときばかりは側にあると非常に落ち着かない。
というか、持っていると怖い。
そんなわけで、ツルバミさん怒らないでくれ。まだ出してやれそうに無い。
・・・・・・・・・・・というか、俺、知らない人に囲まれてんだけど。どうすべき?
「・・・・お前、仕事は終ったと言っていたな」
先程俺の部屋に訪ねてきた男声が尋ねてくる。生憎まだ顔は良く見えない。
まぁ俺が頭にタオル被ってる所為もあるかもしれねぇけど。
「まぁ、もう報酬も貰ったし、終りましたよ」
もの凄く儲かったさ。ゾル家の仕事。
「・・・・・・・・何をしに此処へ来た」
「飯と寝床確保。まだ食材残ってて勿体ないし」
「・・・・」
俺の答えを聞くなり黙り込んだ男。
・・・何なんだ。
俺、悪いことしてねぇだろ?
訪れた沈黙に、先程から小ぶりになった雨のしとしと降る音が聞こえる。
瓦礫の上に座って、とりえず頭を乾かそうとタオルで拭く。
位置的には広い部屋の向かって右の方に爽やか兄さんが携帯を弄っていて、右上の方にセクシー美女。
左上、ホント上のほうにごついお兄さん。あとは左下にも人の気配。
そして真中、俺の前にさっきの男。暗がりの中で彼の背中の逆十字が浮かんでいる。
背中向けるなんて上等じゃんか。
まぁ俺の後ろに2人もお仲間いれば当然か?
うーむ。これがA級の余裕?みたいな?
ぽちゃん・・・ぽちゃん・・・・
どこか雨漏りをしていたのか、水音がする。
そちらに顔を向ければ日差しに照らされて光る水溜りと、上から落ちてくる水滴。
水溜まりのあたりは緑のコケが生えていて、光を受けて輝いている。
・・・・・・・ん?光?
後ろの窓が壊れた壁を振り向けば外には晴れた青い空。
雨・・・上がったのか。
・・・・・そうか、まだ昼だったじゃん。
今、3時か4時くらいか?
なんとなく、ボーっとしていたから時間間隔が狂った。
はっ!雨上がったってことは雷も去った!!
おおぅ!やったね!
俺もう怖いもんなしだよ!
おっしゃ!と軽くガッツポーズをしたら、ぱさりと、被っていたタオルが落ちた。
「あ」
ぱさっ
「・・・・・・・・・」
うわーなんか、前の逆十字の人に被さっちゃった〜。
++++++
「あぁ――・・・すみません。俺がガッツポーズしたばっかりに」
何だそれは。
先程後ろの男に動きがあったと思ったら、タオルが降ってきた。
「・・・・・・」
ずるりとタオルを引っ張り落として見つめるが、普通だ。
「・・・・・・」
「あ、あの、怒ってマスカー?」
後ろの男が焦ったように小声で尋ねてくる。
「・・・いや、怒っては、いない」
オールバックも崩れてないし。
タオルを返してやろうと後ろを振り向く。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そして振り向いて絶句した。
見た事も無い銀の光を纏った紫の髪。
それが後ろからの逆光でキラキラと光って綺麗だった。
男はやや驚いた様子で俺を見ていた。
赤っぽい紫色の目。
・・・・珍しい。
そして顔の小奇麗に整った男だ。
「うっわ美人さん」
・・・・・は?
「団長さんとやら、美人さんですねぇ〜」とへにゃりと笑って顔を寄せてくる。
しげしげと俺の顔を眺めてニコニコしている。
何だ?
面食らってしぱしぱと瞬きを繰り返す。
「うっわー睫毛長っ!!」
「っ!?」
瞬きの間にかなり近い距離に男の顔があって驚く。
な、なんだ?
目の前に広がるのはあの男の珍しい色の目と、眉と髪の毛の一部。
敵意や殺気は感じない。
兎に角理解が不能だ。
あ・・・睫毛の色も髪と一緒だ・・・・って違う!!
ばっとタオルを俺と奴の間に持ってきて距離を取る。
「返す」
「お。どうもー」
ペース掻き回される。
・・・・・何なんだコイツは。
20050505